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広島市産業振興センターNEWS 第144号(2014.6.16)

広島市産業振興センターNEWS
技術情報の提供 (技術振興部 デザイン開発室)
   「ブランドとデザイン」

 「ブランド」という言葉を聞いて最初に思い浮かべることは何でしょうか?海外メーカーのバッグや時計といった高級品を思い浮かべる方が多いと思います。もちろん、狭義的な意味合いからすれば間違っているわけではありませんが、実は「ブランド」という言葉はもっと広義的であり、何も高級品だけを指す言葉ではありません。

 ブランドの概念は「他との差別化」が基本であり、発祥は牛の焼印にあると言われています。広大な牧草地で半ば放し飼い状態の自分の牛が、他人の牛の中に紛れていたとしても一目で判るよう、雨風で消えてしまわない印・・・判別の意味での焼印が必要でした。シンプル且つ他との差別化が十分な印、これがブランドをうまく主張する上で必要でした。この基本的な考え方は現在のブランド概念でも通用するものです。しかし、現代のブランド戦略(ブランディング)はまさに戦略といえるような進化をしています。他との差別化だけならば、焼印で済むわけですが、差別化した上でさらに、「自分の牛は健康でその食肉は安全で美味い」ということをお客様に伝え、なおかつそれを実際に食べる経験によって認めたお客様との間で同じ世界観を共有する・・・企業としてお客様に対して誓ったコミットメント(約束)は絶対に破らない、といった考え方が中心になっています。この約束を破ってしまうとブランド価値は一気に地に墜ち、その回復には相当の努力と時間がかかってしまいます。食品の産地偽装などでブランドパワーを失った企業がずいぶんあります。そうした企業はお客様第一主義=コミットメントは死守するという視点が欠けていたのでしょう。現在、ブランド価値はヒト・モノ・金に加え、重要な経営資産の一つとして認識されるようになってきているのです。

ブランドの起源、牛の焼印パターン例
●ブランドの起源、牛の焼印パターン例。牛は成長するので印もいびつに変化したが、消えることはなかった。

 1980年中頃~1990年代にかけてCI(Corporate Identity)ブームというものがありました。企業理念を明確化し、社内意識の共有化を図ることに加え、お客様に分かりやすいように企業としての視覚的体裁を整えることに主眼が置かれていました。企業コンセプトや独自性を視覚的なロゴマークやシンボルマークで表現し、優れたデザインがたくさん生まれましたが、お客様とのコミットメントまで深く踏み込んだものは少数でした。ここがブランディングとの大きな違いです。オリエンタルランドは徹底的にお客様第一主義を貫いているという点でブランド戦略の優れたお手本として紹介されることが多いのですが、そのブランドはディズニーランドで、徹底的なマーケットイン的思考のブランディングを確立しています。視覚的なデザイン管理も優れていますが、お客様をファンにしてしまうこと=リピーターとして取り込む戦略に長けているようです。ファンは盲目的で、ファンでない者にとっては「どうしてそこまで?」といった冷めた目で見てしまいますが、ファンにとって出費は二の次で、自分と世界観が共有できるブランドに対しては、まず「繋がり」を求めます。繋がるためにはお金をつぎ込み、それを惜しいとは思わないのが本当のファンなのです。一見、お金儲けのためにブランディングはあるように思えますが、ファンはそれで幸福になっており、企業活動としては収益確保が必要ですから、ある意味でWin-Winの形になっていると言えます。

 ところで、ブランディングにとって「デザイン」が持つ意味は何でしょうか?それを語る前に、「デザインの意味」を理解しておく必要があります。近年まで、日本で一般に語られてきたデザインという言葉の意味は「色や形」です。英語のDESIGNは「意匠」と訳されてきましたが、意匠の意は意図の意で、匠は整える・秩序立てるという意味があります。意図したことを形として整えることが意匠であり、デザインです。単に色や形といったパターンを多く示すことがデザインの仕事ではなく、「意図したこと」をコンセプトとして表現できることが重要です。つまり、デザイナーは色や形の表現方法が巧みなだけではなく、その色や形にした理由・意図を語ることができなければなりません。表現された色や形の根底に意図が込められていて初めて「デザイン」となるのです。さらに近年、デザインという言葉は使われる場を広げ、企業活動の様々な面で登場するようになってきています。マーケティング~企画~設計(狭義のデザインも)~製造~販売といったあらゆる場面でデザイン思考が必要であると言われてきています。デザインがその考え方から色・形まで企業活動のあらゆる場面で必要であるとすれば、それは一貫性と差別化を軸としているブランディングには当然欠かせない存在であると言えます。考え方はもちろん、視覚化もデザインの強力な武器です。CIでは、この視覚化がお客様とのコミニュケーションツールとして力を発揮しましたが、ブランディングにおいてもそれは同様であると言えます。「デザイン」を必要としないブランディング・・・想像することができないくらいそれは表裏一体のものとなっているのです。

 デザイン開発室では今年度もブランディングを行いたい中小企業を支援するために「商品ブランド研究会」を開催します。実際にブランディングに取り組んでいるデザイナーを講師としてお招きし、ワークショップで手を動かし、ブランディングのトレーニングを行う予定です。会員募集など詳しくは後日、当メール(産業振興センターメールマガジン)にてご紹介する予定です。


■問い合わせ先
  技術振興部 デザイン開発室 (広島市工業技術センター内) 
  TEL 082-242-4170(代表)

