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技術支援アラカルト 第5回 『中小企業と航空機産業』 | |
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3月に"三菱重工業は航空機事業の国内生産体制を再編"という記事が新聞各紙に掲載されました。その内容は、航空機需要は今後20年間で倍増する見通しの中、2014年3月をめどに愛知で手がけてきた機体の部材生産を広島に移管、増産対応し、広島を愛知に続く航空機の第2の主力拠点とするというものでした。 地元大企業の事業転換に伴い、関連する中小企業は、その変化への対応などで厳しい状況に置かれることが懸念されますが、航空機産業のサプライチェーンの変化を新たな市場創出というビジネスチャンスとして前向きに受け止めたいところです。 中小企業が航空機産業に参入するにあたっての課題として、大きく以下の2つの課題が挙げられます。航空機産業には多くの規制があり、それらをクリアすることが生産体制の一員になるための当面の課題となりますので、今回は(1)の課題を中心に話を進めたいと思います。 (1) 一貫生産のための体制整備 (2) グローバルなコスト競争力 航空機産業では、独自の品質管理体制が必要であり、製造プロセスの"どの工程を担うか"によって、要求される品質管理レベルは異なり、大まかには以下のとおりとなります。 (A) 非重要部品の工程外注 ⇒ ISO9001+CAD/CAMへの対応 (B) 重要部品の工程外注 ⇒ (A)+JISQ9100 (C) 非重要部品の完成品 ⇒ (B)+非破壊検査への対応 (D) 重要部品の完成品 ⇒ (C)+Nadcap いきなり完成品部品のサプライヤーになることは困難であり、それぞれのレベルを一段ずつクリアしていくことが肝要でありますが、そのためには、(A)では(B)にステップアップするためにトレーサビリティの徹底など、JISQ9100の取得を目指した取り組みが欠かせませんし、(D)のレベルを目指すのであれば、それを実現するための高度な品質管理や加工技術に関するロードマップを作成するなど、戦略的な取り組みが不可欠になります。 また、全てのレベルを中小企業単独で対応するには限界があり、(C)、(D)のレベルをクリアするためには地域企業の連携によるネットワーク化などが必要となってくると思われます。中でも、完成品部品のサプライヤーを目指すにあたって、特有の課題となるのが"特殊工程への対応"であります。特殊工程とは、容易に、または経済的に製品の検査ができない工程のことで、熱処理、溶接、メッキ、複合材部品成形、非破壊検査などの工程を指します。特殊工程の認証制度としてNadcapがありますが、一般的な外観検査や性能試験では確認できない品質が航空機の安全性に大きな影響を及ぼすことになるため、その認証取得は航空機産業では特に重要視されています。 トレーサビリティ 各工程での原材料、部品や加工履歴などの記録を残すことにより、クレームになった場合に、その原因を究明できるようになっている仕組みのことです。つまり、"製品のトレーサビリティを確保する"とは、製品の5W1Hが明確にできるということです。 JISQ9100 航空宇宙産業における品質マネジメント規格で、ISO9001規格に加えて、航空宇宙産業に特有な管理要求事項を追加した規格です。JIS Q 9100認証取得により、世界の航空宇宙メーカーとの取引(契約)の容易化が図れます。 Nadcap 世界の主要航空機メーカー、エンジンメーカー等(プライムメーカー)がスポンサーになっているPRI(Performance Review Institute)が審査機関として運営している航空宇宙産業における特殊工程作業に対する国際的な認証制度です。プライムメーカー各社がサプライヤーに発注する製品に特殊工程が含まれる場合には、製造委託する条件としてNadcapの認証取得を義務付けています。 航空機分野の参入にあたっては、"受注ありき"からの脱却と特有のものづくりの仕組みづくりが必要です。航空機分野は自動車分野と異なって、量産効果が得にくいため、投資の回収に時間がかかるケースも多く、航空機ビジネスに対する十分な理解と入念な準備をして臨むことが肝要です。以上、大雑把な説明となりましたが、航空機産業への参入の検討のきっかけになれば幸いです。 ◆問い合わせ先 技術振興部(広島市工業技術センター内) TEL 082-242-4170(代表) E-mail kougi@itc.city.hiroshima.jp |
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