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広島市産業振興センターNEWS 第177号(2015.12.1)

広島市産業振興センターNEWS

技術情報の提供 (材料・加工技術室)

 「ものづくりの材料評価(引張性質)」


 ものづくりにおける工業製品や部品の設計は、破壊はもちろんのこと、使用に耐えない変形が生じないように、形状を決めなくてはなりません。

 形状を決めるには、その材料の持つ性質を知る必要があります。その性質の一つに引張性質があり、これは引張試験により評価します。

 引張試験は、専用の引張試験機または、写真1のような万能試験機と呼ばれる装置を使って行います。写真2に試験前の試料を掴んだ様子を示します。試料を掴んだ状態で上下間を離して行くと、その引張る負荷に耐えられなくなった試料(材料)は徐々に伸びていき最後には破断します。写真3に破断した様子を示します。

271201-6-1.jpg 271201-6-2.jpg 271201-6-3.jpg
写真1 万能試験機

写真2 試験前

(試料を掴んだ状態)

写真3 試験後

(破断した状態)


 このような引張試験により材料が伸びた時(ひずみ)に生じる力(応力)を表している「応力-ひずみ線図」と呼ばれる関係図が求まります。下図は軟鋼の引張試験を行ったときの代表的な「応力-ひずみ線図」の例です。



271201-6-4.jpg図1 応力-ひずみ線図(軟鋼の場合)  



 材料に力を加えていくと変形して元に戻らなくなり最終的には破壊されてしまいます。初めのうちは加えた力を除くと元の形に戻ります。先程示した引張試験時の「応力-ひずみ線図」で言うと初期段階の直線で表されている領域にあたります。この領域を弾性域と言います。さらに力を加えていくと材料はより変形していき、この状態で力を除いても形は以前の形には戻りません。この領域を塑性域と言います。材料に力を加えて変形した時に力を取り除くと元の形に戻る限界の応力を上降伏点と言います。一般的には、この上降伏点を降伏点としています。さらに加える力を増していくと最大値を示した後、減少します。この最大値の応力を引張強さと言い、応力は次式で表します。

 σ=P / A
   ここで、σ:応力(MPa)、P:力(荷重)(N)、A:断面積(mm2
 応力の単位は、MPa(メガパスカル、=1×10 Pa)で表し、単位面積(この場合、1平方ミリメートル)あたりにかかる力のことです。
 また、この引張強さまでの材料の変形は試料の平行部全体(写真2で示す資料の中央の細い部分)が一様に細く変形していきます(一様伸び)が、この引張強さを過ぎると材料の一番弱い部分が細く変形していき、ある時点で材料は破断します。写真4にその状態を示します。一部分が細くなり横向きに亀裂が入っているのが分かります。

271201-6-5.jpg
    写真4 破断寸前


 ものづくりを行なう上で、これらの変形や応力を知ることはとても重要です。これらの材料性質は材料ごとに異なっており、使用目的に応じて材料を選ぶことになります。実際は、このような引張性質以外のじん性、疲労特性、摩耗特性、耐食性などの性質も知る必要がありますが、引張性質は材料の使用可能な強度領域を判定するうえで重要な基準の一つになります。
 また、引張強さ、降伏点の大きさも重要ですが、降伏点から引張強さまでの伸びを表す一様伸びの値を含めたバランスが実用の上では必要となります。
 機械設計では、降伏点は大きいほど使用できる範囲が広くなります。一般的には引張強さが大きいほど降伏点が大きくなる傾向があり、高強度材料としては、引張強さを大きくすることが目的の一つとなり、同じ引張強さでも降伏点が大きいほうが有利です。その反面、高強度材料としては優れていても脆性的な破壊をする可能性があります。
 この引張強さに対する降伏点の比率のことを降伏比と言います。引張強さと降伏点の差がないとき降伏比は高くなり、差が大きいとき降伏比は低くなり、それぞれの材料を高降伏比材料及び低降伏比材料と言います。例えば、低降伏比材料である低炭素鋼のS25C材の場合、降伏点245MPa、引張強さ400MPaとすると降伏比は0.61となります。厳密に区別する必要はありませんが、一般的には、降伏比が0.8あたりを境に区別されているようです。
 低降伏比材料では降伏点(弾性域)を過ぎて、さらに力が加わっても降伏点と引張強さに比較的大きな差があるため塑性変形を続けることができます。破壊するまでに変形(伸びる)する能力に優れることから、プレス成形に適しています。近年では、高降伏比材料のプレス成形の研究も進み、製品化に至っているものもあります。
 自動車等の輸送用車両の車体や部品の薄肉化、軽量化のために高強度材料は必要であり、その中でも近年は高張力鋼板(ハイテン材)の使用が拡大しています。ハイテン材は、引張強さ340~980MPaのものが多く使用されており、1180MPaのものも使われています。材質を制御することで、引張強さ590MPaの高降伏比(約0.85)のものや590~1180MPaの低降伏比(約0.6)のものなどがあり、同じ強度クラスにあるものでも降伏点、伸びあるいは加工性を重視したものなど最適な材料設計が可能となっています。
 当センターには、機械式万能試験機(10kN、250kN(写真1))及び油圧サーボ式万能試験機(500kN、1000kN)の4台の万能試験機があります。
 油圧サーボ式万能試験機については設備利用として、企業の皆さま自ら使用することができます。
 また、引張強さ、降伏点以外にも皆さまからの依頼で伸び、弾性率、耐力なども測定しています。
 お気軽にご相談ください。

■問い合わせ先
 技術振興部 材料・加工技術室 (広島市工業技術センター内)
 TEL 082-242-4170(代表)  E-mail:kougi@itc.city.hiroshima.jp

