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広島市産業振興センターNEWS 第174号(2015.10.15)

広島市産業振興センターNEWS

技術情報の提供 (材料・加工技術室)

 「硬さ試験」


 「硬い」、「柔らかい」などの言葉は、ものの性質を表す言葉として、日常生活の中でも広く使われています。いきなりですが、アルミニウムは硬いですか?と聞かれたとき、どのように答えるでしょう?

 多少は別にして、「硬い」と答える人もいれば、「柔らかい」と答える人もいると思います。日常で、プラスチックなどを多く取り扱われている方にとっては「硬い」と感じ、一方で、鉄などを多く取り扱っている方にとっては「柔らかい」と感じるのではないかと思います。つまり、感覚的な比較によって、「硬い」、「柔らかい」と判断しています。
 例えば、ある金属について、Aさんが「硬い」、Bさんが「柔らかい」と言っているものについて、Cさんが、その金属が「硬い」のか「柔らかい」のか判断するためには、やはり数値的な尺度が必要になってきます。この数値的な尺度、「硬さ値」を決めるための試験が硬さ試験になります。
 前述のように、「硬さ」は感覚的なものであり、これを物理的に定義することは非常に難しいことです。質量や長さ、もしくは引張強さなどの物理基本量では、その基本単位が決められており、測定量はその基本単位の何倍と表すことができますが、実は硬さ試験によって得られる数値は、それぞれ基本単位を持たず、その数値自体に物理的な意味はありません。硬さ値は工業量と呼ばれ、それぞれ定められた試験結果より得られますが、現在、その数値は過去に積み上げられた実績と実験結果に基づき、硬さを表す尺度として有効に活用されています。
 硬さ試験方法は、多数存在し、状況や試験片の形状等によって使い分けられています。主な金属材料の硬さ試験方法として、以下のようなJISに規定されている硬さ試験方法があります。


(1) JIS Z 2243 ブリネル硬さ試験
(2) JIS Z 2244 ビッカース硬さ試験
(3) JIS Z 2245 ロックウェル硬さ試験
(4) JIS Z 2246 ショア硬さ試験
(5) JIS Z 2251 ヌープ硬さ試験
(6) JIS Z 2252 高温ビッカース硬さ試験
(7) JIS Z 2255 超微小負荷硬さ試験

 (4)のショア硬さ試験とは、小さな球を被試験体にぶつけて、その球の跳ね返る量を測定することで硬さ値を決定する試験方法です。跳ね返る量が大きいほど硬いということになります。この試験方法によっては、被試験体を殆ど傷つけることなく試験を実施することができ、また、ハンディータイプの試験機もあり、現場で簡単に試験が実施できることがメリットの硬さ試験方法です。
 上記のショア硬さ以外は、押し込み硬さ試験方法とも呼ばれ、円錐、三角錐、四角錐、球形等の圧子を、試験体の表面に規定の力で押し付けることで生じる変形(くぼみ)の大きさを測定する、もしくは、くぼみの深さを測定することによって硬さ値を求めます。基本的には、くぼみが小さいほど、また、くぼみが浅いほど硬いということになります。
 上記の硬さ試験方法の内で、くぼみの大きさを測定する試験方法は、(1)ブリネル硬さ試験、(2)ビッカース硬さ試験、(5)ヌープ硬さ試験、(6)高温ビッカース硬さ試験になります。この中で、例えば(2)のビッカース硬さ試験は、下図のように、ダイヤモンド製の四角錐の圧子を試験体の表面に押し付けて、出来たひし形のくぼみの対角線を測定して表面積を求めて、押し付けた力を表面積で割ることで硬さ値を求めます。

