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(26)ICTの最新動向と活用について(第1回)

ICTの最新動向と活用について(第1回)
-いまさら聞けないクラウド・コンピューティングのことについて-

藤川 英士さん
藤川 英士さん

藤川 英士(ふじかわ えいじ)

社団法人広島県情報産業協会
 HiBiS(広島インターネットビジネスソサエティ) 運営委員長
(ノイアンドコンピューティング(株) 代表取締役)


 「クラウド・コンピューティング」は、数年前からビジネス関連の記事などで頻繁にとりあげられており、受講者の方も耳にしたことがあると思いますが、今一つ理解できない、実感がわかない、という声を多く聞きます。そこで、本セミナーではクラウド・コンピューティングとは何なのか、私たちのビジネスにどうかかわってくるのか、を中心にお話したいと思います。

 「クラウド・コンピューティング」という言葉をはじめて使ったのは、2006年、当時GoogleのCEOだったエリック・シュミット氏といわれています。氏はスピーチの中で、「クラウド=雲」のような存在で、どこにあるかを気にすることのないコンピュータという意味で用いました。反響はきわめて大きく、その後から現在まで、多くのIT会社が「クラウド」という言葉を使って自らの商品やサービスを宣伝していますが、一般的には、以下のようなIT利用環境と言われています。
 ・ 設備投資が不要である。
 ・ 利用したい時に利用でき、利用した分だけ課金される。
 ・ 利用量に応じて柔軟に拡大/縮小ができる。
ちょうど電気や水道等の公共料金のように、使った分だけ料金を支払うという考え方です。企業は設備投資を抑えてITツールを導入でき、本来業務に集中することができます。


情報システムは、電力と同じように、所有から利用へ


 実は、クラウド・コンピューティングの概念そのものは、昔からあります。「ユーティリティ・コンピューティング」と呼ばれていた概念がそれで、英語のユーティリティは、公共設備のことです。電気や水道のごとく、公共料金のように使った分だけ料金を支払う。余談ですが、私たちが日常利用している「電力」も、今でこそ、電力会社から送電線で送られ、毎月電気料金として課金されますが、一世紀前は、企業は自前の発電機をもって工場を稼動させていました。一世紀を経て、電力の次に情報システムが、「ユーティリティ」になっているのです。

 このように、長年その有効性が叫ばれてきましたが、近年のコンピュータ性能の飛躍的な向上、ブロードバンド回線の普及、企業でのコンピュータを利用した業務の一般化によって、ようやく実現可能な環境が整ってきました。ですから、クラウド・コンピューティングという言葉は一時的なブームになるかも知れませんが、IT設備を持たず、使いたいときに使え、使った分だけ料金を払う、という流れは今後加速していくと考えられます。

 さて、クラウド・コンピューティングは、企業の状況やニーズに応じて、いろいろな階層で提供され、よく「XaaS」と表記されます(Xは変数でいろいろな値が入る、という意味です)。

 IaaS Iは「インフラストラクチャ」
→ ネットワーク(回線)~ ハードウェアまでを提供
 PaaS Pは「プラットフォーム」
→ OSや開発環境までを提供
 SaaS Sは「ソフトウェア」
→ アプリケーション・ソフトウェアまでを提供


例えば、メールサービス。世界最大のユーザ数を誇るGoogleのGMAILは、まさしくSaaSであり、私たちはクラウド・サービスを知らない間に使っていることがわかります。

情報システムの階層構造とXaaSの関係


 それでは、IT資産がクラウド化されるという時代の到来に備え、私たちはどのような準備をすべきでしょうか。この答えは非常にシンプルです。みなさんは、これまで業務効率化のためにさまざまなITツールを検討し、自社の条件にあったものを導入されてきたと思います。そのために、常に業務効率化を念頭においてアンテナを張り巡らし、最適なツールを探してこられたと思いますが、この姿勢をひきつづき継続することです。しかし、ここで注意しなければならないのは、これまでのハードウェアやパッケージソフトと異なり、IT資産を所有せず、第三者に情報資産の運用を委ねることによるリスクやデメリットを認識することが重要です。

主なリスクとしては、
・ サービス提供者に預けたデータについて、セキュリティの保証がない。
・ サービスが安定して、継続的に提供される保証がない。
・ 基本的に複数の企業が共同利用するサービスなので、自社にあわせたカスタマイズが困難な場合がある。
・ 従量制課金なので、利用量によっては自社で設備を持つ方よりコストがかかる場合がある。

などがあげられます。最近では、SLAやISO20000など、クラウド・サービスの品質を規定する枠組みもあり、これらを参考にしながら、自社にあったサービスを賢く選択する能力が必要になってきます。ITベンダーの中には、自社運営のシステムを、クラウド・サービスに移行するサポート業務を行っているところもありますので、相談してみるのも一つの手でしょう。


■<講師プロフィール>
 藤川 英士(ふじかわ えいじ)
 広島市出身。1995年、早稲田大学大学院情報工学修了後、NTT(株)に入社。ヒューマンインタフェース研究所にて検索サービスのユーザインタフェースの研究に従事。
 2000年、ノイアンドコンピューティング(株)を設立。様々なウェブ/モバイル向けサービスの開発・運用を行う。
 2006年より(社)広島県情報産業協会常務理事。2009年よりHiBiS(広島インターネットビジネスソサエティ)運営委員長。安田大学非常勤講師。
 

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