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広島市産業振興センターNEWS 第166号(2015.6.15)

広島市産業振興センターNEWS
技術支援アラカルト

デザインマネジメント人材育成事業(広島県緊急雇用対策基金事業)開催レポート(第3回)
~デザインを経営資源として戦略的に活用するための人材育成プログラム~


 技術振興部では、中小企業のデザイン開発力の向上を積極的に支援しています。その一環として、去る2月26日に開講しました「デザインマネジメント人材育成事業」について、本事業の企業支援担当コーディネータを務めていただいている中国地方総合研究センターの江種様よりその様子を連載でレポートしていただきます。
 今回は平成27年4月24日に開催した3日目の講座についてのレポートをお届けします。

◆ ものづくりと商品企画

 研修3日目の1コマ目の講義は、一般社団法人ファブデザインアソシエーション(FDA)理事長の竹末俊昭先生による「ものづくりと商品企画」です。竹末先生は、長らく日立製作所のデザイン研究所で住宅設備や空調設備、テレビをはじめとするAVシステムのデザインや商品企画に携わられたのち、拓殖大学でこの3月までデザイン学科教授として教鞭を執られていました。現在は、母校の京都工芸繊維大学などで非常勤講師として教鞭を執りながら、FDAで、レーザー加工機などのデジタル加工機器を活用した文化的価値、知の価値を高めた自己実現型のものづくりに力を注いでいらっしゃいます。竹末先生には、モノからコトやサービス、コンテンツの時代へのシフトが進む中、デザインの観点から商品企画をどのようにマネジメントするべきかについて、講義して頂きました。

 竹末先生がまず主張されたのが、「デザインは『おもてなし』だ!」ということです。流行語大賞を獲得した「お・も・て・な・し」を引き合いに出すまでもなく、日本人が古くから大切にしてきたこの考え方が、デザインにも通じるということです。つまり、ある商品を購入して使って頂く方に、その商品に愛着を覚えてもらい、大切に使ってもらう。そして寿命が尽きて使えなくなった時には、それまで使い続けたことに感謝してもらい、「あの会社のあの商品をもう一度買おう」と思うようなリピーターになって頂く。こうした「おもてなし」の好循環を創り出すのが、デザインだということでした。
確かに、デザインで「おもてなし」ができれば、消費者を継続的に引き付けることができますし、消費者も愛着ある商品に心地よさを感じますので、デザインが良好な関係を取り持つことになりますね。

 その後、講義の重点は「パーソナル・ファブリケーション」に移っていきました。情報通信技術の普及や個人の価値観・働き方の変化によって、技術やノウハウ、デザインのリソースを企業に閉じ込めておくのが難しくなっていることを受けて、ものづくりの環境が企業から個人へシフトし始めています。そこで重要になるのが、個人がひとりでDIY(Do it yourself)するのではなく、DIWO(Do it with others)の精神で必要な時に必要なだけ「クラウド」から知恵を借りましょう、という考え方です。ここでの「クラウド」は、「クラウド・コンピューティング」のCloud(雲)ではなくCrowd(群衆の)で、いわゆる「オープン・イノベーション」(一社単独ではなく、他社や大学など外部と連携してイノベーションを追求する)に近い考え方と理解できます。

 さらに、竹末先生は「編集能力を活かしたマネジメント」を強調されました。変化の著しい現代社会においては、「変化に柔軟に対峙できる軽いフットワーク」「新しいものにアレルギーを持たず貪欲に取り入れていく知力と体力」「柔軟なアイデアを常に頭の中に浮遊させておき、臨機応変に編集して応用問題を解く能力」がそれです。これには私もまったく同感で、お客を絶えず引きつけ、リピーターを増やし続けている人の仕事のやり方は、まさにそのものだと感じています。

ものづくりと商品企画の講義風景
ものづくりと商品企画の講義風景


◆ 知的財産戦略
 研修3日目の2コマ目は、東京理科大学専門職大学院イノベーション研究科の鈴木公明先生による「知的財産戦略」です。鈴木先生は、キヤノンの知的財産法務本部、特許庁、東京理科大学と活躍の場を移される中で、知的財産の理論と実務をともに高いレベルで経験されてきた方です。事実、キヤノンの知財部門は国内でも指折りと評価されていますし、特許庁では申請された特許を審査する側で豊富な経験を積まれ、それを基に現在は大学で教鞭を執られていますので、今回の研修で鈴木先生から知的財産について学べるのは貴重な機会と思います。

 鈴木先生は、まず冒頭でデザインの意義について、近年注目されている「デザイン思考(Design Thinking)」を引用され、顧客の経験がデザインの対象になってきているなど、デザインの持つ概念が拡大していることに触れられたのち、知的財産戦略におけるデザインの位置付けを意匠法に限定することなく、特許法、商標法、著作権法、不正競争防止法などと合わせて、具体的な事例を示しながら多面的に解説してくださいました。

