「無印良品」といえば、シンプルかつ機能的で美しい様々な商品が思い浮かび、日本人の多くの人が知っている国民的ブランドです。 しかし、かつては業績悪化により、不振にあえいだ時代もありました。2001年の8月中間期、38億円の赤字を計上し、無印良品に衝撃が走りました。そんな〝谷底に落ちていた時期〟に本書の著者であり、現在は無印良品を運営する株式会社良品計画の会長を務めている松井忠三氏が、社長に就任します。 通常、そのような時期に企業がまず手掛けるのは、リストラ、賃金カット、事業の縮小などですが、著者は、それでは根本的な解決にならないと考えました。 そこで著者が考えた解決策とは一体何か? それこそが本書のテーマである「仕組み」づくりだったのです。
無印良品には、二つの分厚いマニュアルがあります。無印良品の店舗で使っている2000ページにも及ぶ「MUJIGURAM(ムジグラム)」と、店舗開発部や企画室など、本部の業務をマニュアル化した「業務基準書」です。この膨大なマニュアルには、経営から商品開発、売り場のディスプレイや接客まで、写真やイラスト、図などもふんだんに盛り込まれ、すべての仕事のノウハウが書かれているそうです。社外の人が「MUJIGURAM」を見ると、必ず「ここまで書くのですか?」と驚かれ、「それぐらい、口でいえばわかるのでは?」と思われるようなことまで明文化されているそうです。
なぜ、このマニュアルにはそこまで細部にわたり、明文化されているのでしょうか。 これほどの膨大なマニュアルをつくったのは、「個人の勘や経験に頼っていた業務を〝仕組み化〟し、ノウハウとして蓄積させる」ためだと著者は語ります。例えば、「人」に頼っている場合、センスがよく優秀な店長がいる店舗と、そうでない店舗では、店内の雰囲気にかなりのバラつきが生じてしまいます。また、その他にも「人」だけに頼っていると、経験を持った人材が異動になったときなど、また一からスキルを構築し直さなければならなくなり、かなりの痛手を負います。 しかし、この徹底的な〝仕組み化〟をすることにより、仕事で何か問題が発生したときなど、その場に上司がいなくても、マニュアルを見れば、判断に迷うことなく解決でき、チームの実行力も高めることができるというわけです。 マニュアルというと、ネガティブなイメージもありますが、無印良品のマニュアルはまさに血が通った進化し続けるマニュアルであり、本書を読むと、マニュアルに対する考えががらりと変わってくることと思います。
本書には、38億円の赤字から見事「V字回復」を成し遂げた著者の仕事哲学が今までの経験や具体例とともにたくさんつまっています。経営者や管理職の方々にはもちろんのこと、一般ビジネスマンにも役立つこと間違いなしです。 本書を読んで、ぜひ、「努力を成果に結びつける仕組み」づくりについて考えてみてはいかがでしょうか。 |
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