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技術支援アラカルト

広島市産業振興センターNEWS 第163号(2015.4.15)

広島市産業振興センターNEWS
技術アラカルト

デザインマネジメント人材育成事業(広島県緊急雇用対策基金事業)開催レポート
~デザインを経営資源として戦略的に活用するための人材育成プログラム~


 技術振興部では、中小企業のデザイン開発力の向上を積極的に支援しています。その一環として、去る2月26日に開講しました「デザインマネジメント人材育成事業」について、本事業の企業支援担当コーディネータを務めていただいている中国地方総合研究センターの江種様よりその様子を連載でレポートしていただきます。
 今回は開講式と第1回目の2つの講座についてのレポートをお届けします。

◆ 開講式
 いよいよ本日から、「デザインマネジメント人材育成事業」が始まります。これまで、広島市産業振興センターとコーディネータとで、研修フレーム立案、カリキュラム作成、講師選定、受講者募集など準備を進めてきましたが、無事に15名の受講者を迎え、スタートを切ることができました。
 受講者は、食品、消費財、産業資材、コンサルティングなど幅広い産業から集まっていますが、全員がそれぞれの分野で経営、商品企画やデザインに関わっています。そして、経験の差はあっても、この研修でデザインマネジメントを深く学び、今後の業務に活かしていくことを目的として参加されていますので、意識・意欲の高さが伝わってきます。
 開講式では、広島市産業振興センターの三村理事長から、研修開始にあたって参加者に激励の言葉を掛けられました。これから8月までの長丁場ですが、受講者全員にとって有意義で充実した研修となるよう、事務局とコーディネータが一体となってバックアップしたいと思います。

開講式

開講式

◆ デザイン概論
 最初の講義は、静岡文化芸術大学名誉教授で元東芝デザインセンター長の河原林桂一郎先生による「デザイン概論」です。河原林先生は、東芝在籍時から製品や社会システムのデザインに従事され、グッドデザイン賞の審査委員もお務めになられるなど、とても幅広いご経験とご見識をお持ちで、デザインの基礎を分かりやすく、そして印象に残る言葉使いで解説して頂きました。

 私にとっても、河原林先生の講義によって、改めてデザインマネジメントの原点を洗い直すことができました。そもそもデザインとは「De(除去・否定)+Sign(共通の記号・象徴)」であり、誰もが「これだ!」と思っているものを打ち破ること。単なる新規性ではなく、既存概念を打ち破るレベルまで達してはじめて"デザイン"になるということです。確かに、最近私が愛用しているMacBook Airも、成型した部品を組み立てるのではなく、アルミを直接加工してユニボディ化を実現したものです。外見や生産性は当然優れていると思いますが、それ以上に使いやすさ、持ち運びやすさ、そして充実した機能が「ノートパソコン」の概念を覆しています。だからこそ、「ノートパソコン」や「ラップトップ」ではなく、「Mac」と呼ばれることが多いのでしょうね。

 講義では、最近話題になっているIndustrie4.0についても触れられました。もともと「第4次産業革命」を意味する言葉ですが、ドイツでの産学官連携によるものづくり高度化戦略のことです。詳細は省略しますが、IoT(Internet of Things)に代表されるように、エネルギーや物流といった側面を含めてものづくりと情報通信とを強固に深化させる動きで、河原林先生は「この動きの中で、デザインがどのように融合され、高度化されていくのかについて興味を持って見守っている」とコメントされていました。
 「デザイン概論」で扱われたテーマはとても幅広いものでしたが、受講者にとって今後の研修に必要な基礎知識を得ることができたのではないかと思います。



デザイン概論の講義風景

デザイン概論の講義風景

◆ マーケティング概論
 研修初日の2つ目の講義は、経験経済研究所代表・武蔵野美術大学講師の岡本慶一先生による「マーケティング概論」です。岡本先生は、電通や電通総研で実務に従事されたのち、現在も大学で教鞭を執られています。とても穏やかな話し方で、受講者の理解を確認されながら講義を進められたところが印象的でした。
 岡本先生の講義では、マーケティングが製品中心や消費者志向の時代を過ぎ、価値が主導する時代に移行していることを強調され、「エッジの効いた商品で価値を創出し、世界をより良く変えていくことに企業のミッションがある」と解説されました。


 なかでも、イタリアの老舗メーカーであるALESSI(アレッシー)のブランドアイデンティティ「デザイン心のない醜い商品があふれる今日の産業社会をなんとかしたい。社会とは企業活動の制約として存在するのではなく、直接的に働きかけ、変えていくべき対象として存在する」をご紹介され、受講者には相当なインパクトがあったのではないかと思います。
 ALESSI創業者のジョヴァンニ・アレッシは、食卓やリビングで家族や友人と過ごす時間を大切にした人です。だからこそ、そうした空間で使われる食器やキッチンウェアは「工業製品ではなく、応用芸術でなければならない」ということだったのでしょう。


 そして、「経験」という概念も重要であると解説されました。たんなるモノやサービスを売って価格競争に巻き込まれるのではなく、経験を売って感動を提供することが重要ということです。スターバックスで提供されるコーヒーは「スターバックス・エクスペリエンス」であり、それが感動を与えているのです。
 その例として、コーヒー一杯の値段から考えると、原材料(コーヒー豆)では5円、パッケージされてスーパーで売っているものは20円、喫茶店で出されると200円ですが、ヴェニスのカフェフロリアンで、美しい広場を見ながら朝の優雅なひと時を過ごす香り高いコーヒーは2,000円にもなるのです。これは、価値ある経験を提供している良い例ですね。
 以前、東海大学教授の唐津一さんが、ものづくりの価値を説明されるときに、「ものづくりの基本とも言える鉄は、鉄鉱石が日本に着いたときに1トン2,000円。これを鉄板にすると1トン5万円。これで自動車をつくると1トン100万円になる」と分かりやすく例えられていましたが、マーケティングやデザインも、ものづくりと同様に付加価値のある経験を提供することで生活を豊かにするものだと改めて感じました。

マーケティング概論の講義風景

 マーケティング概論の講義風景


企業支援担当コーディネータ 江種浩文

■問い合わせ先
 技術振興部(広島市工業技術センター内)

 TEL 082-242-4170(代表)  E-mail:kougi@itc.city.hiroshima.jp

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