 まず、デザインの保護において最も基本となる意匠法の解説では、意匠法の対象になるのは、物品(部分を含む)の外観に関する形状、模様、色彩のデザインであり、手触りや質感といったものは対象に含まれないことなど、基本的なことに始まり、意匠権は、登録意匠及びこれに類似する意匠を最長で20年間にわたって独占的に実施でき、他人の無断実施を排除できる非常に強力な権利であるなど、意匠法で保護されるデザインや意匠制度について、デザインの類似性の判断基準については、受講生にも見解を聞きながら進行され、わかりやすく説明してくださいました。
 また、受講者から意匠の新規性の喪失について質問が出ましたが、そのポイントは、意匠出願前にホームページなどインターネット上に公開してしまうと同一または類似の意匠は登録を受けることができなくなること、意匠登録を受ける権利を有する者が、出願前に商品をインターネットや雑誌に載せてしまった場合などについては、新規性喪失の救済規定があることでした。ただ、登録に手間取っている間にライバル会社が類似商品を市場に出してしまうリスクもあるわけで、登録にあたっては迅速な経営判断も重要になりますね。

 意匠権以外の講義の中で、私が特に興味を持ったのは、特許権で守られるデザインの事例として、ニュースでも大きく取り上げられた越後製菓がサトウ食品に対して損害賠償を求めた切り餅に関する訴訟です。焼いて膨らんだ時に中身が外に噴き出さないよう、餅の側面に入れた切り込みに関する特許を越後製菓が出願・登録していたことで、上下面に加えて側面にも切り込みを入れた餅を販売したサトウ食品を訴えたものです。これについては、知財高裁が2012年に側面の切り込みが特許権侵害にあたると判断して、サトウ食品に約8億円の支払いを命じる判決を言い渡し、確定しました。その後、サトウ食品は側面の切り込みを無くした商品を販売しています。こうした事例は、消費者の生活に知財が密接に関係していることを喚起しますので、やはりデザインを学ぶにあたって、知財は避けて通れないのだと改めて感じました。

 そして、近年のトピックとしては地域団体商標(広島県では「広島かき」や「広島針」、「広島の酒」などが登録されています。)が地域ブランドの受け皿として注目されています。私のところにも、地元で獲れる産品を使った商品に関するコンサルティングの依頼が来ますが、地域団体商標の取得もブランド価値向上の一環で、地域を挙げて開発した商品を財産にして、そこから関係者全員が継続的に利益を得られる仕組みをつくることはとても望ましいことだと考えています。

知的財産戦略の講義風景
知的財産戦略の講義風景

 

「デザインマネジメント人材育成事業」コーディネータ 江種浩文

■問い合わせ先
 技術振興部(広島市工業技術センター内)

 TEL 082-242-4170(代表)  E-mail:kougi@itc.city.hiroshima.jp

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デザインマネジメント人材育成事業(広島県緊急雇用対策基金事業)開催レポート(第3回)
~デザインを経営資源として戦略的に活用するための人材育成プログラム~


 技術振興部では、中小企業のデザイン開発力の向上を積極的に支援しています。その一環として、去る2月26日に開講しました「デザインマネジメント人材育成事業」について、本事業の企業支援担当コーディネータを務めていただいている中国地方総合研究センターの江種様よりその様子を連載でレポートしていただきます。
 今回は平成27年4月24日に開催した3日目の講座についてのレポートをお届けします。

◆ ものづくりと商品企画

 研修3日目の1コマ目の講義は、一般社団法人ファブデザインアソシエーション(FDA)理事長の竹末俊昭先生による「ものづくりと商品企画」です。竹末先生は、長らく日立製作所のデザイン研究所で住宅設備や空調設備、テレビをはじめとするAVシステムのデザインや商品企画に携わられたのち、拓殖大学でこの3月までデザイン学科教授として教鞭を執られていました。現在は、母校の京都工芸繊維大学などで非常勤講師として教鞭を執りながら、FDAで、レーザー加工機などのデジタル加工機器を活用した文化的価値、知の価値を高めた自己実現型のものづくりに力を注いでいらっしゃいます。竹末先生には、モノからコトやサービス、コンテンツの時代へのシフトが進む中、デザインの観点から商品企画をどのようにマネジメントするべきかについて、講義して頂きました。

 竹末先生がまず主張されたのが、「デザインは『おもてなし』だ!」ということです。流行語大賞を獲得した「お・も・て・な・し」を引き合いに出すまでもなく、日本人が古くから大切にしてきたこの考え方が、デザインにも通じるということです。つまり、ある商品を購入して使って頂く方に、その商品に愛着を覚えてもらい、大切に使ってもらう。そして寿命が尽きて使えなくなった時には、それまで使い続けたことに感謝してもらい、「あの会社のあの商品をもう一度買おう」と思うようなリピーターになって頂く。こうした「おもてなし」の好循環を創り出すのが、デザインだということでした。
確かに、デザインで「おもてなし」ができれば、消費者を継続的に引き付けることができますし、消費者も愛着ある商品に心地よさを感じますので、デザインが良好な関係を取り持つことになりますね。

