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広島市産業振興センターNEWS 第168号(2015.7.15)

広島市産業振興センターNEWS
技術支援アラカルト

デザインマネジメント人材育成事業(広島県緊急雇用対策基金事業)開催レポート

(第4回)
~デザインを経営資源として戦略的に活用するための人材育成プログラム~


 技術振興部では、中小企業のデザイン開発力の向上を積極的に支援しています。その一環として、去る2月26日に開講しました「デザインマネジメント人材育成事業」について、本事業の企業支援担当コーディネータを務めていただいている中国地方総合研究センターの江種様よりその様子を連載でレポートしていただきます。
 受講生の皆様にデザイン先進企業の取り組みを直に見ていただこうと、デザインを活用し、成果を上げられている企業を5月15日に2社訪問しました。今回はその見学レポートをお届けします。

◆ <企業見学-1> 株式会社テオリ様

 企業見学の1社目は、岡山県倉敷市にある株式会社テオリ様を訪問しました。約30年前に家具の部品加工から事業を始めた同社は、現在は竹の集成材を用いたインテリア雑貨や家具で注目を集めています。グッドデザイン賞や倉敷ブランド、経済産業省「がんばる中小企業・小規模事業者300社」など多くの受賞歴が物語るとおり、竹の特徴を活かしたデザイン技術は国内外から高い評価を受け、オリジナル商品を次々に生み出しています。

 同社が立地する倉敷市真備(まび)地区には多くの竹林があり、これまで住宅の建築資材や稲木(稲を刈り取った後に干すための竹組み)などに使われていたのですが、近年は石膏ボードが普及し、コンバインで刈り取った稲は天日ではなく機械で乾燥する時代になったことで、間伐した竹の用途が無くなり、ほとんどが焼却処分されているそうです。中山社長は、この竹を使えないかと考え、約20年前に自社商品の開発に踏み切りました。

 しかし実際には、地元で採れた竹を集成材にして自社商品に使うにはコストが見合わないことが分かり、断念せざるを得ませんでした。その代わり、弾力性がある良質な真備の竹に似た中国・浙江省の竹を選び、現地で剣道の竹刀を製造している日系企業に集成材の作製を依頼することで、竹を用いた家具・インテリア雑貨の開発にたどり着きました。そして、商品のデザインを岡山県立大学(総社市)と連携し、先生方や卒業生の作品を次々に商品にしていきました。グッドデザイン賞を獲得したNUTS(ナッツ)やBOW(ボウ)は、そうした努力の賜物です。

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左:竹集成材を用いたNUTS(ナッツ)、右:BOW(ボウ)
(資料)株式会社テオリ

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浴用化粧品「つる肌潤い風呂」

(資料)株式会社テオリ

 それでも、中山社長の「地元の竹を用いた商品を」という情熱が消えることはなく、模索が続きました。その結果、竹の青い表皮に殺菌効果や撥水・防水性があることが分かり、それを活かした塗料を開発します。さらには、青表皮が肌の水分を保つカリウムやアミノ酸、ポリフェノールも豊富に含んでいることから、浴用化粧品への展開を考え付き、溶剤なしで粉末を液化する技術を大学から導入してこれを実現させました。竹から取れる成分だけで、香料や保存料、防腐剤などを一切使用していませんので、赤ちゃんにも安心して使える浴用化粧品として、贈り物としても人気が高いのだそうです。

 現在もなお、中山社長は地元産の竹にこだわりを持ち続けており、中国産からの切り替えを試みています。中国の人件費などが高騰していることを受けて集成材生産の再試算を行ったところ、国内生産であっても採算が確保できる結果が出たということで、地元の支援学校と連携した体制を検討しているということでした。
 大学と連携してデザイン力を高めつつ、地元で採れる素材を最大限に用いた高度なものづくりを追求される姿勢は、洗練された温かみのある商品に感じ取ることができるように思いました。

◆ <企業見学-2> アトム株式会社様
 企業見学の2社目は、竹原市のアトム株式会社様です。ゴム張り手袋・振動軽減手袋・対切創手袋をはじめとする作業用手袋や、ゴム足袋・ゴム長靴などの履物は、高い技術力とデザイン力が国内外で評価され、現在は4ヶ所の製造工場で生産体制を築いています。「作業用品を通して働く人の安全を支える」というコンセプトは、同社が地球環境保全に配慮しながら働く人の安全を第一に考えたものづくりを体現し続けた歴史そのものであると受け取れます。

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ゴム張り手袋「ゴム張りG」
(資料)アトム株式会社

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完全防水長靴「グリーンマスター」(右:収納時)
(資料)アトム株式会社

