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(5)中小企業のための知財戦略(後編)

田村 善光さん
田村 善光さん

「中小企業のための知財戦略(後編)」

 田村 善光(たむら よしみつ)
 古田・田村特許事務所 副所長
 弁理士、中小企業診断士、技術士(経営工学部門)

 

 前回の「知財経営のメリット及びポイント」に続いて、「知的経営の実践」を説明します。

Ⅲ.知財経営の実践(知財の活用)


  ある開発テーマ決定から開発完了後の活用という流れの中での知財の活用を説明します。

1.開発テーマ選定から開発完了までの知財の活用

1)新商品及び研究開発テーマの検討段階
 マーケット分析、自社のSWOT分析などから事業化すべき新商品及びその新商品を具体化するために必要な技術を決定しますが、この段階において知財戦略情報としては、特許公報、学会誌や業界誌の技術論文などから作成した必要な技術の構成要素別特許マップ等から他社の技術開発動向、企業別保有特許や技術状況、他社の将来技術の予測などから自社の開発すべき技術情報を提供します。これを考慮して、最終的に事業化すべき新商品及びその新商品を具体化するために必要な技術を決定します。

2)開発体制の検討段階
 必要な技術の構成要素別に自社の開発技術力を評価し、自社のみでは開発困難な場合の対応を検討する段階において、知財戦略情報としては、他社や大学の技術分野・技術レベルから共同開発パートナーとして適している企業情報、他社の保有特許等のライセンス相手先情報などを提供します。これを考慮して最終的な開発体制を決定します。

3)開発段階
 知財戦略情報としては、特許公報や学会誌・業界誌の論文等から開発技術に関する情報を提供します。万一同じ技術が発見されたら回避技術の検討を行い、ムダな投資を抑制します。

 以上のように、知財経営を実践することによって、市場ニーズ等を分析して開発テーマを策定する段階や製品開発段階などにおいて業務を効果的に進めることができます。

参考   知財コンサルティングのイメージ図
知財コンサルティングのイメージ図


2.開発完了後の知財の活用

1)自社にとって最適な「権利化、ノウハウ化、出願のみ」の検討
 ①権利化:発明を独占的に実施でき他社の実施を差し止められます。また他社とのライセンス契約によって収入を得ることができます。
 ②ノウハウ化:秘匿にする観点としては、他社の侵害発見が困難な技術、競合他社が開発することが著しく困難な技術、発明が社外に漏れない技術等です。
 ③出願のみ:自社の実施が他社によって差止めされなければよいと判断したときです。
 ④権利譲渡:自社の経営戦略などを考慮して自社で事業化を行わず、他社に権利譲渡して開発投資の回収や新たな事業資金を得ることができます。

知的財産『活用」戦略


2)海外出願の検討
 権利化手続は国ごとですが、一度の出願で世界各国の国際出願日を確保しておいて、市場動向によって30月以内に権利化したい国を絞り込めるPCT出願制度があります。 

 以上で、「中小企業ための知財戦略」の説明を終わります。

 【著者紹介】
  古田・田村特許事務所で、特許・実用新案・商標・意匠・著作権などに関する各種相談、出願などの知財関係の業務を遂行するとともに、広島市中小企業支援センターの登録専門家です。
 弁理士、中小企業診断士、技術士(経営工学部門)の資格をもち、技術経営(MOT)を大学院で学びました。広島にいる強みを活かして企業を訪問し発明者等との対話を重視し満足頂けるよう業務をすすめています。中小企業の知財活用の支援もします。

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