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(142)「あなたの社内にいる凄い!と感じさせる憧れとなる人材紹介」による採用促進(第3回)

資料はただ作るだけではいいのではない 同時にすべき事がある!

吉原 伸二(よしはら しんじ)先生

知的資産経営報告書作成・活用専門家
中小企業診断士
システムアナリスト(高度情報処理技術者)

吉原 伸二(よしはら しんじ)


はじめに
 前回は、採用促進で最も重要な「人の強み」の話をしました。今回は鉄工業を例に「資料は単に作ればいいのではなく、同時にすべき事がある」をご紹介します。

会社個々の状況を踏まえる
 このコラムに興味を持たれた方の中には、前回までの内容を踏まえターゲットにあったしっかりとした資料を作っていこうと考えている方も多いと思います。とても素晴らしいことです。ただ、注意頂きたいのが、資料を作成する過程で、個々の企業が持つ問題を解決する事にも目を向ける必要性があるという事です。

鉄工業の社内問題
 私がこの鉄工業で凄い人材を発掘する際に、個々の社員と面談をしました。その時「経営者から会社方針の説明がない」、「従業員教育をどうするのか不安」、「仕事を頑張っても意味がない」等を言われました。この状態では、いくら新規採用が図れたとしても、離職者がそれを上回ってしまうと感じました。このため、魅力ある人材資料を作成する以前に、現行の社内の雰囲気を変え、経営者との溝を埋める施策を講じないと会社がなくなってしまう、資料はこの改革を進める結果のアウトプットとして位置付けてもよいのではと考えたのです。

始まった社内改革
 まず、この会社は変わっていくぞ!という強いメッセージが必要です。そのためには、
全社員を集めてのキックオフ「〇〇鉄工チャレンジ活動2023」を開催、その中で従業員視点のテーマを3つあげて、これを目指す改革を銘打ちます。テーマ毎に選抜された従業員と経営者そして私で、当社はどこに強みがあって、何を目指すのかを徹底的に議論を進めたのです。ファシリテーションを上手く進めることで、最初は遠慮がちだった若手も積極的に発言してくれるようになりました。ここまで来ればしめたもの。討議で出てきた人材、会社の仕組みや関係性など、資料のネタを拾っていくのです。もちろん従業員には、作成する資料を理解してもらい、内容の確認もして貰います。

共有の場を設ける
 資料が出来たら、その資料を全社員と共有を図ります。発表は登場した本人達にしてもらうのですが、さすがに自分のページを格好良く語るのは恥ずかしいため、次のページに登場する方に発表をして貰います。皆が自分事と感じ、自社の凄い事が全員で共有されます。また従来伝えていなかった経営方針を経営層が説明、どの事業を強化して新規事業はどこを攻めていくのかを示します。一方、教育はジョブ・ローテーションを新たに打ち出し、切断⇒穴あけ⇒溶接⇒歪(ひずみ)取りの流れで技術力を発展し、保有する技術力を広げていく事も表明します。従来眺めているだけの従業員も初めて興味を示し、チャレンジしてみたい雰囲気に変わってきたのです。

ある日のこと
 私がその鉄工業を訪問した時、資料に載っているベテランに呼ばれました。
  「先生ちょっといい」
   「どうされましたか」
  「いやな、この間先生と一緒に作った資料、わしの頁を広げてリビングの机に置いといたんじゃ」
   「それで?」
  「かみさんがその頁を見て、『これあんたじゃん、こんなに格好よかったの』と言ってくれたんよ。」
   「それから?」
  「かみさんが、その頁を写メで撮って家族LINEに送ったんよ。そしたら娘や息子から、『これお父さんじゃん、凄え~』と返信があったんじゃ。
   わし初めて家族に自分の仕事の話が出来て、褒められたんじゃ。」

別のある日
 財務担当の役員から声がかかりました。
  「吉原さん、まだ決算をしめている最中なんだけど、営業利益率がよくなったるみたい。なんでかね?」
   「それは、皆さんがやる気になって、必死に仕事をし始めたからではないでしょうか」

私がいなくても改革は続行される
 暫くすると担当の常務から連絡が。
  「先生、〇〇鉄工チャレンジ活動2024を自分達だけで始める事にしました。」
 私はとても嬉しく思いました。自発的な活動の定着化、これぞ目指すべき姿なのですから。

話を元に戻す
 こうして、社内の雰囲気が改善した会社は、第二回目で紹介した通り3人の採用を果たしました。もし、雰囲気が悪い状態のままだったら、どうなったでしょう。今回は、鉄工業を例にお話しをしましたが、他はどうでしょう。機械卸業は分離した2事業部間の交流活動を進めながら、ひとつの会社として凄い人材紹介をしました。別の建設業は地域に根差した活動を再認識するための企画を前面に出して作成しました。以上から、魅力ある人材紹介資料を作成する際には、同時にすべき事がある事がお分かり頂けましたでしょうか。

最後に
 このコラムを掲載した際に多くの方にご覧になられたとお聞きしました。まだまだ人材不足は続くことが予想されております。皆さんの会社が今後もより発展できるよう、少しでも役にたてば嬉しく思います。最後までお読み頂き、ありがとうございます。

■<執筆者プロフィール>

知的資産経営報告書作成・活用専門家
中小企業診断士
システムアナリスト(高度情報処理技術者)

吉原 伸二(よしはら しんじ)

広島県中小企業診断協会 正会員
公益財団法人広島市産業振興センター 広島市産業振興センター 登録専門家・窓口相談員
広島県商工会連合会 登録専門家
広島商工会議所 経営発達支援事業専門家

福山市出身。中央大学理工学部卒業後、現・NECソリューションイノベータ株式会社入社。
製造業・プロセス業のシステムエンジニアを経て、ソリューション営業を長年経験、営業部長として中国5県を統括。会社合併に伴い大阪及び東京本社で勤務。技術統括のゼネラルマネージャーとして、全国数百人の組織を統括、技術分野の人材育成に携わる。早期退職後、独立コンサルタントして、広島で人材採用や資金調達を目的とした知的資産経営報告書作成・活用、DXセミナー講師や導入支援他、数多くの経営相談に従事。
本記事は、知的資産を独自の視点で紐解いた経験を活かし、採用の観点で執筆した記事となる。

 

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