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技術情報の提供 (技術振興部 デザイン開発室)
   「ブランドとデザイン」

 「ブランド」という言葉を聞いて最初に思い浮かべることは何でしょうか?海外メーカーのバッグや時計といった高級品を思い浮かべる方が多いと思います。もちろん、狭義的な意味合いからすれば間違っているわけではありませんが、実は「ブランド」という言葉はもっと広義的であり、何も高級品だけを指す言葉ではありません。

 ブランドの概念は「他との差別化」が基本であり、発祥は牛の焼印にあると言われています。広大な牧草地で半ば放し飼い状態の自分の牛が、他人の牛の中に紛れていたとしても一目で判るよう、雨風で消えてしまわない印・・・判別の意味での焼印が必要でした。シンプル且つ他との差別化が十分な印、これがブランドをうまく主張する上で必要でした。この基本的な考え方は現在のブランド概念でも通用するものです。しかし、現代のブランド戦略(ブランディング)はまさに戦略といえるような進化をしています。他との差別化だけならば、焼印で済むわけですが、差別化した上でさらに、「自分の牛は健康でその食肉は安全で美味い」ということをお客様に伝え、なおかつそれを実際に食べる経験によって認めたお客様との間で同じ世界観を共有する・・・企業としてお客様に対して誓ったコミットメント(約束)は絶対に破らない、といった考え方が中心になっています。この約束を破ってしまうとブランド価値は一気に地に墜ち、その回復には相当の努力と時間がかかってしまいます。食品の産地偽装などでブランドパワーを失った企業がずいぶんあります。そうした企業はお客様第一主義=コミットメントは死守するという視点が欠けていたのでしょう。現在、ブランド価値はヒト・モノ・金に加え、重要な経営資産の一つとして認識されるようになってきているのです。

ブランドの起源、牛の焼印パターン例
●ブランドの起源、牛の焼印パターン例。牛は成長するので印もいびつに変化したが、消えることはなかった。

 1980年中頃~1990年代にかけてCI(Corporate Identity)ブームというものがありました。企業理念を明確化し、社内意識の共有化を図ることに加え、お客様に分かりやすいように企業としての視覚的体裁を整えることに主眼が置かれていました。企業コンセプトや独自性を視覚的なロゴマークやシンボルマークで表現し、優れたデザインがたくさん生まれましたが、お客様とのコミットメントまで深く踏み込んだものは少数でした。ここがブランディングとの大きな違いです。オリエンタルランドは徹底的にお客様第一主義を貫いているという点でブランド戦略の優れたお手本として紹介されることが多いのですが、そのブランドはディズニーランドで、徹底的なマーケットイン的思考のブランディングを確立しています。視覚的なデザイン管理も優れていますが、お客様をファンにしてしまうこと=リピーターとして取り込む戦略に長けているようです。ファンは盲目的で、ファンでない者にとっては「どうしてそこまで?」といった冷めた目で見てしまいますが、ファンにとって出費は二の次で、自分と世界観が共有できるブランドに対しては、まず「繋がり」を求めます。繋がるためにはお金をつぎ込み、それを惜しいとは思わないのが本当のファンなのです。一見、お金儲けのためにブランディングはあるように思えますが、ファンはそれで幸福になっており、企業活動としては収益確保が必要ですから、ある意味でWin-Winの形になっていると言えます。

 ところで、ブランディングにとって「デザイン」が持つ意味は何でしょうか?それを語る前に、「デザインの意味」を理解しておく必要があります。近年まで、日本で一般に語られてきたデザインという言葉の意味は「色や形」です。英語のDESIGNは「意匠」と訳されてきましたが、意匠の意は意図の意で、匠は整える・秩序立てるという意味があります。意図したことを形として整えることが意匠であり、デザインです。単に色や形といったパターンを多く示すことがデザインの仕事ではなく、「意図したこと」をコンセプトとして表現できることが重要です。つまり、デザイナーは色や形の表現方法が巧みなだけではなく、その色や形にした理由・意図を語ることができなければなりません。表現された色や形の根底に意図が込められていて初めて「デザイン」となるのです。さらに近年、デザインという言葉は使われる場を広げ、企業活動の様々な面で登場するようになってきています。マーケティング~企画~設計(狭義のデザインも)~製造~販売といったあらゆる場面でデザイン思考が必要であると言われてきています。デザインがその考え方から色・形まで企業活動のあらゆる場面で必要であるとすれば、それは一貫性と差別化を軸としているブランディングには当然欠かせない存在であると言えます。考え方はもちろん、視覚化もデザインの強力な武器です。CIでは、この視覚化がお客様とのコミニュケーションツールとして力を発揮しましたが、ブランディングにおいてもそれは同様であると言えます。「デザイン」を必要としないブランディング・・・想像することができないくらいそれは表裏一体のものとなっているのです。

 デザイン開発室では今年度もブランディングを行いたい中小企業を支援するために「商品ブランド研究会」を開催します。実際にブランディングに取り組んでいるデザイナーを講師としてお招きし、ワークショップで手を動かし、ブランディングのトレーニングを行う予定です。会員募集など詳しくは後日、当メール(産業振興センターメールマガジン)にてご紹介する予定です。


■問い合わせ先
  技術振興部 デザイン開発室 (広島市工業技術センター内) 
  TEL 082-242-4170(代表)

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