 その後、講義の重点は「パーソナル・ファブリケーション」に移っていきました。情報通信技術の普及や個人の価値観・働き方の変化によって、技術やノウハウ、デザインのリソースを企業に閉じ込めておくのが難しくなっていることを受けて、ものづくりの環境が企業から個人へシフトし始めています。そこで重要になるのが、個人がひとりでDIY(Do it yourself)するのではなく、DIWO(Do it with others)の精神で必要な時に必要なだけ「クラウド」から知恵を借りましょう、という考え方です。ここでの「クラウド」は、「クラウド・コンピューティング」のCloud(雲)ではなくCrowd(群衆の)で、いわゆる「オープン・イノベーション」(一社単独ではなく、他社や大学など外部と連携してイノベーションを追求する)に近い考え方と理解できます。

 さらに、竹末先生は「編集能力を活かしたマネジメント」を強調されました。変化の著しい現代社会においては、「変化に柔軟に対峙できる軽いフットワーク」「新しいものにアレルギーを持たず貪欲に取り入れていく知力と体力」「柔軟なアイデアを常に頭の中に浮遊させておき、臨機応変に編集して応用問題を解く能力」がそれです。これには私もまったく同感で、お客を絶えず引きつけ、リピーターを増やし続けている人の仕事のやり方は、まさにそのものだと感じています。

ものづくりと商品企画の講義風景
ものづくりと商品企画の講義風景


◆ 知的財産戦略
 研修3日目の2コマ目は、東京理科大学専門職大学院イノベーション研究科の鈴木公明先生による「知的財産戦略」です。鈴木先生は、キヤノンの知的財産法務本部、特許庁、東京理科大学と活躍の場を移される中で、知的財産の理論と実務をともに高いレベルで経験されてきた方です。事実、キヤノンの知財部門は国内でも指折りと評価されていますし、特許庁では申請された特許を審査する側で豊富な経験を積まれ、それを基に現在は大学で教鞭を執られていますので、今回の研修で鈴木先生から知的財産について学べるのは貴重な機会と思います。

 鈴木先生は、まず冒頭でデザインの意義について、近年注目されている「デザイン思考(Design Thinking)」を引用され、顧客の経験がデザインの対象になってきているなど、デザインの持つ概念が拡大していることに触れられたのち、知的財産戦略におけるデザインの位置付けを意匠法に限定することなく、特許法、商標法、著作権法、不正競争防止法などと合わせて、具体的な事例を示しながら多面的に解説してくださいました。

 まず、デザインの保護において最も基本となる意匠法の解説では、意匠法の対象になるのは、物品(部分を含む)の外観に関する形状、模様、色彩のデザインであり、手触りや質感といったものは対象に含まれないことなど、基本的なことに始まり、意匠権は、登録意匠及びこれに類似する意匠を最長で20年間にわたって独占的に実施でき、他人の無断実施を排除できる非常に強力な権利であるなど、意匠法で保護されるデザインや意匠制度について、デザインの類似性の判断基準については、受講生にも見解を聞きながら進行され、わかりやすく説明してくださいました。
 また、受講者から意匠の新規性の喪失について質問が出ましたが、そのポイントは、意匠出願前にホームページなどインターネット上に公開してしまうと同一または類似の意匠は登録を受けることができなくなること、意匠登録を受ける権利を有する者が、出願前に商品をインターネットや雑誌に載せてしまった場合などについては、新規性喪失の救済規定があることでした。ただ、登録に手間取っている間にライバル会社が類似商品を市場に出してしまうリスクもあるわけで、登録にあたっては迅速な経営判断も重要になりますね。

 意匠権以外の講義の中で、私が特に興味を持ったのは、特許権で守られるデザインの事例として、ニュースでも大きく取り上げられた越後製菓がサトウ食品に対して損害賠償を求めた切り餅に関する訴訟です。焼いて膨らんだ時に中身が外に噴き出さないよう、餅の側面に入れた切り込みに関する特許を越後製菓が出願・登録していたことで、上下面に加えて側面にも切り込みを入れた餅を販売したサトウ食品を訴えたものです。これについては、知財高裁が2012年に側面の切り込みが特許権侵害にあたると判断して、サトウ食品に約8億円の支払いを命じる判決を言い渡し、確定しました。その後、サトウ食品は側面の切り込みを無くした商品を販売しています。こうした事例は、消費者の生活に知財が密接に関係していることを喚起しますので、やはりデザインを学ぶにあたって、知財は避けて通れないのだと改めて感じました。

 そして、近年のトピックとしては地域団体商標(広島県では「広島かき」や「広島針」、「広島の酒」などが登録されています。)が地域ブランドの受け皿として注目されています。私のところにも、地元で獲れる産品を使った商品に関するコンサルティングの依頼が来ますが、地域団体商標の取得もブランド価値向上の一環で、地域を挙げて開発した商品を財産にして、そこから関係者全員が継続的に利益を得られる仕組みをつくることはとても望ましいことだと考えています。

知的財産戦略の講義風景
知的財産戦略の講義風景

 

「デザインマネジメント人材育成事業」コーディネータ 江種浩文

■問い合わせ先
 技術振興部(広島市工業技術センター内)

 TEL 082-242-4170(代表)  E-mail:kougi@itc.city.hiroshima.jp

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