今となっては誰もが知っている熊本県のキャラクター「くまモン」、現在の役職は県の「営業部長」です。「ゆるキャラグランプリ2011」で1位を獲得してからというもの、その活躍はここで説明するまでもありません。 本書には、副題に「地方公務員集団が起こしたサプライズ」とあるように、いかにしてくまモンが人気者になり、293億円を超える関連商品を売上げ、莫大なPR効果を生み出したかが多少の脚色を加えながらわかりやすく書いてあります。 県庁の複数の課から集められた職員でチームを結成し、まずは平成23年春の九州新幹線全線開業に向けて動き始めたのですが、ここには乗り越えねばならない問題がありました。それは、大阪~鹿児島間を走る九州新幹線にとって熊本は「通過駅」でしかなかったことでした。それをいかにして「下車駅」とし観光客を呼び込むかが当初の目的となりました。 チームにアドバイスをしていたのが、熊本県出身の放送作家 小山薫堂(こやま くんどう)さん。PRプロジェクトのキャッチコピーとロゴの作成を友人に依頼したところキャラクターの提案もあり、それが職員内で評判となってすぐにくまモンに決定されました。 偶然に誕生したくまモンですが、ここから彼(?)を売り込む数々の作戦が繰り広げられました。ターゲットは関西で、くまモンの名刺1万枚配布の目標を掲げ、甲子園や大阪でのキャンペーンを実施、挙句の果てには蒲島熊本県知事とよしもと新喜劇出演までやってのけ、とうとうグランプリ1位を獲得してしまいます。 さて、なぜここまで成功したのか。そこにはどうやら知事の理解とノリもありそうですが、くまモン誕生以降、職員の意識が変化したのが大きいと思われます。自分たちがおもしろい、やりたいと思ったアイデアを潰さずに企画として実現していくなかでたびたび発せられたのが「(やったら)いいんじゃない」という言葉です。知事の言葉を借りれば「迷ったらGO!」ということになります。もちろんリスクもあったはずですが、くまモン本人の営業ぶりもあって、今ではコラボ商品の企画などで企業からもひっぱりだこです。 さて、くまモンにはまだまだ先を見据えた戦略があるようでこれからの彼を楽しみにしつつ、時には「いいんじゃない」を口に出して仲間の背中を押し、自分も一歩を踏み出すのも悪くなさそうです。 最後に、『小山薫堂幸せの仕事術 つまらない日常を特別な記念日に変える発想法』(NHK出版 2012年8月30日発行)も合わせておすすめします。
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