この本を書店の棚から見つけた時の第一印象は、そんなに無理して飲みに行かないといけないのか、どうせ上司の説教や愚痴を聞かされるのが関の山と、少しマイナスなものでした。しかし、帯には「明大一受けたい授業"モテる言語学"の裏講義」とあり、パラパラとめくってみると、飲みの席はあくまで人と関わる機会の一つの例として挙げられているだけで、副題にもある「人づき合いが苦手な人のための「コミュ力」の身につけ方」がわかりやすく書かれていました。
著者である堀田秀吾は、司法コミュニケーションの社会科学的分析が専門の明治大学教授で、「はじめに」に「言語学、心理学、脳科学の知見を利用して、コミュニケーションの在り方を研究している学者」とあります。この本には「関わり」というテーマで「人との関わり」「モノゴトとの関わり」「自分との関わり」を、「セルフ・ハンディキャッピング」(自分に「ハンデ」を用意しておく)や「ウィンザー効果」(客観的な意見により説得力が増す)などの学問的な視点を入れながらわかりやすく紹介されており、「なるほど、そういうことだったのか!」がたくさん潜んでいます。
さて、コミュニケーションには自分と相手が必要です。どちらかが一方的であるとそれはコミュニケーションとは言えないでしょう。そして、相手があるからこそ難しい部分や上手くいかない部分もあります。また、相手はともかく、本当の自分はこうじゃない、なかなか思うように自分が出せないと苦手意識を持つ人もいます。
彼は、「本当の自分」というのはいろいろひっくるめて「自分」であり、誰と接するかによって生まれてくるものと書いています。また、相手との関わりだけではなく、状況と場面との関わりも加わって自分の性格を変えているとも言っています。いろいろな状況や場面でのいろいろな自分があり、どうやらそれを使い分け、演じ分けることで相手とコミュニケーションをしているということで、このコミュニケーション力は、人と関わる機会を多く持ち、練習を重ねていくことで身につけることができ、その代表的な機会でうってつけの場所が飲みの席というわけなのです。
彼の座右の銘は、この本のタイトルにもなっている「飲みの席には這ってでも行け!」だそうです。「あとでやろうはバカ野郎」も彼の好きな言葉です。まずは一つ、やってみてはいかがでしょう。人と関わりを持つことがどんどん面白くなり、何かが大きく変わるかもしれません。 |
|