広島市産業振興センターNEWS 第172号(2015.9.15)
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技術支援アラカルト デザインマネジメント人材育成事業(広島県緊急雇用対策基金事業)開催レポート(第6回) |
技術振興部では、中小企業のデザイン開発力の向上を積極的に支援しています。その一環として、去る2月26日に開講しました「デザインマネジメント人材育成事業」について、本事業の企業支援担当コーディネータを務めていただいている中国地方総合研究センターの江種様よりその様子を連載でレポートしていただきます。 今回は、3回にわたって実施しましたワークショップの第1回目の内容についてレポートをお届けします。 |
◆第1回ワークショップ 前回までの5日間の研修では、座学でデザインマネジメントの基礎を学びましたが、研修6日目となる本日からは3回にわたってデザインマネジメントを実践するスキルの習得と、それらの有意性を実践的に理解するためのワークショップを行います。 ワークショップの講師をお務め頂くのは、MTDO inc. 代表取締役 アートディレクター/デザイナーの田子 學(たご まなぶ)先生です。田子先生は、国内にとどまらず海外でも活躍されているデザイナーですので、受講者もよくご存じだと思います。大学卒業後、(株)東芝のデザインセンターで家電や情報機器のデザイン開発を経験され、同社を退社したのちに(株)リアル・フリートのデザインマネジメント責任者として従事されました。リアル・フリートが数々の個性的な製品を「amadana(アマダナ)」ブランドとして生み出したことは、記憶に新しいところです。その後、(株)エムテドを立ち上げ、幅広い分野でのコンセプトメイキングからプロダクトアウトまでをトータルでデザインされ、多くの輝かしい実績を挙げられています。 田子先生が、ワークショップの開催にあたって初めに受講者に投げ掛けられた言葉は、「幼稚園児に戻りましょう」でした。「デザインを考えるにあたっては、大人の事情を一切捨てて童心に帰り、素人目線で考えることが極めて重要」だということでした。これは、デザイナーが多角的な視点を持つにあたって、特定の視点に「染まらない」ことが大切だということの裏返しであると理解しました。つまり、受講者のように組織に属してデザインに従事していると、当然ながら「社会人としての視点」「組織人としての視点」を持ちますし、同時に家庭や家族の一員として「家庭人としての視点」「親としての視点」など様々な視点も加わります。デザイナーにとって必要なのは、できるだけ多くの視点を持ち、特定の価値観に染まらないことで新たな価値観を生み出していくことだと感じました。 こうした考え方は、モノがあふれる現代で物事を考えるにあたってどうしても必要になります。田子先生によれば、「世の中には、既に必要なものは揃っている。つまりNeedsは無いということ。ただし、Wantsならある。欲しいか欲しくないかが問題」であると。ここに本質があり、「Wantsを喚起するには、その製品の裏側にストーリーを生み、見えない価値を創り出すこと」であると強調されました。「ストーリーだけでも十分に仕事になる」とコメントされていましたが、確かに作り手の哲学が感じられる製品やサービスは、消費者の共感を通じて高い満足度に結びつきます。 ワークショップ1回目の演習では、「うまい棒」を使った行動観察とアイデア出しを行いました。二人一組になって、一方が「うまい棒」を食べる様子を観察してメモする。なるべく細かく、注意深く観察してメモすることがポイントです。これを交互にやり、後で互いのメモを交換します。すると、そこにはきっと面白いことが書いてあるに違いありません。自分では気づかなかったことでも、相手からすれば気になったことがあるはずです。また、お互いの共通点や相違点も必ず見つかります。これらを踏まえて「うまい棒」の問題点を抽出して、新しい「うまい棒」のアイデアをカタチにしました。 私個人にとっては、どうしても特定の考え方に偏ってしまうことや、頭が固くなっていることを自覚したワークショップでした。2回目も楽しみです。 |
ワークショップの講義風景 うまい棒を題材にしたエスノグラフィの演習風景
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■問い合わせ先 TEL 082-242-4170(代表) E-mail:kougi@itc.city.hiroshima.jp |
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広島市産業振興センターNEWS 第172号(2015.9.15)
