「ミドリムシで世界を救うって?」と、まずみなさんは思われることでしょう。
この本の著者出雲氏は、東京大学に入学した1998年にバングラデシュで、貧困の実態を目の当たりにして衝撃をうけ、高校時代からの夢であった食糧・栄養問題を解決できる「何か」を探して、このミドリムシにたどり着きます。
本書によるとこのミドリムシとは、「植物と動物の両方の性質を持つ生物で、両方の栄養素を作ることができる。その数はなんと59種類にも及ぶ。ミドリムシを大量生産し食糧資源化できれば、将来、日本に食糧危機があったとしても輸入食料に頼らずに必須栄養素を賄うことができる。」と説明しています。そこでミドリムシをビジネス化しようとしますが、大量培養ができず何度も試行し研究を続けながらも、様々な困難にぶつかっていきます。そしてついにミドリムシを栄養素だけにとどまらず、CO2を効率よく吸収することから地球温暖化の防止や、バイオ燃料を作りだせることからジェット機のエンジンに活用しようとし、エネルギー問題へも進化していくのです。
この著書の注目すべき点は、出雲氏の経歴と発想力と行動力です。出雲氏が東大にはいって、カッコイイ先輩のマネをしようと考え、大学で面白そうな人や目立った人のマネをして修行しようと考えます。そこで出会ったのが、学生ビジネスコンテストであり、その中でもスタンフォード大学との関わりからアメリカ西海岸の学生の多くが目指す「起業」精神の影響を受けています。
そしてまた高城幸司氏(現セレブレイン代表取締役)から、なぜ日本は起業する若い人が少なく、どうしたら日本で起業家を増やせるかと相談を受けます。それに対する出雲氏のアイデアは、シリコンバレーのベンチャー企業で「シャドウイング」(影のようにマネする)という若手育成のメニューをヒントに提案し、「起業家を目指す100人とベンチャー企業100人を引き合わせてカバン持ちをさせる」というアイデアです。
そういった発想のひとつひとつを実行し積み重ねて、このミドリムシの世界を救うビジネスは成功し、12月20日、株式会社ユーグレナ(和名ミドリムシ)が上場を果たしました。また、出雲氏はダボス会議「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出されます。
この本は起業家だけでなく、企業で働く方々にもぜひおすすめしたい一冊です。
最後に、出雲氏の「自分がこの分野、この領域で勝負すると決めたら、その中で必ず一番を目指すこと」という力強いメッセージを紹介いたします。
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