哲学と聞いて、「人生とは何ぞや?」といった問いを考えたり、著名な哲学者の説を研究したりする「儲からない」「役に立たない」学問というイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。しかし、近年、ビジネスの世界で哲学的思考が注目されています。
本書では、21世紀の哲学者が何を考えているのかについて、6つのテーマで紹介されています。「IT革命は、私たちに何をもたらすか?」「私たちを取り巻く環境は、どうなっているか?」などのテーマは、今私たちが社会で直面している出来事そのものです。
「第3章第2節 クローン人間は私たちと同等の権利をもつだろうか」では、クローン人間の禁止に疑問を呈する科学者、生命倫理学者と、人間に対する遺伝子操作などを規制すべきとする哲学者の主張が紹介されています。この中でどちらかの主張が支持されているわけではありません。著者は「賛成するにしろ反対するにしろ、私たちに到来している現実はしっかりと見ておく必要」があると述べています。 他の章でも、資本主義が生む格差や宗教対立などの問題に対して異なる見方が提示されており、自分で考える機会を与えてくれます。
従来の常識が通用しなくっている今日にこそ、物事の根本に戻って考える哲学的思考が重要になるのでしょう。テーマごとにブックガイドも付いているので、この本をきっかけにいろいろな哲学者の思考に触れることで、新たな視点が得られるかもしれません。
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