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広島市中小企業支援センター

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  1. 広島市中小企業支援センター

人の心を導くための導線計画(第3回)


 中小企業の経営者が抱える経営課題について、専門家の方にわかりやすく解説していただいています。
 なお、このセミナーの内容は、当財団のホームページに「Webセミナー」として公開していますので、いつでも見ることができます。

山本 胖さん

これからの時代の店舗づくり




山本 胖 (やまもと ゆたか)

カーサ商業建築研究所 主宰

一級建築士


 店舗は地域の人々の生活を支え、感動や共感を得ながら新たな生活文化を育て、生活の質を高める大切な役割を担っています。最近の生活者は情報と物が満ち溢れ、新たな購買意欲を掻き立てられる新しい価値を見出すことも少なくなってきています。自分の感覚や意思で自由に購買を決める時代となり、今迄のような客集めのための斬新で奇抜で、話題性や人を集める一過性の手法は過去のものとなりました。

 これからの店舗は、企業力を生かしたコンセプトやイメージを明確化させ、購買者の心や感性に訴えるブランド志向的な創造的価値を提供せねばならなくなってきています。
 店舗や商業施設の設計者は社会性を眺め、企業家の理念を理解しながら企業と生活者を生かすデザインは如何にあるべきか考慮せねばなりません。


導線を生かした店舗づくりの設計例
 人の心を導く導線には「日本人の感性が生かされた導線や空間」が必要とされます。日本人の美学としての間合いや不統一、余白など、顧客の心で感じて頂く見えないモノにもさりげない配慮が生かされ、空間や景観にも活かせねばなりません。設計例として「鄙の料亭 地御前(ひなのりょうてい じごぜん)」と子どもを導く導線として「子どもの部屋Chica Chico(チカ チコ)」をご紹介します。

・設計例 「鄙の料亭 地御前」

 鄙の料亭は広島から宮島に至る地御前に立地し、瀬戸内海に面した美しい景観の地にあります。店名も今迄の接待料亭と違って素朴で温かみのある新しい料亭の意味として「鄙の料亭」と名づけられました。広島らしさの奥座敷として家族や友人、お客様たちに四季の移ろいや島影の美しさを味わって頂きながら楽しいひと時を大切な人と過ごしてほしい「さりげない心遣いのもてなし」の空間づくりをコンセプトにしています。
 土のたたきと雑木林に囲まれた屋敷と駐車場、外界からの縁切りとして小さな茅葺門をくぐると木漏れ日の中、瀬戸内の海と山野草に迎えられます。ゆっくりと庭の路地を歩くと自然の優しさに抱かれ玄関に導かれます。玄関では物腰の柔らかい和服姿の女性たちに迎えられ、待合室で一呼吸おき、心が整えば利用客の目的にそって六つのゾーニングに分けられた客室に案内されます。曲がりくねった導線の路地を歩くとつぎつぎと景色が変わり、日本庭園から眺める箱庭のような瀬戸内の海に自然と心がときめいてきます。
 席に着くとその風景の心よさと瀬戸の海を活かした料理、広島らしさの景観と料理に堪能して頂けます。六つのゾーニングは利用目的に応じてそれぞれの導線がしつらえられています。石畳や土間の叩き、前室の畳廊下など、ちょっとした小さな空間にも季節の花が生けられ、さりげないもてなしの心が込められています。その先に進めば和風の小部屋や本格的な数寄屋(すきや)の部屋があります。料理店の導線は、利用目的に応じてそれぞれ違った趣や感動を助長する大切な道筋でもあります。何度でも訪れたくなる飽きのこない店づくりのしぐさでもあります。

鄙の料亭 地御前 全体の景観 鄙の料亭 地御前 平面図
全体の景観 鄙の料亭 地御前 平面図


・設計例 「子どもの部屋 Chica Chico」

 いい店ひろしま顕彰事業で平成18年度に受賞した、小さな物販店「子どもの部屋 Chica Chico」を紹介します。近年、情報や早期教育など子ども達を取り巻く環境が著しく変化し、子ども達の成長や発達に合わせて、ゆっくりと豊かに育てることが難しい時代になっています。子どもの豊かな感受性を育て、心や人格を育てる環境づくりのお手伝いをしたいと、はじめられた店舗です。その理念を生かすために導線や店づくりに子育ての思いを随所に取り入れました。

 店内の導線や商品展示は子どもの視線の高さを大切に、子どもの成長や視線で興味や感動を抱く子どもたちに、親子で体験しながら買い物の楽しさやマナーも体験して頂くことを大切な要素として位置付けています。
店舗の入口から道路と違うウッドデッキのステージを設け、店へのアプローチから興味を抱くように、そして正面のイメージ展示スペースには店内の様子を伺うことができるようにしています。自動扉が空くと店内は重厚な松板のフローリング張りです。子ども達も靴を脱いで解放感と素足から感じる板の素材感を身体全体で感じます。0歳児にとってはハイハイの場でもあります。左側にステージを設け、訴えたい商品や新商品の展示の場としています。右側を見渡せば木のおもちゃが年齢や用途によって分類され、低いステージには子ども達の成長や発達の状況に応じて手で触れて遊べる見本品も展示しています。回遊しながら発見する喜びを感じて頂き、奥には子どもが遊べるキッズコーナーや乳幼児の商品、知的玩具のコーナーを設けています。レジや包装カウンターは、顧客の行動を見守る奥の位置に配置し、ゆっくりと商品説明や子育ての相談に応じる相談イスも設けられます。

外装 子どもの部屋 Chica Chico 平面図
子どもの部屋 Chica Chico 外装 子どもの部屋 Chica Chico 平面図


 お客様を導く導線づくりは益々大切な時代となっています。商業施設の美しさや商品陳列、商品量も魅力的で接客技術も優れ、自然と導線に導かれながらここを訪れると新たな感動と共感が生まれ、日常生活を自分らしく豊かに過ごせる新しい価値を見つけることができる店舗づくりが必要です。




■<講師プロフィール>

山本 胖 (やまもと ゆたか)

一級建築事務所としてインテリアデザインから、まちづくり全般(住宅、商業建築、福祉施設等)まで、企画設計から工事監理まで建築総合設計コンサルタント業務を行っている。

実績

・中の棚商店街のコンサルタント及び設計と街路整備
・内装設計した3店舗が「いい店ひろしま」を受賞
・広島工業大学 元非常勤講師 商業施設実習
・広島市中小企業支援センター登録専門家

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