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技術支援アラカルト デザインマネジメント人材育成事業(広島県緊急雇用対策基金事業)開催レポート(第6回) |
技術振興部では、中小企業のデザイン開発力の向上を積極的に支援しています。その一環として、去る2月26日に開講しました「デザインマネジメント人材育成事業」について、本事業の企業支援担当コーディネータを務めていただいている中国地方総合研究センターの江種様よりその様子を連載でレポートしていただきます。 今回は、3回にわたって実施しましたワークショップの第1回目の内容についてレポートをお届けします。 |
◆第1回ワークショップ 前回までの5日間の研修では、座学でデザインマネジメントの基礎を学びましたが、研修6日目となる本日からは3回にわたってデザインマネジメントを実践するスキルの習得と、それらの有意性を実践的に理解するためのワークショップを行います。 ワークショップの講師をお務め頂くのは、MTDO inc. 代表取締役 アートディレクター/デザイナーの田子 學(たご まなぶ)先生です。田子先生は、国内にとどまらず海外でも活躍されているデザイナーですので、受講者もよくご存じだと思います。大学卒業後、(株)東芝のデザインセンターで家電や情報機器のデザイン開発を経験され、同社を退社したのちに(株)リアル・フリートのデザインマネジメント責任者として従事されました。リアル・フリートが数々の個性的な製品を「amadana(アマダナ)」ブランドとして生み出したことは、記憶に新しいところです。その後、(株)エムテドを立ち上げ、幅広い分野でのコンセプトメイキングからプロダクトアウトまでをトータルでデザインされ、多くの輝かしい実績を挙げられています。 田子先生が、ワークショップの開催にあたって初めに受講者に投げ掛けられた言葉は、「幼稚園児に戻りましょう」でした。「デザインを考えるにあたっては、大人の事情を一切捨てて童心に帰り、素人目線で考えることが極めて重要」だということでした。これは、デザイナーが多角的な視点を持つにあたって、特定の視点に「染まらない」ことが大切だということの裏返しであると理解しました。つまり、受講者のように組織に属してデザインに従事していると、当然ながら「社会人としての視点」「組織人としての視点」を持ちますし、同時に家庭や家族の一員として「家庭人としての視点」「親としての視点」など様々な視点も加わります。デザイナーにとって必要なのは、できるだけ多くの視点を持ち、特定の価値観に染まらないことで新たな価値観を生み出していくことだと感じました。 こうした考え方は、モノがあふれる現代で物事を考えるにあたってどうしても必要になります。田子先生によれば、「世の中には、既に必要なものは揃っている。つまりNeedsは無いということ。ただし、Wantsならある。欲しいか欲しくないかが問題」であると。ここに本質があり、「Wantsを喚起するには、その製品の裏側にストーリーを生み、見えない価値を創り出すこと」であると強調されました。「ストーリーだけでも十分に仕事になる」とコメントされていましたが、確かに作り手の哲学が感じられる製品やサービスは、消費者の共感を通じて高い満足度に結びつきます。 ワークショップ1回目の演習では、「うまい棒」を使った行動観察とアイデア出しを行いました。二人一組になって、一方が「うまい棒」を食べる様子を観察してメモする。なるべく細かく、注意深く観察してメモすることがポイントです。これを交互にやり、後で互いのメモを交換します。すると、そこにはきっと面白いことが書いてあるに違いありません。自分では気づかなかったことでも、相手からすれば気になったことがあるはずです。また、お互いの共通点や相違点も必ず見つかります。これらを踏まえて「うまい棒」の問題点を抽出して、新しい「うまい棒」のアイデアをカタチにしました。 私個人にとっては、どうしても特定の考え方に偏ってしまうことや、頭が固くなっていることを自覚したワークショップでした。2回目も楽しみです。 |
ワークショップの講義風景 うまい棒を題材にしたエスノグラフィの演習風景
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■問い合わせ先 TEL 082-242-4170(代表) E-mail:kougi@itc.city.hiroshima.jp |
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