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(17)中小企業に求められる労務管理とは(第2回)

松田 里絵さん
「中小企業に求められる労務管理とは」(第2回)」
満足できる労働環境づくりのためにやっておくこと。できること。



松田 さとえ(まつだ さとえ)

松田社会保険労務士・中小企業診断士事務所代表
中小企業支援センター登録専門家


 (1) 増え続ける個別労働相談
 従業員の権利意識が高まる中、労使ともに満足できる労働環境について改めて考える時がきています。
 そもそも、従業員(労働者)と企業(使用者)は対等であるというのが、労働基準法第2条にうたわれています。また、平成20年3月に施行された労働契約法の第3条1項には「労使対等の原則」が定められています。


 上記は、広島労働局の平成14年度から21年度の個別労働相談件数の推移です。
労働条件が、ここ数年で劇的に悪化したために相談者が増加したのでしょうか?インターネットの普及などによって、誰でも簡単に「専門知識」に触れることができるようになりました。企業に対して労働者の権利を主張するためのノウハウ本もあふれています。
潜在的な労働者の不満を、表面化することが簡単になってきたことが、急増の一因なのです。


(2) 具体的相談内容



 「解雇」「退職勧奨」「雇止め」「自己都合退職」つまり、退職に関わる事由が41%です。つぎに「労働条件引き下げ」および「その他労働条件」が28%となっています。

 労使紛争の結末は金銭的な解決となるケースも少なくありません。金銭的なダメージと、気まずさと、やりきれない思いが残るのです。労働者に辞めてもらうことはかなりのリスクを伴うことを、経営者の方はしっかりとご理解下さい。


(3) 対策と考え方 入口のマネジメント

 経営者は労働者を雇い入れる際、自社にとって有用な人材かどうかをより一層精査することが、まず第一のリスクマネジメントです。「人」よりも、その人の「資格」や「経歴」だけに意識が集中して雇い入れたら、とんでもないトラブルメーカーだったというケースは多々あります。「困った人が入社してきて・・・・」という連絡をクライアントさんから頂きますが、「入社してきて・・・・」ではなく、社長、あなたが「入社させた」のです。
 「どうしても●●という資格保持者が必要だった」これもよく聞くお話です。ですが、経営者には、他の従業員が安心して業務に専念できる環境をつくるという「責任」と「義務」もあります。チームの和を乱す人材を入社させることで、●●という資格によってもたらされる利益の何倍もの損失が発生するリスクがあるのです。
 正社員として雇い入れたのは、実は独善的で弱い者いじめをする人だった・・・ということが発覚したのは、設立時からずっと支えてくれていたパートさんがいたたまれずに退職に追い込まれた時だったという残念なケースもありました。

(4) 対策と考え方 制度の整備

 労使関係は「敵対」ではなく、「協働」が望ましいと考えています。原点に戻り、対等であることを確認することも重要です。
 例えば、雇入れ時には「労働条件通知書」という書面の交付が義務付けられています。知っているけどやってない・・・は、通用しません。有給休暇があることを労働条件通知書に記載するのが困るというお話もよく耳にします。ここで、質問です。あなたの会社の従業員は、有給休暇があると知ったとたん、自分の都合だけで勝手に権利を主張して有給休暇を取得するような人たちばかりなのでしょうか?だとすると、そんな人材を育てた組織にはもっと根深いリスクが潜んでいるかもしれません。

 労働条件通知書、就業規則といったルールブックは、お互いがフェア(対等)であるためのツールです。どちらか一方が、ルートから外れそうな時に軌道修正するための地図
のようなものです。地図も渡さず、ただ歩けと言われても不安です。目的地(経営理念)を示して、地図(プロセスやルール)を渡せばお互い安心ですよね。


■筆者紹介

 松田社会保険労務士・中小企業診断士事務所 代表 
平成11年社会保険労務士として独立。平成16年中小企業診断士登録。平成19年県立広島大学大学院にて経営情報学修士(MBA)取得。中小規模事業所の「人財共育」をモットーとしている。組織と共に人が育つ人材育成・モチベーションアップのためのコミュニケーションススキル向上、組織づくりに、企業と共に取り組んでいる。平成16年から広島市中小企業支援センター登録専門家、女性起業家サポーターとして活躍している。

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