 同社では、事業内容や製造工程を簡単にご紹介頂いたのち、ゴム張り手袋の工場を見学させて頂きました。ゴム張り手袋は、大きく分けて(1)糸を編んで手袋にする →(2)天然ゴムをシート状に加工する →(3)手袋とゴムシートを貼り合わせる、の3つの工程から構成されます。
 まず(1)の工程は、多くの機械が全自動で手袋を編みます。3分で一枚の手袋が編み上がるそうです。続いて(2)の工程で、輸入した天然ゴムに薬品や油を加えて練り、シート状にします。そして(1)の手袋と(2)のシート状ゴムを(3)で貼り合わせます。このプロセスもすべて自動化されており、次から次へと手袋がプレス機に送られてゴム張りされ、その後に乾燥機にかけられてゴムが加硫し、強度と弾力が生まれます。ノウハウが凝縮されている製造プロセスです。検査工程も厳しく行われており、完成品を一度手形に装着して不良が無いかを確かめ、その後に針が混入していないかも確認されていました。安全を追求するには、こうしたプロセスは欠かせませんね。

 工場見学の後に、同社がグッドデザイン賞を獲得した作業用の長靴「グリーンマスター」の開発経緯をお聞きしました。長靴は立てて保管するのが既成概念だったのですが、軽くて柔らかい合成ゴムを使用することで、丸めてコンパクトに収納できるようにしたことが画期的と評価されています。確かにこれなら持ち運びも簡単ですし、デザインにも優れているのでガーデニングにも似合います。この商品を開発されたゴルフが趣味の部長さんは、ゴルフ場での作業環境を踏まえて改良を重ねられたということですので、自身の趣味がデザインのヒントを与えてくれる好例と思います。

 同社は多くの商品ラインナップを揃えていますが、商品デザインやパッケージデザインはほぼ社内で担当されているそうです。「統一感がないと言われます」と苦笑されていましたが、特徴のあるデザインは消費者の目を惹きますし、使用者の作業環境を研究された機能も十分に備えていますので、国内外で高いシェアを誇っている理由が理解できました。


(この場をお借りして、株式会社テオリ様ならびにアトム株式会社様に、本講座での企業見学へのご協力に対して深く感謝申し上げます)


「デザインマネジメント人材育成事業」コーディネーター 江種浩文



■問い合わせ先
 技術振興部(広島市工業技術センター内)

 TEL 082-242-4170(代表)  E-mail:kougi@itc.city.hiroshima.jp

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デザインマネジメント人材育成事業(広島県緊急雇用対策基金事業)開催レポート

(第4回)
~デザインを経営資源として戦略的に活用するための人材育成プログラム~


 技術振興部では、中小企業のデザイン開発力の向上を積極的に支援しています。その一環として、去る2月26日に開講しました「デザインマネジメント人材育成事業」について、本事業の企業支援担当コーディネータを務めていただいている中国地方総合研究センターの江種様よりその様子を連載でレポートしていただきます。
 受講生の皆様にデザイン先進企業の取り組みを直に見ていただこうと、デザインを活用し、成果を上げられている企業を5月15日に2社訪問しました。今回はその見学レポートをお届けします。

◆ <企業見学-1> 株式会社テオリ様

 企業見学の1社目は、岡山県倉敷市にある株式会社テオリ様を訪問しました。約30年前に家具の部品加工から事業を始めた同社は、現在は竹の集成材を用いたインテリア雑貨や家具で注目を集めています。グッドデザイン賞や倉敷ブランド、経済産業省「がんばる中小企業・小規模事業者300社」など多くの受賞歴が物語るとおり、竹の特徴を活かしたデザイン技術は国内外から高い評価を受け、オリジナル商品を次々に生み出しています。

 同社が立地する倉敷市真備(まび)地区には多くの竹林があり、これまで住宅の建築資材や稲木(稲を刈り取った後に干すための竹組み)などに使われていたのですが、近年は石膏ボードが普及し、コンバインで刈り取った稲は天日ではなく機械で乾燥する時代になったことで、間伐した竹の用途が無くなり、ほとんどが焼却処分されているそうです。中山社長は、この竹を使えないかと考え、約20年前に自社商品の開発に踏み切りました。

 しかし実際には、地元で採れた竹を集成材にして自社商品に使うにはコストが見合わないことが分かり、断念せざるを得ませんでした。その代わり、弾力性がある良質な真備の竹に似た中国・浙江省の竹を選び、現地で剣道の竹刀を製造している日系企業に集成材の作製を依頼することで、竹を用いた家具・インテリア雑貨の開発にたどり着きました。そして、商品のデザインを岡山県立大学(総社市)と連携し、先生方や卒業生の作品を次々に商品にしていきました。グッドデザイン賞を獲得したNUTS(ナッツ)やBOW(ボウ)は、そうした努力の賜物です。

