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(141)「あなたの社内にいる凄い!と感じさせる憧れとなる人材紹介」による採用促進(第2回)

凄い!と感じさせる「憧れとなる人材紹介方法」はこれだ

吉原 伸二(よしはら しんじ)先生

知的資産経営報告書作成・活用専門家
中小企業診断士
システムアナリスト(高度情報処理技術者)

吉原 伸二(よしはら しんじ)


はじめに
 前回は「採用促進の3つの切り口と成長志向の高い人材採用」の話をしました。今回は、一番重要な「人の強み」について事例を交えて、詳しくご紹介します。

覚えて欲しい応募者の思考
 成長志向の高い応募者は「将来こうなりたい」というイメージを持ちますが、それに応えるのが「社内にいる憧れの人材」です。つまり応募者は紹介された人物に自身の将来を重ねて考えます。これが覚えて欲しい応募者の思考です。

自社の特徴に合う高度な人材
 では、どんな社員も憧れの対象になるかと言えば、そうではありません。まずは「自社の特徴に合う高度な人材」かどうかです。例えば、ものづくりの製造業であれば「高い技術力を保有した人材」、サービス業であれば「見習いたくなる高い接客力を持った人材」を選びます。(以下、製造業で話をします)

欲しい人材像をイメージする
 次に考えるべき内容は「自社にとって欲しい人材像が明示されているか」を考えます。
 「欲しい人材?それは若手だよ。技術力があるうちの若手の紹介をすればいいんだね。」と言われる事があります。「その通りです。ちなみに、今働かれている若手社員は誰を目指していますか?」「うーん、技術力の高いベテラン社員かな・・」
そうです。登場させて欲しいのは、応募者が「最終的に目標としたい技術力の高いベテラン社員 と 直近で目指したい頑張っている若手社員」なのです。これらの2階層が「憧れの社員」の正体なのです。実際に憧れの社員に焦点を当てた事例を以下にご紹介します。この事例は鉄工業です。夏の暑さが尋常ではない職場で、退職する若者が後を絶たない会社でした。募集しても電話一本なかったのが、本活動により、中堅・若手層の採用例に繋がった例です。「表.憧れの社員の登場ページ」に実際の内容の一部を記載します。

 

表.憧れの社員の登場ページ

紹介世代 紹介する人材の業務 紹介する具体的な文章(一部のみ引用)
ベテラン層 歪とりのエキスパート

彼の歪取りに不可能はない。500tプレス機を駆使し、溶接時にひずんだ歪を絶妙な操作であるべき形に持っていく、まさに歪取りの魔術師である。その力量は競合先からも依頼が入る程である。

ガス切断のプロ ○○

ガス切断の寸法の正確さと断面は、技術者の善し悪しを判定するひとつの基準である。長いものを切る時は普通レールを引くが、引かないで切れる男○○。訪問した顧客は、こんなに真っすぐに切れたのは見た事ないし、断面は均一でありガスノッチ(波打つ状態等)が発生していないと驚く。

次世代
技術者
(若手社員)

溶接工

彼の技術習得速度は高く、ベテランから一目置かれた存在である。彼は言う「鉄と鉄が一体化する、溶接が奏でる音が好きなんです。その音は電流・電圧を調整する事で微妙に変化するものです」と。

ガス切断を学ぶ △△

将来のベテラン技術者に成長すべきガス切断を○○から習っている△△、ガス切断は、ガスと酸素の量で決まる。ガスの色合いでその適量を見極めにまだ時間がかかると言う。学ぶべき事は多い。
ガスの色合い、直線など前向きな△△の学習姿勢は周りをも変えていく。

〇〇や△△には実際の社員名を入れています

出来上がった紹介資料
 上記の「凄い人材像(人の強み)」に「会社の強み」と「ネットワークの強さ」の観点(コラム第一回を参照)を加えた紹介資料を作成したら完成です。しかしながら、この紹介資料をどうやって、応募者の目の前に届けるかが悩みどころではないでしょうか。この事業者も自社ホームページやX(旧Twitter)を保有していたので、そこに紐付けました。しかし、元々応募者が訪れていないホームページ等には誰も来ません。そこで、ハローワークと連携したのです。

ハローワークとの連携
 ハローワークを訪問、本活動の主旨を説明し、協力を頂く所から始めます。具体的には、ハローワークに紹介資料配布の了解を頂いた後に、求人票の備考欄に「当社の魅力ある人物等を描いた紹介資料を窓口に数部用意しています。ご希望の方は取りにきて下さい」と記載するのです。ハローワークに行った求職者は、パソコンで希望職種や待遇などの条件を検索し、1枚の求人票を印刷します。同じ業種だとどこも同じに見えてしまうのですが、1社だけ「魅力ある人物等を描いた紹介資料」があると、どう思うでしょう?
(※現在、備考欄へのこの記述は公平性の観点から出来なくなりましたので、ご承知おき願います)

個別説明会の開催
 紹介資料の配布が始まって数日後、企業の個別説明会が開催される旨、連絡が入りました。申し込みは出来ましたが、求職者は事前申込制で4名定員枠です。逆を言えば、事前の申し込みも当日の来館もない場合は、企業側の説明者は座っているだけに終わります。ここでも紹介資料は活躍します。紹介資料のポイントを箇条書き抜き出した情報を、事前申し込みの際の企業概要として公開するのです。わずか数日で申込枠はいっぱいになり、説明当日を待つだけとなりました。

事業者もびっくり、こんなに上手くいくとは!?
 さて、結果はどうなったでしょうか。個別説明会の参加者4名、後日電話があった(ハローワークで紹介資料を受け取った方と思われる)2名の計6名が採用面接を受けに来てくれたのです。結果、優秀な3名を採用する事に至りました。これには、事業者もびっくりされ、「こんな上手くいくとは思わなかった」と代表から言われました。

次回に向けて
 今回は、一番重要な「人の強み」について事例を交えて詳しくご紹介しました。こんなに上手くいくはずじゃないか、と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、事実です。ただ、紹介するだけでは採用は上手くいかない、同時にすべき事はあります。次回は、その同時にすべき事を中心にお話したいと思います。

 

■<執筆者プロフィール>

知的資産経営報告書作成・活用専門家
中小企業診断士
システムアナリスト(高度情報処理技術者)

吉原 伸二(よしはら しんじ)

広島県中小企業診断協会 正会員
公益財団法人広島市産業振興センター 広島市産業振興センター 登録専門家・窓口相談員
広島県商工会連合会 登録専門家
広島商工会議所 経営発達支援事業専門家

福山市出身。中央大学理工学部卒業後、現・NECソリューションイノベータ株式会社入社。
製造業・プロセス業のシステムエンジニアを経て、ソリューション営業を長年経験、営業部長として中国5県を統括。会社合併に伴い大阪及び東京本社で勤務。技術統括のゼネラルマネージャーとして、全国数百人の組織を統括、技術分野の人材育成に携わる。早期退職後、独立コンサルタントして、広島で人材採用や資金調達を目的とした知的資産経営報告書作成・活用、DXセミナー講師や導入支援他、数多くの経営相談に従事。
本記事は、知的資産を独自の視点で紐解いた経験を活かし、採用の観点で執筆した記事となる。

 

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