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技術情報の提供「さびの調査について」

広島市産業振興センターNEWS

技術情報の提供

「さびの調査について」


 「さびる」とは、金属が環境中の酸素や水分などと化学反応を起こし、腐食することを言います。一般的に、鉄がさびたという場合、表面が赤茶色になって、凹凸になります。これは、鉄が大気中の酸素・水分と反応して、表面に含水酸化合物20230815-6-5.jpgを生成したためです。鉄は、自然界では酸化鉄として存在している鉄鉱石から人工的に酸素を取り除いて作ります。「さびる」ことは、鉄が元の状態、つまり安定した酸化の状態に戻ろうとすることになります。酸素も水分も豊富にある空気中においては、ごく自然な現象といえます。

 さて、製品をさびにくくするためには、表面に防錆剤を塗布して、めっきや塗装を施すなど、鉄が直接酸素や水分に触れないようにします。一方で、ステンレス鋼のようにさびにくくした鉄もあります。ステンレス鋼は英語でStainless Steels(=さびにくい鋼材)といい、「鉄にクロムを約10.5%以上含む合金」と定義されています。クロムの存在によって不動態皮膜と呼ばれる数nmの極めて薄いクロムの酸化皮膜を表面に形成することで、母材としての鉄が「さびる」ことを保護するように作られたものがステンレスです。

 当センターでは、さびないと思っていた製品がさびた場合や短期間でさびが発生した場合など、さびの原因調査の相談がよくあります。さびの調査は、さびの色調の観察、さびた部分の成分分析で原因元素や促進元素がないかの確認、材料自体の成分組成の分析等を行います。

 今回、日常の暮らしのなかで見つけた「さびた釘」について、観察や成分分析を実施してみました。

 さびが発生する場合、主に酸化する元素や、生成された酸化物の種類によって赤、黒、白、緑、茶、青、黄など様々な色が発色します。今回のさびた釘の表面を顕微鏡で観察してみると、赤褐色の腐食生成物が確認できました。

 

さびた釘の表面を顕微鏡で観察してみると、赤褐色の腐食生成物が確認できました。

 

 次に、蛍光X線分析装置により釘そのものの表面を分析したところ、98%以上が鉄で、その他微量のマンガン、けい素、クロム、硫黄、りんなどが検出されました。この結果から表面にめっきや塗装などは施していない普通鋼であると推測できました。

 

蛍光X線分析装置により釘そのものの表面を分析

 

 最後に、電子線マイクロアナライザーは数µm程度の微小な領域の元素分析が行える分析装置ですが、この装置を使用してさびた釘表面を観察し、微小領域の元素分析を行いました。顕微鏡で確認できた表面の腐食生成物は、主に酸素と鉄から成ることが分かります。このことから、鉄の酸化物が生成されていることが推測されました。また、顕微鏡で黄褐色の色味が確認された位置には塩素が分布していました。一般的に、塩素は鉄材のさび発生を促進する元素のひとつとして知られており、これがさびの発生を促進したものと考えられました。最終的には、この塩素の混入経路を追及していくことで、さびの発生原因にたどり着くことができます。

 

さびの発生

 

 顕微鏡や電子顕微鏡などの観察機器については設備使用も可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。

 

■問合せ先

 工業技術センター 材料技術室

 TEL 082-242-4170(代表)

 E-mail:kougi@itc.city.hiroshima.jp

 

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