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 「ものづくりの材料評価(引張性質)」


 ものづくりにおける工業製品や部品の設計は、破壊はもちろんのこと、使用に耐えない変形が生じないように、形状を決めなくてはなりません。

 形状を決めるには、その材料の持つ性質を知る必要があります。その性質の一つに引張性質があり、これは引張試験により評価します。

 引張試験は、専用の引張試験機または、写真1のような万能試験機と呼ばれる装置を使って行います。写真2に試験前の試料を掴んだ様子を示します。試料を掴んだ状態で上下間を離して行くと、その引張る負荷に耐えられなくなった試料(材料)は徐々に伸びていき最後には破断します。写真3に破断した様子を示します。

271201-6-1.jpg 271201-6-2.jpg 271201-6-3.jpg
写真1 万能試験機

写真2 試験前

(試料を掴んだ状態)

写真3 試験後

(破断した状態)


 このような引張試験により材料が伸びた時(ひずみ)に生じる力(応力)を表している「応力-ひずみ線図」と呼ばれる関係図が求まります。下図は軟鋼の引張試験を行ったときの代表的な「応力-ひずみ線図」の例です。



271201-6-4.jpg図1 応力-ひずみ線図(軟鋼の場合)  



 材料に力を加えていくと変形して元に戻らなくなり最終的には破壊されてしまいます。初めのうちは加えた力を除くと元の形に戻ります。先程示した引張試験時の「応力-ひずみ線図」で言うと初期段階の直線で表されている領域にあたります。この領域を弾性域と言います。さらに力を加えていくと材料はより変形していき、この状態で力を除いても形は以前の形には戻りません。この領域を塑性域と言います。材料に力を加えて変形した時に力を取り除くと元の形に戻る限界の応力を上降伏点と言います。一般的には、この上降伏点を降伏点としています。さらに加える力を増していくと最大値を示した後、減少します。この最大値の応力を引張強さと言い、応力は次式で表します。

 σ=P / A
   ここで、σ:応力(MPa)、P:力(荷重)(N)、A:断面積(mm2
 応力の単位は、MPa(メガパスカル、=1×10 Pa)で表し、単位面積(この場合、1平方ミリメートル)あたりにかかる力のことです。
 また、この引張強さまでの材料の変形は試料の平行部全体(写真2で示す資料の中央の細い部分)が一様に細く変形していきます(一様伸び)が、この引張強さを過ぎると材料の一番弱い部分が細く変形していき、ある時点で材料は破断します。写真4にその状態を示します。一部分が細くなり横向きに亀裂が入っているのが分かります。

271201-6-5.jpg
    写真4 破断寸前


 ものづくりを行なう上で、これらの変形や応力を知ることはとても重要です。これらの材料性質は材料ごとに異なっており、使用目的に応じて材料を選ぶことになります。実際は、このような引張性質以外のじん性、疲労特性、摩耗特性、耐食性などの性質も知る必要がありますが、引張性質は材料の使用可能な強度領域を判定するうえで重要な基準の一つになります。
 また、引張強さ、降伏点の大きさも重要ですが、降伏点から引張強さまでの伸びを表す一様伸びの値を含めたバランスが実用の上では必要となります。
 機械設計では、降伏点は大きいほど使用できる範囲が広くなります。一般的には引張強さが大きいほど降伏点が大きくなる傾向があり、高強度材料としては、引張強さを大きくすることが目的の一つとなり、同じ引張強さでも降伏点が大きいほうが有利です。その反面、高強度材料としては優れていても脆性的な破壊をする可能性があります。
 この引張強さに対する降伏点の比率のことを降伏比と言います。引張強さと降伏点の差がないとき降伏比は高くなり、差が大きいとき降伏比は低くなり、それぞれの材料を高降伏比材料及び低降伏比材料と言います。例えば、低降伏比材料である低炭素鋼のS25C材の場合、降伏点245MPa、引張強さ400MPaとすると降伏比は0.61となります。厳密に区別する必要はありませんが、一般的には、降伏比が0.8あたりを境に区別されているようです。
 低降伏比材料では降伏点(弾性域)を過ぎて、さらに力が加わっても降伏点と引張強さに比較的大きな差があるため塑性変形を続けることができます。破壊するまでに変形(伸びる)する能力に優れることから、プレス成形に適しています。近年では、高降伏比材料のプレス成形の研究も進み、製品化に至っているものもあります。
 自動車等の輸送用車両の車体や部品の薄肉化、軽量化のために高強度材料は必要であり、その中でも近年は高張力鋼板(ハイテン材)の使用が拡大しています。ハイテン材は、引張強さ340~980MPaのものが多く使用されており、1180MPaのものも使われています。材質を制御することで、引張強さ590MPaの高降伏比(約0.85)のものや590~1180MPaの低降伏比(約0.6)のものなどがあり、同じ強度クラスにあるものでも降伏点、伸びあるいは加工性を重視したものなど最適な材料設計が可能となっています。
 当センターには、機械式万能試験機(10kN、250kN(写真1))及び油圧サーボ式万能試験機(500kN、1000kN)の4台の万能試験機があります。
 油圧サーボ式万能試験機については設備利用として、企業の皆さま自ら使用することができます。
 また、引張強さ、降伏点以外にも皆さまからの依頼で伸び、弾性率、耐力なども測定しています。
 お気軽にご相談ください。

■問い合わせ先
 技術振興部 材料・加工技術室 (広島市工業技術センター内)
 TEL 082-242-4170(代表)  E-mail:kougi@itc.city.hiroshima.jp

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