「蛇口をひねっても水が出ない――。」水道普及率98%を超えていると言われる日本で、近い将来そのような事態に陥ると聞いてもすぐには信じられないかもしれません。 日本の水道は、すでに耐用年数を超えている水道管が多く存在するにも関わらず、更新が老朽化に追いついておらず、今、崩壊の危機にあると著者の加藤崇氏は指摘します。 全国に張り巡らされている水道管の更新を、優先順位を誤らずに効率的に進めていくにはどうすればよいか。著者はこの問題を解決するために、AIを使って、水道管の素材だけでなく、形状や埋まっている土壌、その地域の天候などの情報を基に老朽化による破損時期を予測することで、交換すべき水道管を見極めるソフトウェアを開発し、アメリカで水道ビジネスに参入します。そして、「水道の救世主」となるべく日本やイギリスなど世界に事業を拡げていきます。 ロボット技術系のベンチャーを起業し、米グーグルに売却をした実績を持つ著者は、「新しいテクノロジーは、古い産業で活用されてこそその真価を発揮する」と述べます。私たちの身の回りに当たり前のようにあるものに関心を寄せることが、新たなビジネスチャンスにつながっていくことを感じさせる1冊です。
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