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技術情報の提供 (技術振興部 材料・加工技術室) 「焼結金属」による物づくり |
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金属製品や部品を製造する方法には、旋盤やフライス等の加工機を用いて金属ブロックを研削や切削することにより作製する機械加工、金属の溶ける温度(融点)以上の高温で処理することで、その溶解した金属をあらかじめ用意した型に流し込み固める鋳造、素材を叩く(鍛造)、曲げる、剪断(プレス加工)することで成形する塑性加工、粉末材料を成形後焼き固める焼結(焼結金属)、そしてこれらの製造方法に加えて、めっき、熱処理、溶接等の付加技術があります。 それぞれの技術は長所と短所を持ち、一概にどの技術が優れているとは言えず、材料、形状、性能などに適した方法を選択することで製造されています。 これらの製造技術のうち、「焼結金属」について紹介します。焼結金属とは金属が溶ける温度(融点)以下の温度で熱を加えることにより金属粉末を結合させ強固なものとする技術で、金属粉末に所定の形を与え焼結することで製品・部品を製造することができます。なお、「粉末」とは、最大寸法1mm以下の粒子の集合体のことを言い、通常、数ミクロン(1ミクロンは1/1000ミリメートル)から200ミクロン程度の大きさの金属粉末を使います。 焼結金属の製造プロセスの概略は図1に示す通りです。必要に応じて数種類の金属粉末(原料粉末)を計量した後、これらを混合します。この混合した粉末をあらかじめ作成した金型(最終形状に近い形)に入れ、通常、量産化ではプレス機により上下方向から圧力を負荷させ、プレス成形します。このプレスしたままの成形体はまだ脆い状態なので、雑に扱うと破損するおそれがあります。次に、この成形体を窒素ガス、水素ガス、アルゴンガス等の必要に応じた環境に制御した電気炉などで加熱処理します。この加熱工程を焼結と呼び、焼結された成形体は、よほどの力を加えない限り破壊されることはなく、機械加工品や鋳造品に近い強度を有しています。全ての工程の最後に仕上げのための機械加工を施し、最終製品・部品となります。必要であれば熱処理等の付加技術を用います。 |
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同じようなプロセスで製造する身近なものに、パン作りや焼き物(陶芸品)作りがあります。例えば、パン作りでは、まず、小麦粉、イースト菌、塩、水、砂糖、油脂、乳製品など《焼結金属の製造プロセスで言う、「原料粉末」にあたる》を、「計量」し、混ぜながらこねます《「混合」にあたる》。原料をこねた後、[一次醗酵→ガス抜き→分割→まるめる→休ませる(ベンチタイム)]等の作業を行い、好きな形に成形《「成形」にあたる》します。仕上げ発酵した後、オーブンで焼き上げて《「焼結」にあたる》完成です。場合によってはデコレートしたり、微修正したりするでしょう《「機械加工」にあたる》。 この製造方法の特徴は、なんと言っても粉末を融点以下の温度で処理できることですが、その他にも多くの長所を有しています。 1. 融点以下での処理が可能であることから高融点材料、タングステンフィラメント(融点3410℃) 等の製造が出来ます。 2. 原料が粉末なので粉末粒子の大きさや形を選んで多孔質材料が製造できます。例えば、フィルターや含油軸受け等があります。 3. 任意の組成の金属と非金属(セラミックス)の複合材料が製造できます。切削工具(超硬合金),パンタグラフ等があります。 4. 低温加工処理による材質制御が可能です。 5. 互いに溶け合わない金属材料の製造が可能です。電気接点(W-Cu) 等があります。 6. 鋳造では製造できない、任意な組成の合金材料の製造が可能です。 7. ニアー・ネット・シェイプ材(最終製品形状に近い)の作成が可能で、機械加工が簡素化でき、歩留まりが良くなります。 8. 金型を作成すれば、量産部品に対応することが出来ます。 9. 鋳造技術や鍛造技術に比べてその製造工程数が少ないシンプルな製造が可能です。 一方、良いことばかりでもなく、その短所は次のようなことが挙げられます。 1. 原料が粉末なので、粉末を製造する必要があります(原料価格の問題)。 2. 一般的には、上下方向のプレスで成形するため密度が不均一になりやすく、強度の問題や欠陥になる場合があります。 3. 横方向の精度は金型の精度に依存し高精度ですが、高さ方向の精度はプレス機の移動精度によるため横方向ほど高くありません。 4. ポーラス材料を作成する場合には長所となりますが、残留空孔が残りやすく、溶製材に比べて脆くなります。 5. 上下方向にプレスするため複雑形状や圧力の伝達が困難な形状など、製品形状に制限があります。 6. 大きさはプレス機の能力によるため寸法に制限があります。 以上の特徴を有する焼結金属部品は、様々な組成の合金から複合材料まで幅広く材種が選択でき、量産化しやすい割りには複雑形状に対応できることや寸法精度が良いことから、自動車部品、家電製品部品、精密機械部品、電子部品、工具、軸受け、フィルター等に用いられています。その一例を示します。 |
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■問い合わせ先 技術振興部 材料・加工技術室 (広島市工業技術センター内) TEL 082-242-4170(代表) |
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