創業に向けて(第5回)
「経営には計画書が不可欠(その2)」
藤井 好宏(ふじい よしひろ)
株式会社藤井事務所 代表取締役
創業計画の策定は、「社会の役に立ち続ける」スタートとして不可欠です。今回は、創業計画書の構成について詳しく説明します。
- 創業計画書の構成
- 1会社概要
- (1)社名、代表者、所在地、資本金、従業員数
- (2)業務内容(商品・サービス特徴、席数、営業時間、休業日)
- (3)創業の動機、経営理念、経営ビジョン
- (4)株主構成、役員構成
- (5)代表者の略歴と保有資格、会社が保有する許認可
※自己アピールの意味では、「上記の(2)、(3)」は最重要項目といえます。
- 2事業コンセプト
- 「何を(提供価値)、誰に(狙う市場、主なターゲット)、どのように(価値提供の方法)」の切り口で明確にします。なかでも「何を(提供価値)」は、提供する商品やサービスを通じてお客様が感じる「喜びや感動の体験」のことであり、それが差別化、独自化を可能にします。
- 3商品サービスの内容
- 商品・サービスの名称、それぞれの単価やセールスポイントなどを一覧表に整理します。
- 4数値計画
- 実現可能性の高い数値計画が、身の丈に合った年輪経営となり持続化の可能性を高めます。
- (1)売上計画
- 「販売先ごと」「部門ごと」「商品ごと」などに細分化した計画に基づき管理することをお勧めします。
資金繰りに影響する取引条件(月末締め翌月20日受取など)も整理しておきます。
【売上計画の算出方法の例】
- □販売業で店舗売りのウエイトが高い業種(コンビニ等)
- [算式](1日1m2又は1坪当りの売上高×売り場面積)×月間営業日数×12か月
- [ 例 ]コンビニエンスストア
(1日1m2当り売上高6千円 × 100m2)×30日×12か月=216,000千円
- □飲食業、理髪店・美容室などのサービス業
- [算式]平均客単価×席数×1日の回転数)×月間営業日数×12か月
- [ 例 ]理髪店
(3,950円×2台×4.5回転)×25日×12か月=10,665千円
- □従業員数が売上に大きく影響する労働集約的業種(自動車販売業、ビル清掃業等)
- [算式](1日1人当りの売上高×従業員数)×月間営業日数×12か月
- [ 例 ]自動車販売業
(100千円×従業員数3人)×25日×12か月=90,000千円
- (2)仕入計画
予定する商品・原材料ごとの積上げを仕入計画とし、資金繰りに影響する取引条件(月末締め翌月20日支払など)も整理しておきます。
- (3)収支計画
創業期を含めた3年程度の収支目標を保守的(固め)に計画します。
- 【収支計画の例】

- (4)資金計画
持続化のためには無理のない計画にします。
- <必要資金>
- 運転資金:仕入代金、その他経費を3か月分程度準備
- 設備資金:経営に不可欠な設備購入費用を準備
- <資金の調達方法>
- 借入は返済と利息支払の負担があるので、自己資金割合を高めましょう。
- 【資金計画の例】

- (5)返済計画
- 確実に返済できる借入にとどめておきたいものです。
- 【返済計画の例】

- (6)アクションプラン(行動計画)
P(計画)、D(行動)、C(検証)、A(軌道修正となる取り組み推進)サイクルで管理するものは「アクションプラン」と言っても言い過ぎではありません。
計画化したい項目は、5W2Hと言われる「市場・商圏(どこで)」、「取り組み項目(何を)」、「目的(何のため)」、「具体的取り組み方法(どのように)」、「期限(いつから、いつまで)」、「担当部署・担当者(誰が)」、「個別目標(いくら、どれくらい)」の7項目です。
>> 創業までに取り組むべきこと(行動)を整理します。
>> 創業後(1年から2年の間)に取り組むべきこと(行動)を整理します。
経営の目的は、「社会の役に立ち続ける」ことです。
そのためには、創業時は創業計画書、その後は毎期経営計画書に基づく運営をしていきましょう。
■<講師プロフィール>
株式会社藤井事務所
代表取締役 藤井 好宏
大学卒業後、損害保険会社勤務を経て、株式会社藤井事務所を設立。
「頑張る人の夢と元気をサポート!」を経営理念に、中小企業診断士として企業の経営サポートを行うとともに、商工会議所主催の創業塾の講師を務める。