ビッカース硬さ試験

 ビッカース硬さ試験は、押し付ける力を変えても、比較的良い相関性を保ち、例えば、試験力が1㎏でも、50gでも、得られる硬さ値が、ほとんど同じ値になります。つまり、大きなものから小さなものまで、また、硬いものから柔らかいものまで、同じビッカース硬さ値で表現できることがメリットで、広い範囲で利用されています。
 次に、くぼみの深さを測定する試験方法は、(3)ロックウェル硬さ試験、(7)超微小硬さ試験になります。例えば、(3)のロックウェル硬さ試験方法は、ダイヤモンド製の円錐圧子、または、球圧子を押し付けて、できたくぼみの深さで硬さ値を求めます。ロックウェル硬さ試験は、試験力が比較的大きく、試験体の表面状態の影響を受けにくく、また、試験結果を得ることが比較的容易な試験方法であることから、幅広く利用されている硬さ試験方法です。
 硬さ値は、ただ「硬い」、「柔らかい」だけでなく、鉄鋼材料等で、それぞれの硬さ値と引張強さの間に高い相関関係を示します。つまり、硬さ値から材料の強さの概算値を比較的容易に求めることができます。(7)の超微小硬さ試験では、試験力が非常に小さく、超微小領域での試験が可能で、例えば薄いめっき皮膜の硬さなどを直接評価することもできます。また、この試験方法では、試験中の圧子が試験体に押し込まれていくときの挙動を理論的に解析することで、弾性率等の材料の特性も求めることができます。
 材料の強さを求めようとして、例えば引張試験を行うとき、規定の試験片を準備する必要があり、比較的大きな素材から、機械加工により試験片を作成します。これに対して、硬さ試験の試験片は比較的小さなもので良く、また、加工も容易で、もしくは無加工(実体)でも試験可能であることから、硬さ試験は、日常の品質管理等にも幅広く活用されています。
 これまで、硬さ試験についてご紹介してきましたが、これだけ便利な硬さ試験方法について、なぜこんなにたくさんの種類の硬さ試験方法が要るのであろうと思われた方もいると思います。また、なぜ統一された基準での評価をしないのだろうと思われた方もいるかもしれません。実は、それぞれの硬さ試験方法には、メリットもあればデメリットもあるため、それぞれの場面にあった硬さ試験方法を選択する必要が有るためです。
 当センターでは、今回ご紹介した硬さ試験機のほとんどを所有しており、それぞれの試験方法のメリットとデメリットを把握して、皆様のご要望に対応しております。硬さの評価をしてみたいと思われた際には、お気軽にご相談ください。

■問い合わせ先
 技術振興部 材料・加工技術室 (広島市工業技術センター内)
 TEL 082-242-4170(代表)  E-mail:kougi@itc.city.hiroshima.jp

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 「硬さ試験」


 「硬い」、「柔らかい」などの言葉は、ものの性質を表す言葉として、日常生活の中でも広く使われています。いきなりですが、アルミニウムは硬いですか?と聞かれたとき、どのように答えるでしょう?

 多少は別にして、「硬い」と答える人もいれば、「柔らかい」と答える人もいると思います。日常で、プラスチックなどを多く取り扱われている方にとっては「硬い」と感じ、一方で、鉄などを多く取り扱っている方にとっては「柔らかい」と感じるのではないかと思います。つまり、感覚的な比較によって、「硬い」、「柔らかい」と判断しています。
 例えば、ある金属について、Aさんが「硬い」、Bさんが「柔らかい」と言っているものについて、Cさんが、その金属が「硬い」のか「柔らかい」のか判断するためには、やはり数値的な尺度が必要になってきます。この数値的な尺度、「硬さ値」を決めるための試験が硬さ試験になります。
 前述のように、「硬さ」は感覚的なものであり、これを物理的に定義することは非常に難しいことです。質量や長さ、もしくは引張強さなどの物理基本量では、その基本単位が決められており、測定量はその基本単位の何倍と表すことができますが、実は硬さ試験によって得られる数値は、それぞれ基本単位を持たず、その数値自体に物理的な意味はありません。硬さ値は工業量と呼ばれ、それぞれ定められた試験結果より得られますが、現在、その数値は過去に積み上げられた実績と実験結果に基づき、硬さを表す尺度として有効に活用されています。
 硬さ試験方法は、多数存在し、状況や試験片の形状等によって使い分けられています。主な金属材料の硬さ試験方法として、以下のようなJISに規定されている硬さ試験方法があります。


(1) JIS Z 2243 ブリネル硬さ試験
(2) JIS Z 2244 ビッカース硬さ試験
(3) JIS Z 2245 ロックウェル硬さ試験
(4) JIS Z 2246 ショア硬さ試験
(5) JIS Z 2251 ヌープ硬さ試験
(6) JIS Z 2252 高温ビッカース硬さ試験
(7) JIS Z 2255 超微小負荷硬さ試験

