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(42)BCP(事業継続計画)とは(第2回)


BCP(事業継続計画)とは(第2回)

BCPを中小企業経営でどう位置づけ、活用するか

 中小企業の経営者が抱える経営課題について、専門家の方にわかりやすく解説していただいています。
 なお、このセミナーの内容は、当財団のホームページに「Webセミナー」として公開していますので、いつでも見ることができます。

薗田 恭久
薗田 恭久さん

BCPを中小企業経営で
どう位置づけ、活用するか


 薗田 恭久(そのだ やすひさ)
 有限会社薗田経営リスク研究所
 代表取締役・中小企業診断士


■中小企業にこそ必要なBCP

 今回の東日本大震災において中小企業のBCPの有効性は実証されています。たとえば、名取市のリサイクル業を営む中小企業では、海岸近くの工場の設備等が流出・破壊したものの、直前に策定していたBCPが功を奏し、被災後約1週間で一部の業務が再開できたとのことです。同社の社長は、どの設備を復旧させるかなどの手順を決めていたのが大きかったと強調しています。
 同じく社屋の一部を被災した仙台市の建設業者は、一年前に策定したBCPに基づき、導入した従業員の安否を確認するメールの自動発信システムのおかげで、震災の翌日から社員40人の半数を動員して、災害復旧に向けた地域の被害調査に着手できたといいます。
 また、関東地方の電気部品製造業では工場が被災したものの、「顧客流出を防ぐ」というBCP策定の目的に基づき、被災翌日から取引先顧客へ連絡を取り、同社の被災状況を説明することで、理解を得ることに努め、被災12日後には、生産能力80%での操業再開を実現し、顧客流出を防ぐことができたといいます。
 いずれの企業も、BCPを策定していなければ事業の継続に大きな支障をきたしていたことでしょう。大企業に比べ、中小企業は経営基盤が脆弱といわれることが多いと思われます。ひとたび大きな災害が発生した際に、有効な対策を打つことができない場合、ともすれば事業の縮小や廃業に追い込まれるケースも十分考えられます。中小企業こそBCPに取り組むことで、このような事態を避ける対策を進めていくことが重要です。

■BCP策定のメリットと経営への活用

 "災害は忘れたころにやってくる"これはかの寺田寅彦の言葉です。つまり、災害は不意に起こります。急な出来事に気が動転し、冷静に対応策を出すことは非常に困難です。一方で、行うべき初動対応や復旧対応を怠ると、事業の継続に大きな影響を与えかねません。平時においてこそ冷静な状況で緊急時の対応策を考えておくことが重要と思われます。

 BCPを策定するプロセスにおいてあらゆる災害の場面を検討して、"想定外"を極力少なくするということがとても重要な心構えとなり、一つでも多くの対策を講じておくということが有事を乗り越える具体策になってきます。BCPは会社の命を守ってくれる"究極の経営戦略書"となります。
 以上がBCP策定の基本的なメリットとなります。しかしながら、有事の際のメリットだけでなく、平時においてもメリットは享受できます。以下に主なものを挙げます。

 その1は、取引先との取引の継続や新規取引に有効となることです。一昨年の東日本大震災やタイの洪水で、多くの企業がサプライチェーンの仕組みの脆さを学習しました。つまり、メーカー等大手企業は災害等の有事の際は自社だけでなく、部品供給等を担う取引先の供給能力が非常に重要だという認識が高まっているということになります。
 これに対して、まだまだ中小企業ではBCPの取り組みが少ないと思われます。メーカー等大手企業は今後取引先要件としてこのBCPを含む何らかのリスク管理の仕組みを要請してくるものと思われます。中小企業にとってはいち早くBCP策定を行うことで印象を良くすることも、他社との差別化、比較優位という点で営業政策上有効な策となるでしょう。

 その2は、金融機関との関係づくりに有効と考えます。金融機関における企業の審査基準も地域密着型金融(リレバン)の関連もあり随分多様化してきています。つまり、企業の見方も財務内容等の伝統的なものに加え、新たな基準による企業価値の判断を検討しています。その中で、"事業継続性の評価"は重要な評価と考えます。金融機関との更なる関係構築推進の上で、事業継続への具体的な仕組みを整えているリスク管理の行き届いた企業体質のアピールは大いに効果があるものと思われます。

 その3は、社内でのリスクマネジメント文化の定着と従業員の意識改善に有効となることです。企業経営においては様々なリスクが想定されます。このリスクに対応できる仕組みが具体的に整っている中小企業は少ないのではないでしょうか。BCPを作ることで会社全体のリスク管理に対する意識も高まり、リスクに強い企業文化の構築に繋がっていきます。また、BCPを策定することで事業を継続する仕組みを作ることは、従業員の雇用の場を守るということにもなります。従業員の自社に対する意識の改善にも有効と考えます。

 次回は、中小企業が備えるべきBCPのポイントについて説明します。


■<講師プロフィール>

 薗田 恭久(そのだ やすひさ)

 企業勤務を経て同僚と情報通信関連企業を起業し、取締役・常務取締役・代表取締役を歴任、14年にわたる企業経営実務を経験。その後経営コンサルタントに転身。 専門分野は、事業承継支援、知的資産経営支援、BCP(事業継続計画)・BCM(事業継続管理)を含む企業リスクマネジメント支援など。個別企業の経営コンサルティングを実施するとともに、中小企業大学校、金融機関、商工団体、自治体等が実施する研修の講師を務めている。現在、独立行政法人中小企業基盤整備機構九州本部・事業承継コーディネーターおよび経営支援アドバイザーも兼ねる。

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