本書の冒頭部でも述べられていますが、「人こそすべて」という言葉は、企業理念としてよく掲げられてはいますが、「しょせんキレイごと」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。かつては、著者自身も「会社にとって大切なのは一にも二にも利益。人はそのあと。」と思っていたそうです。 しかし、いまははっきりと「まずは社員やスタッフの幸せを考えることこそ経営者の務め。それさえできれば、売上や利益はあとから自然についてくる」と断言できるといいます。 著者は宮城県仙台市から車で20分ほどの場所にある、バイキングスタイルのビュッフェレストラン「六丁目農園」のオーナーです。ランチのみの営業にもかかわらず大盛況で「いまもっとも予約のとれないレストラン」とまでいわれています。そのような状況を生み出すことができた「人ありき」の経営哲学が、実際に今までにあったエピソードとともに、わかりやすく綴られています。 もちろんここに至るまでには長い道のりがありました。「六丁目農園」を経営するまでは、利益と目先の数字に追われる日々だったといいます。 実家の倒産に始まり、著者自身も営業マンを皮切りにいろいろな事業をするもうまくいかず失敗の日々。そんなとき、著者に「転機」が訪れます。たい焼きブームに乗り、手っ取り早くリスクも少なく儲けられるという理由からたい焼き屋をオープンします。 ある日、施設の紹介で発達障害を持つ青年をスタッフとして雇うことになりました。最初はいろいろな問題があり、辞めてもらおうかと思ったこともありましたが、「いままでうまくいかなかったのは、自分のコミュニケーション法やスタッフへの態度にも問題があったのではないか」と考えた著者は、この青年ととことん向き合ってみようと思い至ります。青年を観察し、適材適所を考えて仕事をお願いし、青年自身も自信をつけてみるみる勤務態度もよくなり、それに伴いお店の売り上げも伸びてきたのです。 そのときに「人ありき」の経営哲学に気づき、この出来事をきっかけとして、「地元で職のない人の雇用の場をつくりたい、もっと輪を広げたい」という思いから生まれたのが「六丁目農園」だったのです。 経営者や指導者の方はもちろんですが、一般のビジネスパーソンたちにも仕事をしていく上で大切なことは何かということを考えさせてくれ、感動するエピソードもたっぷりと書かれたオススメ本です。 |
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