創業に向けて(第6回)
「100年企業から学ぶ」
藤井 好宏(ふじい よしひろ)
株式会社藤井事務所 代表取締役
経営の神様と呼ばれた松下幸之助氏は、経営理念について次の様に言われました。
「正しい経営理念をもつと同時に、それにもとづく具体的な方針、方策がその時々にふさわしい日に新たなものでなくてはならない。この『日に新た』ということがあってこそ、正しい経営理念もほんとうに永遠の生命をもって生きてくるのである。」
松下幸之助氏が言われる様に、日本には1000年企業、100年企業と言われる長寿企業が多く存在します。創業時に作成した経営理念や創業計画は、創業した後も事業計画として継続し続けることが重要です。
正しい経営理念と、『日に新た』な方策を継続するために、実践すると良い2つのキーワードについて紹介します。
- 1つ目のキーワードは「年輪経営」
「年輪経営」とは、樹木の年輪の様に、1年毎に会社として確実に成長を続ける経営のことです。ここでは、経営者として最も重要な3つの仕事について説明します。
- (1)ブレない経営姿勢
経営者は、「正しいあり方」に基づいて、「正しい判断をすること」と、「適切な方向性を示すこと」、そして「継続すること」が必要です。
経営者は、常に「幸せ」を基準に正しいかどうかで判断し、「仕事を通じていかに多くの人に幸せの種を蒔けるか」を追求し続ける姿勢を明確にすることです。
誰かを犠牲にしたうえで急成長した企業の場合、隆盛はほんの一瞬だけで、早晩衰退し消滅することになりかねません。
- (2)社員を大切にする経営の推進
- 経営者は、「顧客満足度」を高めるのは「社員」の行いによるサービスの提供だということをあらためて認識し、積極的に社員の満足度を高める経営(社員を大切にする経営)を追求する一環として、職場環境を整備することが必要です。
また、取引先、下請け先、地域など関係する人の全てを大切にすることも必要です。
大切にされた社員は、幸せを感じると自信とモチベーションが高まり、主体性も出てきます。そうすると、自分も周りの人も、とりわけお客様に幸せになってもらいたいと思い、「自分がお客様だったら」の視点で考え行動します。それが、「顧客満足」を高めることになるのです。
- (3)経営力を高め続ける経営の推進
- 常に未来を見据え、景気に左右されない商品やサービスの創造に努め続け、経営力を高め続けることが年輪経営につながるのです。
当然、人財の確保・育成、研究開発等、未来に向けた投資、取り組みは欠かせません。
- 2つ目のキーワードは「不易流行(ふえきりゅうこう)」
ブレない「あり方」にふさわしく、さらに時代や環境にふさわしい「やり方」に変える経営が「不易流行」です。
不易流行の「不易」とは、「時代や環境の変化があっても変えてはならないもの(経営理念=あり方)」のことであり、「流行」とは、「時代や環境の変化に応じて変えていかなければならないもの(経営戦略・戦術=やり方)」のことです。
ここでは、不易流行を実践している2社の理念について紹介します。
- (1)室町時代から続く和菓子屋の場合
- 「いつの時代でもお客様に最高の美味しさを提供したい。」という「あり方」のもと、「味も必要に応じて変えます。」
- (2)海外展開するラーメン店の場合
- 「変わらないために変わり続ける。」という「あり方」のもと、「来てくださるお客様に喜んだり驚いたりして頂きたくて、味もサービスもイメージも、変える時はガラッと変えます。変わらないために変わり続けるということは、常にチャレンジをしていくということなんです。」
- 最後に、「仕事を通じて、いかに多くの人に幸せの種を蒔けるか。」を追求しましょう。そして「会社に関わる全ての人々の永遠の幸福の実現。」をしていきましょう。そのために「変化」を積極的に楽しみましょう。
結果として、社会の役に立ち、社会に認められ、いつの間にか10年、30年、50年、そして100年続いていくのです。
■<講師プロフィール>
株式会社藤井事務所
代表取締役 藤井 好宏
大学卒業後、損害保険会社勤務を経て、株式会社藤井事務所を設立。
「頑張る人の夢と元気をサポート!」を経営理念に、中小企業診断士として企業の経営サポートを行うとともに、商工会議所主催の創業塾の講師を務める。