 (4)のショア硬さ試験とは、小さな球を被試験体にぶつけて、その球の跳ね返る量を測定することで硬さ値を決定する試験方法です。跳ね返る量が大きいほど硬いということになります。この試験方法によっては、被試験体を殆ど傷つけることなく試験を実施することができ、また、ハンディータイプの試験機もあり、現場で簡単に試験が実施できることがメリットの硬さ試験方法です。
 上記のショア硬さ以外は、押し込み硬さ試験方法とも呼ばれ、円錐、三角錐、四角錐、球形等の圧子を、試験体の表面に規定の力で押し付けることで生じる変形(くぼみ)の大きさを測定する、もしくは、くぼみの深さを測定することによって硬さ値を求めます。基本的には、くぼみが小さいほど、また、くぼみが浅いほど硬いということになります。
 上記の硬さ試験方法の内で、くぼみの大きさを測定する試験方法は、(1)ブリネル硬さ試験、(2)ビッカース硬さ試験、(5)ヌープ硬さ試験、(6)高温ビッカース硬さ試験になります。この中で、例えば(2)のビッカース硬さ試験は、下図のように、ダイヤモンド製の四角錐の圧子を試験体の表面に押し付けて、出来たひし形のくぼみの対角線を測定して表面積を求めて、押し付けた力を表面積で割ることで硬さ値を求めます。

ビッカース硬さ試験

 ビッカース硬さ試験は、押し付ける力を変えても、比較的良い相関性を保ち、例えば、試験力が1㎏でも、50gでも、得られる硬さ値が、ほとんど同じ値になります。つまり、大きなものから小さなものまで、また、硬いものから柔らかいものまで、同じビッカース硬さ値で表現できることがメリットで、広い範囲で利用されています。
 次に、くぼみの深さを測定する試験方法は、(3)ロックウェル硬さ試験、(7)超微小硬さ試験になります。例えば、(3)のロックウェル硬さ試験方法は、ダイヤモンド製の円錐圧子、または、球圧子を押し付けて、できたくぼみの深さで硬さ値を求めます。ロックウェル硬さ試験は、試験力が比較的大きく、試験体の表面状態の影響を受けにくく、また、試験結果を得ることが比較的容易な試験方法であることから、幅広く利用されている硬さ試験方法です。
 硬さ値は、ただ「硬い」、「柔らかい」だけでなく、鉄鋼材料等で、それぞれの硬さ値と引張強さの間に高い相関関係を示します。つまり、硬さ値から材料の強さの概算値を比較的容易に求めることができます。(7)の超微小硬さ試験では、試験力が非常に小さく、超微小領域での試験が可能で、例えば薄いめっき皮膜の硬さなどを直接評価することもできます。また、この試験方法では、試験中の圧子が試験体に押し込まれていくときの挙動を理論的に解析することで、弾性率等の材料の特性も求めることができます。
 材料の強さを求めようとして、例えば引張試験を行うとき、規定の試験片を準備する必要があり、比較的大きな素材から、機械加工により試験片を作成します。これに対して、硬さ試験の試験片は比較的小さなもので良く、また、加工も容易で、もしくは無加工(実体)でも試験可能であることから、硬さ試験は、日常の品質管理等にも幅広く活用されています。
 これまで、硬さ試験についてご紹介してきましたが、これだけ便利な硬さ試験方法について、なぜこんなにたくさんの種類の硬さ試験方法が要るのであろうと思われた方もいると思います。また、なぜ統一された基準での評価をしないのだろうと思われた方もいるかもしれません。実は、それぞれの硬さ試験方法には、メリットもあればデメリットもあるため、それぞれの場面にあった硬さ試験方法を選択する必要が有るためです。
 当センターでは、今回ご紹介した硬さ試験機のほとんどを所有しており、それぞれの試験方法のメリットとデメリットを把握して、皆様のご要望に対応しております。硬さの評価をしてみたいと思われた際には、お気軽にご相談ください。

■問い合わせ先
 技術振興部 材料・加工技術室 (広島市工業技術センター内)
 TEL 082-242-4170(代表)  E-mail:kougi@itc.city.hiroshima.jp

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