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(144)クラウド会計の導入について(第3回)

クラウド会計ソフトの選び方

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前田税理士事務所
代表

前田 祐太朗(まえだ ゆうたろう)


第3回「クラウド会計の導入成功事例」

 前回は、クラウド会計ソフトの選び方についてお話してきました。そこで、今回は、クラウド会計を導入することで、資料の提出方法、会計システムへの入力方法、税理士事務所とのコミュニケーションにどのような変化があったかを明確にした上で、経理業務の効率化が達成できた事例をお伝えします。
まず、当該法人がもともと抱えていた課題について見ていきましょう。

【クラウド会計導入前の状況】

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<当該法人が抱えていた課題>

現金出納帳・通帳のコピーなどを紙に印刷して税理士事務所に渡すため、資料準備に時間がかかっています。特に通帳は、銀行に行って記帳をしてからコピーをするため手間がかかります。
役員の使用した領収書を現金の勘定科目で会計システムに入力していくため、時間がかかっています。

多種多様な取引先から銀行①の口座に入金があるため、取引先ごとに摘要を入力するのに時間を要しています。また、クレジットカード利用明細書から会計システムに入力をしていくことも一定の時間を費やしています。

電子帳簿保存法にどのように対応したらよいのか不安をかかえています。
税理士事務所へ資料提出後、試算表が完成して手許に届くまでに日程調整も含めると約2-3週間のラグがあります。金融機関への試算表の提出や補助金の申請をする際に迅速に対応できないことがあります。

 当該法人は、経理業務に関して、上記の問題意識を持っていました。そこで、当該法人は、(簿記の知識に自信がなかったため直観的に操作がしやすい)クラウド会計のfreeeを選択し、導入しました。抱えていた課題を解決すべく、経理作業の効率化を目指しました。そのクラウド会計導入後の変化は下記の表の通りになります。

【クラウド会計導入後の状況】

20241115-2.jpg

<当該法人が享受した成果>

【資料提出】
 資料提出に関しては、API連携により銀行の通帳データやクレジットカード利用明細データがfreee会計の方へ自動取得されるため、税理士事務所へ提出不要になりました。また、領収書や請求書に関しても、スマートフォンやスキャンスナップを利用して、画像をfreee会計のファイルボックスへアップロードするため、税理士事務所との共有が可能となりました。現金出納帳もfreeeと連携可能な現金出納帳に入力することにより、従来行っていた2度同じ内容を入力する手間がなくなりました。

【領収書入力】
 役員の領収書に関しては、毎日、その日に受領した領収書をスマートフォンで撮影することにより、画像のアップロードと同時に仕訳登録を行うことが可能となりました。
 「日付」、「金額」、「勘定科目」、「インボイスの有無」を読み取り、自動推測してくれるため、ストレスなく仕訳登録ができるようになりました。

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【自動連携】
 API連携により銀行の通帳データやクレジットカード利用明細データからfreee会計へ情報を自動取得します。その後、取引内容・摘要に応じて仕訳を自動登録or自動推測してくれるため、「日付」、「金額」、「勘定科目」、「摘要」をひとつひとつ手入力する作業時間が短縮されました。したがって、手入力をする取引は一部残るものの、8割近くの取引に関して自動連携することができました。
 また、自動連携はミスが起きないという点が一番の良いところかもしれません。以前は、通帳残高と会計システムに入力した残高に差額が生じた場合、どこでミスが起きたか検証するのに時間と手間がかかっていました。しかし、クラウド会計を導入してからは、残高の数字がズレることがなくなり、作業時間もストレスもかからなくなりました。

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【電子帳簿保存法】
 請求書は、基本的にfreee会計のファイルボックスへスキャンデータを保存するため、電子データで送られてきたものに関しても、データで保存することができ、電子帳簿保存法に対応できました。また、Amazonビジネスを利用した場合、AmazonビジネスとfreeeがAPI連携できるため、支払い明細書(インボイス)も自動保存される形となりました。
【リアルタイム記帳】
 クラウド会計に変更して、取引発生と同時に自動仕訳がおこり、リアルタイムでの記帳をすることも可能になりした。また、税理士事務所とも会計システムを共有できるので、不明点については、コメント機能を活用して、スピーディーに解消できるようになりました。
 そして、税理士事務所とのコミュニケーションは、資料を持参する必要もなくなったため、打ち合わせにはZOOM等のツールを利用することで、移動時間が短縮でき、スケジュール調整も柔軟になりました。

【IT補助金の対象】
 導入時は、IT補助金を活用して、初期費用を抑えることができました。
IT導入補助金のインボイス枠を利用してクラウド会計を導入した場合、導入費用(クラウド会計使用料の2年分)の最大3/4に相当する補助金が支給されることとなります。
当該補助金は、個人事業主も適用対象となっています。

2024年1月1日から、原則、電子データで受け取った請求書等は電子データで保存することとなり、紙に印刷しての保管が認められなくなっています。

例:freee会計のスタータープラン 年65,760円(税抜)
 年65,760円(税抜)×2年×3/4=98,640円
 ∴98,640円の補助金が受け取れます。
 ※ただし、補助金は税抜金額に対して計算されるため、実際に負担する金額には、別途消費税がかかります。
 
<まとめ>
 今回ご紹介した法人の例では、従来、経理業務にかけていた時間を約70%短縮することができました。その分、経理人員を配置転換でき、コスト面での削減にも繋がりました。

さいごに 
 経理業務を含むバックオフィス業務の効率化に悩まれている中小企業・個人事業主の経営者の方は、多いと思います。クラウド会計を導入することで、経理業務の効率化を図り、本業に集中しやすい環境を整えることを検討されてはいかがでしょうか。
 皆様の事業が今後も発展を遂げられるよう、少しでもお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。


■<執筆者プロフィール>

前田税理士事務所
代表

前田 祐太朗(まえだ ゆうたろう)

昭和60年広島市に生まれる。
関西学院大学経済学部を卒業後、広島県内の公認会計事務所や税理士事務所にて、7年間、中小企業の税務・会計業務に従事した。
その後、令和2年11月に前田税理士事務所を開業。
クラウド会計の導入支援、税務・会計業務、相続税・贈与税の対策、資金繰り改善など、中小企業や個人事業主の経営支援に取り組んでいる。
また、「創業支援セミナー」や「相続に関するセミナー」も講演しており、事業の開始から終わりの部分まで積極的に情報発信を行っている。

 

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