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中央図書館からのおすすめ本(117)『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』 |
毎月、中央図書館が推薦するビジネス支援情報の図書をご紹介しています。
なお、これまでに紹介した本については、当財団のホームページに「中央図書館からのおすすめビジネス図書」として公開しておりますので、いつでも見ることができます。
山口 周/著
光文社 (2017年7月発行)
ニューヨークのメトロポリタン美術館、ロンドンのテート・ギャラリーなどの大型美術館には、社会人向けのギャラリートークという、キュレーター(美術館等の専門職)が展覧会の作品の見どころ、制作にまつわる逸話などを解説してくれる教育プログラムがあります。
アート関係者によると、これまで旅行者や学生で占められていた参加者の中に、スーツに身を包んだビジネスエリートの姿をよく見かけるようになってきたとのことです。
美術館とビジネスパーソンという、一見あまり関連のなさそうなこの組み合わせですが、こういった動きは、全世界的なトレンドとなっているそうです。
なぜ、世界のエリートは「美意識」を鍛えるのでしょうか?
本書では、この大きな問いに対して、多くの企業・人のインタビュー、フィールドリサーチなどの結果をもとに具体的な理由を丁寧に答えています。
現在のように変化が速い世界では、システムの変化にルールの制定が追いつかず、明文化された法律だけを拠り所にした判断や、「論理」「理性」に軸足を置いた経営では舵取りをすることができない状況が起きています。不安定な社会でクオリティの高い意思決定を継続的にするためには、法律やシステムだけでなく、「真・善・美」(それぞれ、学問、道徳、芸術の追求目標と言える三つの大きな価値概念)を判断するための「美意識」が求められます。論理的にシロクロのはっきりつかない問題について答えを出さなければならないとき、最終的に頼れるのは個人の「美意識」しかない、と著者は言います。
第6章の「美のモノサシ」では、「美意識」を全面に出して成功した日本企業としてマツダを例に挙げ、マツダ車の「日本的美意識」を表現したデザインが世界的に評価され、売上高や営業利益などの業績にも貢献するに至る戦略などが紹介されています。
「美意識」は、絵画などアートを見る、哲学に親しむ、物語や詩を読むことなどによって鍛えることができるそうです。例えばアートを見ることによって観察力が向上し、詩を読むことで比喩の引き出しが増えるとも言っています。
美術や音楽、文学などの芸術文化を楽しみ、親しむことは、人生を豊かにしてくれるだけでなく、ビジネスの大切な場面でも、理論だけでない総合的な判断をするうえで大きな力を発揮するものであることを教えてくれる本です。