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(148)製造業のムリが勝手に解消する組織作りの3ステップ
  ~見えない負担を無くして安心して働ける職場の育み方~ (第3回)

【ステップ3】 ムリが勝手に解消する組織

株式会社Career Fine 代表取締役  赤井 宣幸 氏

株式会社Career Fine
代表取締役

赤井 宣幸あかい のぶゆき


「指示・命令」から「任せて見守る」意識改革

今回のコラムの主題である『製造業のムリが勝手に解消する組織作りの3ステップ』の第一の目的は、現場の従業員が、自分達で働きやすい職場を主体的に作っていくことを通して、意欲的に成長していくことです。

その為には、経営者や管理者は現場の従業員を信じて見守るというスタンスが欠かせません。
経営者や管理者から信頼を受けていると感じた従業員は、その期待に応える行動をとるようになります。

ここで間違ってはいけないのが、「生産性の向上」や「作業効率化」を第一目的にしてはいけないという事です。 「生産性の向上」や「作業効率化」によって得られる改善効果(お金)は、現場従業員が主体的に動くことで得られる、副産物なのです。
この副産物を得ることを焦ってしまうと、経営者や管理者は現場からの改善提案を待つことが出来ず、自ら改善案を提示し、改善を指示・命令するという行動に出てしまいます。

そうなると、現場の従業員は「忙しいのに、何でこんなことするの?」という疑問の中で『言われたからやる』、『理由は分からないけど命令だからやる』という、受け身状態で「自分達は大切にされていない」という気持ちで仕事を行う様になってしまいます。
当然ながら納得感が無く意欲も湧かない状況では、改善効果など出るわけが有りません。
更にマズいのは、生産性のないグチだらけの職場になることで、優秀な従業員ほど成長や遣り甲斐の得られない職場に嫌気がさし、職場を離れる決断をするのです。

現場従業員の主体性を育てるには、成功体験の積み上げが必要で以下の4つのサイクルを回し続ける必要があります。

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① 困りごとの吐出し~提案評価を共に行ない気づきにつなげる
 

前回(第二回)でお話したように、現場の困りごとに対して現場従業員から出てきた改善提案について、一緒に改善効果の評価を行い、効果を確認(検証)します。これらの対話の中から、次につながる新たな気づきを得ます。

② 問題解決の流れを理解する

新たな気づきから得られた改善を元に、次の実行を決定し現場が自ら実行する。実行後はその効果を確認(検証)します。この一連の活動は"問題解決モデル"そのものです。この問題解決を経験することで、流れを自然に身に着けることが出来ます。

③ 自分達で問題を解決したという達成感を得る

自分達で決めた事を最後までやり切ったことで、達成感を得ることが出来ます。 もし良い結果が出なかったとしても、経営者や管理者は挑戦したことを評価し、失敗を次の挑戦に繋げられるような声掛けを行います。良い結果が出るまで励まし応援することで、失敗を恐れない風土が形成され、成功を手にするためには諦めることなくチャレンジを続ける必要があることを理解することが出来ます。

④ 現場が、自分達で創り上げているという成長

経験を繰り返し、結果を積み上げていくことで、会社から与えられた職場を自分達が働きやすいようにカスタマイズしているという意識になり、次第に職場を自分達が創り上げているという認識を持つことが出来ます。 この自分達が決めて動かしていけるという経験こそが、モチベーションアップや自分自身の成長意識に繋がり、従業員の定着率が向上すると共に、魅力のある職場として入職希望者を増やすことにもつながっていきます。


まとめ
最後に、私の好きな言葉を紹介します。

"やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。
 話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
 やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。"

連合艦隊司令長官の山本五十六の名言『やってみせ』です。
1行目は、「リーダーが自ら手本を示し、説明し、実際にやらせてみて、そして褒めることで人は動く」という意味です。
有名なので知っていて実行されている人も多いと思います、 実は1行目の後に続く2.3行目に、職場を変える秘訣が示されています。
「上司部下が、お互いに相手に敬意を払って話し合い、部下の言葉を承認して任せたら、信頼して見守ることで人は育ち主体的になれる」という意味に私は捉えています。

私はこの言葉に感銘を受け、常にメモを持ち歩いています。

今回紹介した『製造業のムリが勝手に解消する組織作りの3ステップ』を成功させるためには、まさに、この『やってみせ』の言葉通り、経営者や管理者が以下の意識改革ができるかどうかにかかっています。

・自社の従業員は"出来る"と信じて任せること
・行動を根気よく見守り、適切にサポートすること
・プロセスと結果を適正に評価し、次の行動への後押しをすること

 以上を実行することで、経営者や管理者には見えていない現場の負担(ムリ)を、現場従業員自らが主体的に解消して、安心して働ける職場組織を作っていくことが出来るのです。
 皆様の職場でも意識して取組んでみていただければと思います。


■<執筆者プロフィール>

株式会社Career Fine代表取締役
キャリアコンサルタント
中小機構中国本部 中小企業アドバイザー(実務支援)
組織を活性化させる"人を活かす"気づかせ職人。

1967年広島県呉市生まれ。大学を卒業後、半導体製造工場で25年間にわたり生産技術部門と品質保証部門に従事。
システム構築やプロジェクト推進、折衝調整などを担当していたが、30代にメンタル不調を患った。それをきっかけに、心が思考や行動に及ぼす影響を知るため、心理と人材活性化を学ぶ。そして部下や同僚に同じ思いをさせないため、従業員の自己効力感や自己肯定感の向上を通じて生産性向上を実践し成果を上げる。
その経験で考案した「ムリを解消する3ステップ」を活用し、製造業の従業員の志気向上から生産性向上を実現することを目的に独立。従業員が主体的に考え行動する企業文化の構築を支援し「従業員の意識が変わった」「ムリだと考えていたことが無理ではなくなった」など、高い評価を得ている。

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