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(69)人の心を導くための導線計画(第2回)

広島市産業振興センターNEWS

経営者のお役立ち情報「メルマガ誌上セミナー」(69)

 人の心を導くための導線計画(第2回)


 中小企業の経営者が抱える経営課題について、専門家の方にわかりやすく解説していただいています。なお、このセミナーのバックナンバーは「Webセミナー」で公開しています。



山本 胖さん

日本人の感性を生かした導線とは




山本 胖 (やまもと ゆたか)

カーサ商業建築研究所 主宰

一級建築士

 

 


 日本人の感性を生かした導線の最たるものは、日本庭園や、茶室に導く露地(ろじ)のしつらえです。

 露地には、飛び石や景石、季節の移ろいを感じさせる苔や山野草、数々の樹木が配置され、外界から隔離された道筋を進めば木漏れ日の中、自然に抱かれた神秘的な空間の中で茶室に導かれます。

 客人は蹲踞(つくばい)で手を清め口をそそぎ、腰を屈めて小さな躙り口(にじりぐち)から茶室に入り、亭主からお茶のもてなしを受け、心を通い合わせるのです。

 待合から茶室までの短い導線には、亭主が大切な客人を導くため自然をベースにした多彩な物語の中で、季節感や空気感を心で感じて頂く仕草がこもっています。人の心を導くための露地は日本の感受性や精神文化、美意識が凝縮され、感性を生かす導線文化そのものなのです。それは日本の気候風土が育んできた多様で豊かな感性で、日本の美意識や価値観としての日本人の精神文化の原点でもあります。

広島縮景園 苔と濯纓池(タクエイチ) 清風館の露地
広島縮景園 苔と濯纓池(たくえいち) 清風館の露地

              

広島縮景園で感じたこと

 先日、雨上がりの広島縮景園を訪れた時のことです。

 回遊園路に添って池や山へと高低差に導かれながら散策すると庭の表情が色々と変化してきます。濯纓池(たくえいち)を眺めれば瀬戸内の多島美(たとうび)の美しさが凝縮され、江戸時代の作庭意図が伝わってきます。茶室の露地では飛び石や玉砂利が雨に濡れ、深みの色を放ち、苔や草木もいきいきと輝き梅雨の美しさを堪能できました。外国からの観光客も多く、このような自然観が生かされた日本庭園を訪れると日本人の感性はなんて素晴らしいのだろうと誇りに思えるのです。

感性を生かした店の導線づくり
 現代における商業施設の導線は、茶室の露地のように店主の感性や多様なコンセプトに基づく理念と創意工夫が必要とされます。それは店主と顧客が相対する空間の中で、感動を共感し合う豊かな表現力を生活者は求めているのです。しかし、私たちの近代化は利便性や効率性が最優先され、街や店舗づくりの動線も機能的で合理的な効率動線のみが良しとされてきました。それは日本人特有の心で感じる多様で豊かな感性を少し忘れかけてきているように思えてなりません。私たちは本来、日本人らしさの中で独自の感性と美学の中でモノを心で捉えてきているのです。
 日本人特有の繊細で豊かな感性は、優れた技術力や匠の技、創造力や新しい商品を生む開発力、人を喜ばせるもてなしの心などにも生かされ、豊かな日常生活の原動力にもなっています。
 最近は国際化されたグローバル社会で、外国からの観光客を多くみられます。外国の人々から日本の自然景観や精神文化、技術力や商品力の素晴らしさが賞賛され、私たちは改めてその素晴らしさに気が付かされている不思議な現象も起きています。
 私たちは日本人としての感性を再確認し、見えないモノまでも感じる繊細な感性と精神美学、遊び心などを商いや店づくりの中に生かすことが必要な時代に生きているのです。

 顧客の感性や価値観、趣味嗜好は多様で人それぞれ違い、これが正解という回答はありませんが、店舗施設で人を導くための導線は、顧客の鋭い感性に働きかけることが最も大切です。

 感動と共感を与えることによって顧客の満足度を高め、店舗の存在を社会に位置付けることとなります。




■<講師プロフィール>

山本 胖 (やまもと ゆたか)

一級建築事務所としてインテリアデザインから、まちづくり全般(住宅、商業建築、福祉施設等)まで、企画設計から工事監理まで建築総合設計コンサルタント業務を行っている。

実績

・中の棚商店街のコンサルタント及び設計と街路整備
・内装設計した3店舗が「いい店ひろしま」を受賞
・広島工業大学 元非常勤講師 商業施設実習
・広島市中小企業支援センター登録専門家



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