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(64)地域経済循環について考える(第3回) 

広島市産業振興センターNEWS 第178号(2015.12.15)

広島市産業振興センターNEWS

経営者のお役立ち情報「メルマガ誌上セミナー」(64)
地域経済循環について考える(第3回) 

日本の「空き家問題」の本質とは

 中小企業の経営者が抱える経営課題について、専門家の方にわかりやすく解説していただいています。なお、このセミナーのバックナンバーは「Webセミナー」で公開しています。

若本 修治さん

若本 修治さん

日本の「空き家問題」の本質とは

 

若本 修治(わかもと しゅうじ)

ダブルスネットワーク株式会社 代表取締役

中小企業診断士・インテリアコーディネーター・福祉用具専門相談員

ひろしま産業振興機構専門相談員・広島市中小企業支援センター窓口相談員

<NPO法人住環境デザイン協会 副理事長>

 

総務省統計局から発表された「平成25年住宅・土地統計調査結果」によると日本の総住宅数は6,063万戸、うち空き家は820万戸で空き家率は13.5%となっています。統計データ上では7軒に1軒の割合で人が住んでいない家があるのです。

実際の統計データを詳しく見ていくと、空き家といっても大きく3つに分類されます。まずは別荘のように日常的に住んでいる訳ではないものの、時々利用され管理もされている『二次的住宅』。そして次の入居者を募集している『賃貸・売却用住宅』もかなりあります。

実際に誰も住むことがなく老朽化したまま放置されている本当の意味での「空き家」は5%程度。このような住宅は、すでに需要が失われている地域にあることがほとんどです。不動産価値は無いに等しく、仮に田畑付きで300万円で売り出されたとしても、不動産仲介業者が得られる『仲介手数料』は十数万円しかありません。

だから「中古住宅の流通活性化が必要だ!」と声高に叫ぶ業者でも、過疎地の物件は誰も扱おうとしないのが現実の姿です。数回下見の物件案内をしたら、契約できても広告費や移動経費で消えてしまうのです。

古民家を改装して店舗や事務所として利用できるのは、人口規模のある都市近郊の集落か、多くの人が集まる観光地周辺でしか投資に見合いません。今後人口減少など需要が減退していく場所では「一時的な空き家利用」も根本的な問題解決には至らないでしょう。

まずすべきは、需要が減退する地域での「新築住宅の着工を抑制すること」です。郊外や過疎地に耕作放棄地が増える中、相続税の負担が強化され、需要が減っていくにも関わらず相続税対策のために賃貸アパートが建てられます。その建築の担い手の多くは県外のハウスメーカー。相続税負担を避けるのが目的なので、借金をしながらも見積の中身は精査せず、割高な建築費を負担しているのです。

一方、子育て世代が住んで欲しい既成市街地には、コインパーキングや商業施設のための広めの駐車場など「自動車のための空間」ばかりが増加しています。「木賃アパート」と呼ばれる老朽化した耐震性能の劣る賃貸住宅や古い借家も、建替え更新が進みません。

高齢化が進む都心部では年金暮らしのお年寄りや、日雇労働者、生活保護世帯など、低収入で暮らし続ける人たちがいて、減価償却も終わっている所有者は、低家賃でもそのまま貸し続けることを選択します。古い借地借家法が、入居者の立ち退きに莫大な費用を擁するため、老朽化したままのほうがメリットが多いのです。

欧米では低所得者向けに「社会住宅」という家賃補助の民間住宅が建てられます。その多くは地元の工務店・建設会社が施工を手掛け、地域に仕事と雇用を生みます。一般住宅も含めて将来にわたって残したいと思えるその地独自の街並みがつくられ、魅力ある景観は、需要が長く続くから中古でも高く売れ、高い固定資産税も負担できるという地域循環が続くのです。



日本の「空き家問題」の本質とは



■<講師プロフィール>
 若本 修治(わかもと しゅうじ)

昭和59年福岡大学工学部建築学科卒業後、株式会社布谷に入社。その後、株式会社リック工房等の勤務を経て、平成13年に、ダブルスネットワーク株式会社を設立し、現在に至る。また現在、広島市中小企業支援センター登録専門家として、建設業、小売流通業の販売促進等について支援を行っている他、国民住生活の安心・安全の確保と、地域社会の健全な発展に寄与することを目的として平成22年に設立された、一般社団法人全日本インスペクターズ連合会の常務理事を務めている。

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