デジタル技術を取り入れる前に AI-Ready化 "現在位置の確認"を
デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性を意識すると、何らかのデジタル技術を取り入れることを意識される方は多いことでしょう。特に、人事・労務や経理業務など管理業務に関するデジタル技術は想起しやすく、取り入れやすいものであることは確かです。しかしデジタル技術を取り入れること=DXではありません。その先のイノベーション、新たなビジネスの創出や組織の変革を見据えているのであれば、まず行うことは"現在位置の確認"です。
経団連でまとめられた提言AI-Ready化ガイドラインには、AIを活用して事業を推進していくレベルが立場ごとにまとめられており、現在位置を確認するために大いに役立ちます。これを参照し、ぜひ自社のAI-Ready「現在位置」を把握してください。
<参考リンク>
AI-Ready化ガイドライン
https://www.keidanren.or.jp/policy/2019/013_sanko.pdf
一般社団法人日本経済団体連合会
バックナンバー:2019年2月19日 「AI活用戦略 ~AI-Readyな社会の実現に向けて~」
業務効率化のDXは業務プロセスの把握から
組織によって置かれている状況は様々ですが、まずは人手が多くかかっている業務や単純作業・簡易な業務、ルーチンワークからデジタル化に取り組まれる組織がほとんどでしょう。確実にそれを遂行するためには、現状の業務プロセスを把握することから始める必要があります。それを明らかにした後には、技術を取り入れる目的や業務上の課題を定め、解決するために必要な事項を整理し、活用できるAIやデジタルツールを選定していきます。これは「人から機械・技術に置き換えられるもの」を見極めていくことになります。また、必要なデータ・情報が分析・活用できる形で取得可能になっていることを目指されると良いでしょう。
新たなる価値創造・イノベーション実現のDX推進 ー データの棚卸しから
AI-Ready化の現在位置を把握し業務効率化を行った後は、イノベーション・変革を目指すアクションへ移行していくことになります。このためには、自身の組織内にあるデータの現状認識から始めねばなりません。イノベーションのための現状認識は、いわば「データという資産の棚卸し」です。AIを誰しも使う時代に入り、その燃料となるデータには大いなる可能性が秘められています。データの棚卸しをしていただく際には、下記のような点を確認いただくと良いでしょう。
チェック事項 | チェックのポイント |
どのようなデータがあるのか | 直接部門・生産部門などにおいてビジネスを遂行する際に発生したデータ、顧客情報、取引履歴や管理業務のデータなど「情報・データ」と位置づけられるものを、部門や領域を限定せず把握すること |
機械判読可能か | 機械判読可能=AIに読み込ませる事のできる形かどうかです。もし紙などで読み込ませられないものであれば、機械判読化の手間はどのくらいかかるかもチェックすること |
データの取得期間はどのくらいか | AIを用いた予測などにはある程度の長さの期間データが有ることが望ましい。期間が十分でない場合はすぐに取得・蓄積を始める |
ノイズや欠損はどのくらいあるのか | ノイズ・欠損がありすぎるとデータを有効に活用することができません。また、除去・補填にも多くの手間がかかります。 |
人やモノがアクションしたデータ(行動履歴データ)かどうか | いつ・誰(何)が・どう行動したかというデータからは様々なことを見出すことができます。そのデータの取得の"粒度"の細かさ(時間であれば何ミリ秒単位であるか、人やモノは個として特定できるか)を確認する。ただしプライバシーに関わるデータである可能性が高いため、取り扱い・活用に際しての倫理的な配慮は慎重に行う |
DXの遂行には資源となるデータと、価値に変えるためのAIが不可欠です。そして、この推進を行うには行う立場である企業の組織そのものも意識改革、組織改革を求められることがほとんどです。次回はそれらを担うための人材や、その育成についてお話ししたいと思います。
■<講師プロフィール>
株式会社Rejoui(リジョウイ) 代表取締役 菅 由紀子(かん ゆきこ) 一般社団法人データサイエンティスト協会 スキル定義委員 Women in Data Science (WiDS) アンバサダー 関西学院大学大学院経営戦略研究科 兼任講師 HBMS県立広島大学大学院 非常勤講師
大崎上島町出身。広島女学院高等学校、中央大学を卒業後、株式会社サイバーエージェント、株式会社ALBERTを経て、2016年に株式会社Rejouiを設立。DX推進支援、データ分析・利活用コンサルティング、データサイエンス教育事業などを展開。 2021年より広島オフィスを新設し、広島をはじめ西日本地域における企業・官公庁のDX推進支援に取り組んでいる。広島県主催「みんなのDX研修 (通称)」代表講師。同年、自身がアンバサダーを務める人材育成の活動(WiDS HIROSHIMA)が評価され、日本統計学会統計教育賞受賞。
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