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技術支援アラカルト

広島市産業振興センターNEWS 第144号(2014.6.16)

広島市産業振興センターNEWS
技術アラカルト
   第9回「技術者倫理とものづくり」

 技術振興部長の國司(くにし)です。4月の消費税率アップから2か月余り。増税は17年ぶりということで、駆け込み需要の反動による景気への影響も懸念されていましたが、今のところ反動減は概ね想定の範囲内ということのようです。ひとまずは持続可能な経済社会の実現に向けて一歩前進できたのではないでしょうか。

さて今回は、新聞紙上でも詳しく報道されているSTAP細胞の論文問題やノバルティスの研究不正問題に関連して、技術者倫理について考えてみたいと思います。

 企業が存続し、持続的に発展していくためにコンプライアンスやCSR(企業の社会的責任)活動が必須条件となっています。従来、これらは企業イメージの向上などに主眼が置かれていましたが、倫理欠如による企業の失敗事例を挙げれば枚挙にいとまがなく、リスクマネジメントの一環としての意義が強くなってきているように思います。そういう意味でも今回取り上げた技術者倫理の必要性を善悪で判断するよりは、損得(損失と便益)で判断する方が、一見次元が低いようでいて、理にかなったものであるように思えます。ただ、その損得は目先の利益など短期的視点での判断ではなく、社会レベルや企業の持続的発展など客観的、長期的視点で判断すべきものであることは言うまでもありません。

 ものづくり企業においては、技術者は品質、経済性、安全性などトレードオフの関係にある様々な価値のバランスを調整しながら、これらの最適化を図って製品を作り出しています。また、技術者は製品を世に送り出した後に製品にトラブルが起きる可能性を発見した場合、どう対処すべきかを客観的に判断しなければなりません。こういった問題に対する対処において、企業の利益と公衆の利益はトレードオフの関係だと思われがちで、リコール隠しなど企業の目先の利益を優先させた組織ぐるみの不正行為が見受けられる場合があります。しかし、技術者倫理を問われるケースでは企業の利益や損失の最小化と公衆の利益はイコールとなる場合がほとんどであり、技術者倫理は企業のリスクマネジメントにおいて重要な役割を果たしているのです。更に、技術者自身が不祥事などに巻き込まれないためにも、自己防衛としての役割も忘れてはならないところです。

 また、ものづくりにおいて技術者倫理は企業・組織倫理と表裏一体をなすものであり、技術者のみが遵守するものではなく、ものづくり企業の経営者など技術業に携わっている全ての人が理解を深めることによって、その意義が真に発揮されるものと考えます。

 因みに、平成17年に発覚した耐震偽装問題では、その被害額は推計で約140億円にのぼり、二次的に審査の厳格化に伴う住宅着工の落ち込みが生じました。一建築士がデータを改ざんしたことで発生した損失としてはけた違いな金額と影響です。

 図 技術者倫理の概念と役割

図 技術者倫理の概念と役割

 

 東日本大震災以降、大企業のみならずサプライチェーンの一翼を担う中小企業においてもBCP(事業継続計画)の重要性が叫ばれていますが、BCPの策定において、大規模災害ばかりが事業の継続性を危うくするものではなく、コンプライアンス違反による企業価値の低下など身近に潜んだ重大なリスクにも対応しなければならないと考えます。

 例えば、リスクが顕在化する前あるいは顕在化した後での情報公開や説明責任の体制・仕組みを整えておけば、技術者の内部告発による問題発覚など致命的な損失や信用失墜につながる事態に発展することはないでしょうし、低下した信用などの回復も速やかに図られ、事業への影響を最小限にとどめることが可能になるのです。

 インターネットが普及した高度ネットワーク社会であるがゆえに、悪い情報ほどあっという間に広がってしまう恐れがあり、倫理欠如に起因するリスクには万全を期した対応が必要であると考えます。私共も中小企業の皆様を技術的にサポートしていく組織として、常に技術者倫理を念頭に置いて、中小企業の皆様が抱える課題の解決に向け真摯に取り組んでまいりたいと思います。

 以上、技術者倫理について、身の程もわきまえず偉そうなことを述べさせていただきましたが、技術者倫理の意義について、皆様の再考のきかっけになれば幸いです。


■問い合わせ先
  技術振興部(広島市工業技術センター内) 
  TEL 082-242-4170(代表) 
E-mail  kougi@itc.city.hiroshima.jp


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