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広島市中小企業支援センター

ひろしまの企業支援情報

公益財団法人広島市産業振興センター

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  1. 広島市中小企業支援センター


中小製造業のものづくりの復活に向けて(第3回)

課題解決に向けた取り組み提案と事例


 中小企業の経営者が抱える経営課題について、
専門家の方にわかりやすく解説していただいています。
 なお、このセミナーの内容は、当財団のホームページに「Webセミナー」として公開していますので、いつでも見ることができます。

岸本 実さん
岸本 実さん
 
 -課題解決に向けた取り組み提案と事例-


 岸本 実(きしもと みのる)

  経営革新研究所サンエス 代表
  中小企業診断協会広島県支部理事



1.経営環境変化が中小製造業に及ぼす4つの影響
 昨今の経営環境の変化による中小製造業への影響は、次の4つに集約できる(図-1)。
 マイナス要因として、円高などの国際競争力の低下による、①生産の量的減少(既存部品の生産量の減少など)、②生産の質的減少(既存部品の原価低減など)
 一方、プラス要因として、環境対応車などの技術革新による、③生産の量的増大(新規部品の生産量の増大)、④生産の質的増大(技術の高度化など)である。

図-1  中小自動車部品メーカーの現状と課題
図-1  中小自動車部品メーカーの現状と課題

2.中小製造業の戦略課題と取組み
 中小の自動車部品メーカーの採るべき戦略は、上記の①,②に対応しながら、③,④の比重を高めることである。それぞれの対応について、地域の企業の対応事例を踏まえて説明をする。

(1)既存部品の生産の量的減少への対応
 国内生産の減少に対して、力のある部品メーカーは内製化の拡大、系列外取引や海外進出に取組み、量の確保に努めている。しかし、立場の弱い、特にティアー2,3(旧称:2次、3次メーカー)の多くは有効な手段を見いだせず、苦境に立たされている。その中で、

①残存者利益(落ち穂拾い)戦略:A社は、自動車用エンジンの特殊部品を作っているが、その部品がエンジンの高回転化に伴い不要となった。大手部品メーカーが生産を撤退する中、産業機械用エンジンの需要が残り、国内外から受注することで従来に匹敵する売り上げを確保している。それには、受注減少に耐える余力、外部への発信、多品種少量生産のプロセス改善の取組み等も寄与した。

②独自商品の開発戦略:B社は、大手部品メーカーからの受注部品が全て中国に移管され、売り上げの80%の仕事を失い人員の大幅な削減をした。以前から、自社特許製品を開発しており、その生産販売で生き残ることができた。現在、派生商品の開発・販売に取組んでいる。

(2)同 質的減少(原価低減要請)への対応
 円高に伴う価格の国際競争力の低下で、国内生産を維持するには、完成車で20~30%の原価低減が必要とされている。しかし、度重なる要請で、部品メーカーの原価低減の余力は限界にきており、自動車メーカーの取組も欠かせない。
 C社を含む部品メーカー各社は、現場改善や地元の自動車メーカーが行うテアダウン(国内外の他社製品を分解して技術調査や改善ヒントの抽出などをする活動、リバ―ズエンジニアリングの手段として一般的)に参加するなど、更なる原価低減の方策を検討している。
 自動車メーカー各社は、コモンアーキテクチャー(マツダ)、コモン・モジュール・ファミリー(日産)、車種を超えた部品の共通化(VW、トヨタ)、などの設計や部品の標準化・共通化を進めている。それによる原価低減効果は△20%以上とも言われている。

(3)新規部品の生産の量的増大・(4)同 質的増大(技術の高度化)への対応
 自動車メーカー各社は、新エンジン車・HEV/PHEV(ハイブリッド車)・EV(電気自動車)などの環境対応車を開発し、市場に導入しつつある。それに伴って、減少する部品(EVではエンジンなど)、増加する部品(全ての環境対応車の電気・電子部品)がある。減少する部品産業への対応や、増加する電気・電子部品産業の育成が地域の課題でもある。
 D社を含む複数の部品メーカーは、(財)ひろしま産業振興機構カーエレクトロニクス推進センターの環境対応車に関する研究会や同センターが事務局を務めるベンチマーキングセンター利活用協議会が実施するテアダウン活動などに参加し、自社が取組むための新商品・部品を調査・研究している。
 規模を問わず、熱意と志のある企業は、支援機関の活動を積極的に活用して頂きたい。

3.足腰の強いアクティブな企業に
 現在は、構造的な経営環境の変化、不連続で先行き不透明な経営環境下にあると言われている。むしろ、今まで順調に過ぎ、変化に鈍感になっていたと受け止め、今後は、どのような経営環境に置かれても生き残れる、「足腰の強いアクティブな企業」を目指すべきである。
 それをアルペンスキーで言えば、「夏場に足腰を鍛え」、本番では、「しっかりと板を地につけ」、「腰を低くし」、「前を見据え」、「時にはジャンプもしながら」、難関を乗り越えてゆく、そのような企業である。

・「夏場に足腰を鍛える」:普段から経営資源(人・モノ・金・情報)の蓄積や経営基盤の強化を図る。
・「地に足」:経営理念や方針の明確化、自社の内外環境を見据えた施策と実行、浮利を追わない。
・「腰を低くする」:新商品・新技術の開発、経営の多角化、変化への伸び代を持つ・80%経営。
・「前を見据える」:必死で業界の研究や勉強をする、情報を集める、見えない先を見る。
・「時にはジャンプもする」:必要なリスクには、果敢に挑戦をする。

終わりに
 米国では、ドル安・国内人件費の低下・中国の人件費高騰の予測などから製造の国内回帰が始まっている。いい環境も続かないが、悪い環境も続かない。
二宮尊徳の「この秋は 雨か嵐か 知らねども今日のつとめの 田草とるなり」は、「どのような環境変化が来ようとも、目標を明確にして、今出来ることに集中する」強い意志を示している。
日本の経常収支の改善のためにも、製造業が元気になってほしい。 
東北と共に、日本の、広島の製造業の復活の力になりたいと考えています!!


■<講師プロフィール>
 岸本 実(きしもと みのる)
 昭和23年鳥取県生まれ。地元の自動車会社(商品開発担当)、外資系部品会社(品質育成担当)を経て、平成19年、経営コンサルタントとしての活動を開始する。
 以後、中小企業基盤整備機構の登録専門家、広島県商工会連合会の嘱託専門指導員、中国経済産業局支援機関サポートアドバイザーなどを担当。その間、中小製造業を中心に経営革新計画、新商品開発と販路開拓、事業承継計画、産学官連携などの支援を実施。
 グローバル環境下での日本のものづくりに危機感を持ち、「ものづくり支援」、「次世代自動車の中国地域の自動車関連産業への影響と対応」などの研究に取組んでいる。

 

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