経営者のお役立ち情報「メルマガ誌上セミナー」(95)
事業をつなぐ ~事業承継の話~(第1回)
|
中小企業の経営者が抱える経営課題について、専門家の方にわかりやすく解説していただいています。
なお、このセミナーのバックナンバーは「Webセミナー」で公開しています。
|
「経営者の気づき」
エースコンサルティング代表
中小企業診断士
酒井 健次(さかい けんじ)
|
近年、「事業承継」や「事業引継ぎ」という言葉をよく見聞きします。2つの言葉は、事業をつなぐという点では同じ事であり、ここでは総称して「事業承継」とします。
「事業承継」とは、文字通り、自分が始めた事業や先代から引き継いできた事業を、次の代につないで行くことです。
今回は、経営者ご自身の近未来を少し見てみましょう。
- 1.「事業承継」とは
- 株式会社帝国データバンクによる中小企業経営者に対する中国地方の実態調査(※)では、73.3%の経営者が「事業承継は経営上重要な問題」と認識しているものの、全体の46.6%が「実際に計画していない」「計画はしたが取組んでいない」と回答しています。その結果、中国5県の社長の平均年齢は、10年前より1.3歳上昇し、2017年で59.7歳と高齢化が一層進展しています。
- その理由として、(1)後継者が決まっていない、(2)まだ事業を譲る予定はない、(3)借入に際しての個人保証がある、(4)事業の将来性に不安がある、などがあげられています。
「事業承継」は、資金繰りや売上状況の様に目に見える切迫感がなく、日々忙しい経営者にとって、そのうち考えたらよい、どこに何を相談してよいか分からない、身内や個人の私的な部分に関わることもある、自分で何とかできるだろう、等の理由から先送りとなりがちです。
- 「事業承継」ができなければ、先代からの事業や自分が始めた愛着のある事業を終わらせてしまい、社会や取引先、お客様にとって必要な事業、一緒にやってきた従業員や仲間、その家族、自社の技術、様々なノウハウなど多くの財産をなくしてしまうことになります。
※株式会社帝国データバンク 2017年11月「中国地方 事業承継に関する企業の意識調査」及び2018年2月「中国地方社長年齢分析(2017年)」より抜粋
-
- 2.事業承継に気づく
- 「事業の将来をどうするか」に気づくことによって、「事業承継」が始まります。そして、誰にあとを任せるか、事業をつなぐための手順、計画を考えていくことになります。
経営者が65歳だったとしましょう。今の自分の体力、気力、事業意欲から考えて、10年後の75歳まで頑張ろう。これが経営者の「事業承継基本方針」です。基本方針が決まれば、誰にあとを任せるか、どのようにつないでいくかは、これから具体化していけばいいわけです。引継ぎまでの10年間はとにかく事業を大きくし、経営の体質を強固なものにすることによって「継ぎたい会社・継ぎたい事業」にすることに専念していくことになります。「事業承継はいつか必ず訪れます」今、ちょっと方針を考えてみて、承継の時まで一生懸命経営に没頭していけば良いのです。
「事業承継」は、経営者や企業のおかれた状況・条件によって、その対応策には様々なものになります。長期間かかることも多くあります。ほとんどの経営者が、生涯に一度だけ経験することになるのですが、「事業を拡大するとともに、その事業を次代に円滑につなぐことができてこそ、経営者としての100%の仕事をした」といえます。
この誌上セミナーをきっかけに、「事業承継」に気づいていただき、少し事業承継について考えてみてください。
今から考えよう!「貴方の事業を継続していくために」
■<講師プロフィール>
エースコンサルティング代表
中小企業診断士
酒井 健次(さかい けんじ)
大手電機メーカー勤務を経て、1999年に中小企業診断士登録。のち独立してエースコンサルティング(広島市)を開業、現在に至る。
広島市中小企業支援センターの登録専門家及び窓口相談員をはじめ、(独)中小企業基盤整備機構中国本部 事業承継コーディネーターの他、山口県・広島県・島根県の中小企業支援機関等多くのアドバイザーを務めている。
マーケティング戦略・財務戦略支援の他、新事業展開・経営革新・事業承継等の第二創業支援を得意分野として、実践的な支援を行なう。