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(118)中小企業が、SDGsを経営に取り入れるには(第3回)

中小企業が、SDGsを経営に取り入れるには(第3回)

 

中小企業診断士 大橋 功 氏

SDGs経営の導入事例

  

中小企業診断士 

大橋 功(おおはし いさお)

 

 今回は、SDGs経営に取り組む中小企業の事例として(株)アドバコム(本社:札幌市)をご紹介します。

 

SDGsの参考企業 株式会社アドバコム アドバコムは子供向け環境情報紙「エコチル」の発行を主業務に、行政・学校・企業と連携して社会的な課題を解決するための様々なイベント開催に取り組む企業です。

 エコチルはエコロジーとチルドレンを組み合わせた造語で、「子どもたちが環境に関心をもつ機会を作りたい」との臼井社長の想いから2006年に創刊、小学校の教室で毎月先生から児童に配布されています。地元札幌市内からスタートし、現在では北海道、東京23区、横浜市、長野県(佐久地域)の公立小学校等に毎月77万部を無料配布、その運営を教育や公益事業等の企業広告収入で賄うビジネスに成長しました。

 地球温暖化や生物多様性などの環境問題を、フルカラーのイラスト入りで子供にも分かりやすく解説しています。当社はエコチル以外にスポチル(スポーツ応援情報紙)、キャリチル(キャリア教育情報紙)という子供向けメディアの発行や、工場見学・農業体験など親子での体験型イベントの企画運営も行っています。

 

  • SDGs取り組みのきっかけ
  •  臼井社長は2018年に、従来から取り組んできた環境問題がSDGs目標に含まれているのを知り経営方針に取り入れました。また「だれ一人取り残さない」というSDGsの考え方に触れて従業員への接し方も柔軟になり、時短・在宅など様々な働き方の必要性や意義を理解できるようになったと仰っています。現在正社員19名以外に、デザイナーやクリエーターとして国内・海外で60名以上の在宅ワーカーが業務委託ベースで働いています。
  • SDGsを取り入れた効果
  •  SDGsを事業領域拡大につなげています。環境だけでなく健康増進、少子化などSDGsがカバーする様々な社会的課題にも情報発信の対象を広げるきっかけとなり、「スポチル」「キャリチル」の発刊に結び付きました。小学生だけでなく、SDGsに関心を持つ高校生、大学生を対象とする出張授業やイベント支援にも取り組んでいます。

     さらにエコチル事業とSDGsを関連付け、自治体や企業と連携してさまざまなイベントを行う「エコチルSDGsプロジェクト」を立ち上げました。札幌市とタイアップして2018年から開催している親子向け環境イベント「環境広場さっぽろ」はその具体例です(2021年度はオンライン開催予定)。

     社員の士気向上も見逃せません。臼井氏によれば、元々環境問題に関心の高い社員が多いので、SDGsにより活動の意義が再確認でき、やる気の向上につながっているとのことです。

  • 今後の方向性
  •  環境保全に取り組む子供たちを育むため、エコチル事業をさらに全国・海外に広げていくのが今後の目標です。そのためには自社だけでなく、社外のパートナー(協力者)を増やしていくことが重要。SDGsは世界共通の言語になり得るので、活動の趣旨に共感するパートナーと組むチャンスは増えると当社は期待しています。

 

 アドバコムは、前回の「SDGs経営推進フレームワーク」の説明で取り上げた「自社の経営・事業戦略をSDGsで補強したい企業」に該当すると考えられます。図表1のとおり、エコチル発行を通じて環境問題に取り組むという経営戦略をSDGs目標への関連付けにより補強し、事業領域の拡大と社員の士気向上につなげました。SDGs経営の導入により自社の成長と地域社会への貢献を両立させていることが分かります。

 

【図表1】「自社の経営・事業戦略をSDGsで補強したい中小企業」の事例

~(株)アドバコム~

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 3回にわたってSDGs経営についてお話してきました。導入のメリットや方法を見出す一助になれば幸いです。

 

 


■<講師プロフィール>

 

中小企業診断士(2013年登録)

東京都中小企業診断士協会(城南支部)所属

大橋 功(おおはし いさお)

 

 金融機関を経て通信業界の会社に勤務。

 米国、欧州を中心に海外勤務を通算12年経験、国内外の法人向け融資、海外事業者との提携折衝、事業戦略・計画策定等に幅広く従事。診断士としては新規事業、ビジネスモデル、財務、SDGs等の分野を中心に経営診断や執筆活動を行っている。

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