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(11)弁護士が解説する中小企業のコンプライアンス(後編)

 

中井 克洋さん
中井 克洋さん
「弁護士が解説する
  中小企業のコンプライアンス(後編)」


    


 弁護士法人広島メープル法律事務所 
  社員弁護士 中井克洋(なかい かつひろ)

  

 今回は、中小企業のコンプライアンスの実現方法を考えてみます。
1 目的
 方法を考えるにあたって、目的から整理しましょう。前回お話したように、コンプライアンスの目的は信用維持ですが、信用維持の目的は、会社が存立し続けることです。そして会社の存立継続の目的は、営利を実現することによって株主、経営者、従業員、顧客、取引相手など関連する人たちに利益を配分し続けることです。

2 手段
 そうすると、当然のことですが、会社の存立を危うくするほどのコストをかけてコンプライアンスの実現のためのシステムを整備することは会社の存立目的に反します。コスト的にできる範囲ですればよいし、会社法も金融商品取引法も無理なことまで要求しているわけではありません。
 前回の内部統制の定義では、実現手段を
①統制環境、②リスクの評価と対応、③統制活動、④情報と伝達、⑤モニタリング(監視活動)及び⑥IT(情報技術)への対応
の6つに分け、このプロセスが業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されることが必要だとされています。

 用語がわかりにくいので、私なりの理解を私なりの言い方で説明します。

① 統制環境
 筆者経歴にあるように私は民事介入暴力事案を取り扱うことが多いです。その関係でよく使われる言葉でいうと、これは「仁義を守り、筋を通す」企業風土を作る、ということでしょうか。法令に限らず、守るべき仁義は守る、通すべき筋は通す、ということは信用維持のために最も重要ですよね。

② リスクの評価と対応
 成功体験にとらわれず、外部的にも内部的にも不安要因がないか絶えずアンテナを張り、それがあった場合には目をそむけずに腹をすえて迅速に対処する、ということでしょうか。一番怖いのは、過去の成功体験がいつまでも通用するんだと傲慢になること、それと裏腹ですが問題点から目をそむけることですね。

③ 統制活動
④ 情報と伝達
 この2つは要するに風通しのよさでしょうか。報告、相談、連絡が横にも縦にもスムーズに通り、その結果、経営者が仁義を守って、筋を通す判断をすればそれがすぐに会社の末端まで伝わる、という体制を整える、ということですね。

⑤ モニタリング(監視活動)
 どうしても狭い集団の中でだけ活動していると、独自の価値観や改善への諦めが生じてしまいます。常に安心して相談できる外部の人、あるいは内部の別の部署の人たちに意見を聞いて、自分たちの価値観が社会常識にあったものか、問題に対して改善の努力を怠っていないかを確認できるようにすることが必要です。

⑥ IT(情報技術)への対応
 私自身も十分これに対応できているか自信がありませんが、記録や整理だけでなく、秘密漏洩やウイルス対策などの危険もあるので、現在ではこの面も重視すべきでしょう。

3 中小企業の現状
 どうでしょうか。実はこの程度のことなら、うちはできているよ、という経営者の方は多いのではないでしょうか。そうです。それでいいのです。個別の具体的方法はいろいろありますが、それぞれの会社にあったやり方でよいと思います。
 ただ、どんな組織でも人間の集まりですから、いつの間にか、甘えとサビがでてきます。そこがコンプライアンスの実現の難しいところです。
 それを経営者と従業員の不断の努力と信頼関係によって、問題が起きないように一体となって防火に努め、また問題が生じてもすぐに小さい火のうちに一体となって消火できる体制を整えること、それがコンプライアンスだと思って下さい。その大要は、経営者も従業員も「仁義を守り、筋を通す」ということです。



■筆者紹介
 弁護士法人広島メープル法律事務所 社員弁護士 中井克洋

  昭和37年広島県生まれ。修道高等学校卒、東京大学法学部卒。生命保険会社勤務を経て、司法試験合格、平成6年に広島弁護士会登録。2年間の勤務弁護士を経て独立する。平成20年に個人共同事務所を弁護士法人に改組、現在に至る。
 民事介入暴力問題・企業対象暴力問題に精通した専門家であり、上場企業など、数多くの企業、団体、自治体の法務顧問を務める。
 広島弁護士会民事介入暴力問題対策委員会委員長、日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会副委員長などの要職を歴任。平成21年4月より平成21年度広島弁護士会副会長。

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