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左:竹集成材を用いたNUTS(ナッツ)、右:BOW(ボウ)
(資料)株式会社テオリ

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浴用化粧品「つる肌潤い風呂」

(資料)株式会社テオリ

 それでも、中山社長の「地元の竹を用いた商品を」という情熱が消えることはなく、模索が続きました。その結果、竹の青い表皮に殺菌効果や撥水・防水性があることが分かり、それを活かした塗料を開発します。さらには、青表皮が肌の水分を保つカリウムやアミノ酸、ポリフェノールも豊富に含んでいることから、浴用化粧品への展開を考え付き、溶剤なしで粉末を液化する技術を大学から導入してこれを実現させました。竹から取れる成分だけで、香料や保存料、防腐剤などを一切使用していませんので、赤ちゃんにも安心して使える浴用化粧品として、贈り物としても人気が高いのだそうです。

 現在もなお、中山社長は地元産の竹にこだわりを持ち続けており、中国産からの切り替えを試みています。中国の人件費などが高騰していることを受けて集成材生産の再試算を行ったところ、国内生産であっても採算が確保できる結果が出たということで、地元の支援学校と連携した体制を検討しているということでした。
 大学と連携してデザイン力を高めつつ、地元で採れる素材を最大限に用いた高度なものづくりを追求される姿勢は、洗練された温かみのある商品に感じ取ることができるように思いました。

◆ <企業見学-2> アトム株式会社様
 企業見学の2社目は、竹原市のアトム株式会社様です。ゴム張り手袋・振動軽減手袋・対切創手袋をはじめとする作業用手袋や、ゴム足袋・ゴム長靴などの履物は、高い技術力とデザイン力が国内外で評価され、現在は4ヶ所の製造工場で生産体制を築いています。「作業用品を通して働く人の安全を支える」というコンセプトは、同社が地球環境保全に配慮しながら働く人の安全を第一に考えたものづくりを体現し続けた歴史そのものであると受け取れます。

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ゴム張り手袋「ゴム張りG」
(資料)アトム株式会社

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完全防水長靴「グリーンマスター」(右:収納時)
(資料)アトム株式会社

 同社では、事業内容や製造工程を簡単にご紹介頂いたのち、ゴム張り手袋の工場を見学させて頂きました。ゴム張り手袋は、大きく分けて(1)糸を編んで手袋にする →(2)天然ゴムをシート状に加工する →(3)手袋とゴムシートを貼り合わせる、の3つの工程から構成されます。
 まず(1)の工程は、多くの機械が全自動で手袋を編みます。3分で一枚の手袋が編み上がるそうです。続いて(2)の工程で、輸入した天然ゴムに薬品や油を加えて練り、シート状にします。そして(1)の手袋と(2)のシート状ゴムを(3)で貼り合わせます。このプロセスもすべて自動化されており、次から次へと手袋がプレス機に送られてゴム張りされ、その後に乾燥機にかけられてゴムが加硫し、強度と弾力が生まれます。ノウハウが凝縮されている製造プロセスです。検査工程も厳しく行われており、完成品を一度手形に装着して不良が無いかを確かめ、その後に針が混入していないかも確認されていました。安全を追求するには、こうしたプロセスは欠かせませんね。

 工場見学の後に、同社がグッドデザイン賞を獲得した作業用の長靴「グリーンマスター」の開発経緯をお聞きしました。長靴は立てて保管するのが既成概念だったのですが、軽くて柔らかい合成ゴムを使用することで、丸めてコンパクトに収納できるようにしたことが画期的と評価されています。確かにこれなら持ち運びも簡単ですし、デザインにも優れているのでガーデニングにも似合います。この商品を開発されたゴルフが趣味の部長さんは、ゴルフ場での作業環境を踏まえて改良を重ねられたということですので、自身の趣味がデザインのヒントを与えてくれる好例と思います。

 同社は多くの商品ラインナップを揃えていますが、商品デザインやパッケージデザインはほぼ社内で担当されているそうです。「統一感がないと言われます」と苦笑されていましたが、特徴のあるデザインは消費者の目を惹きますし、使用者の作業環境を研究された機能も十分に備えていますので、国内外で高いシェアを誇っている理由が理解できました。


(この場をお借りして、株式会社テオリ様ならびにアトム株式会社様に、本講座での企業見学へのご協力に対して深く感謝申し上げます)


「デザインマネジメント人材育成事業」コーディネーター 江種浩文



■問い合わせ先
 技術振興部(広島市工業技術センター内)

 TEL 082-242-4170(代表)  E-mail:kougi@itc.city.hiroshima.jp

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