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(10)弁護士が解説する中小企業のコンプライアンス(前編)



中井 克洋さん
中井 克洋さん
「弁護士が解説する
  中小企業のコンプライアンス(前編)」


    


 弁護士法人広島メープル法律事務所 
  社員弁護士 中井克洋(なかい かつひろ)
  

1 コンプライアンスとは
  昨今、企業の不祥事が次々と明るみに出て、その信用低下により企業そのものの存続が危機を迎えることは珍しいことではなくなってきました。

  それに伴い、コンプライアンスの重要性が説かれ、会社法や金融商品取引法によって内部統制システムの構築などが法的にも要求される時代がやってきました。

  ちなみに内部統制とは、これらの法律との関係では「①業務の有効性及び効率性、②財務報告の信頼性、③事業活動に関わる法令等の遵守並びに④資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される」とされています。

  ところでコンプライアンスとは「法令遵守」と訳される考え方もあるのですが、内部統制の4つの目的の③に「法令等の遵守」とあるように、近時は法令だけではなく社会通念上あるべき準則や要望(社会規範、道徳規範)も守ることを意味するという考え方が主流です。

  確かに最近は企業は社会的に重要な存在として、社会の模範たる行動をとるべきだという要請もあります。そのため、企業は法令だけ守っていればそれで信用が維持できるというものではなく、むしろ率先して社会の模範となる行動をとらないと、その行動の遅れが他社に比べて信用を落とす原因となります。

  例えば、食品偽装(産地、原材料の出自、消費期限・賞味期限など)は、そのまま食品安全基本法、食品衛生法、不正競争防止法、景表法、消費者基本法などの法令遵守違反となります。しかし、日常のエコ活動に疎い行動をとる会社は、直接、エコについての規制法が現時点ではないことから、国家や自治体による明確な制裁は受けませんが、社会的に信用がないという漠然とした制裁を受けることになります。
<参考> 人間や企業が社会の中で守るべきルール(=規範)

2 コンプライアンスが重要となった理由
  ただし、法規範と社会規範、道徳規範の差も微妙なものがあり、法令では規制されなかったことが社会規範、道徳規範に反すると世論で強く非難され、その世論に後押しされた政府や自治体によって規制が立法化される(つまり法規範になる)ことはよくあります。

  古くは公害に対する規制、最近では消費者に対する強引な契約締結を後から無効にすることを認めた消費者契約法などがあります。エコに対する活動なども二酸化炭素削減のために強い規制法令ができるかもしれません。
  そのため、企業にとっては、現時点で法令に反しないから何をしてもよいということにはなりません。

 ちょっと前なら少々信用を落とすような行為をしても狭い地域だけの問題で済んだかもしれません。しかしIT化が進んだ現在では、評判を落とす行為、つまり社会規範、道徳規範に反した行動をとると、あっという間に日本中、場合によっては世界中で信用を落とすことになります。その広範囲の信用低下は、企業の存立を危うくするほどのものです。
 そのため、現在、コンプライアンスの問題がかつてに比べて非常に重要になったと思われます。

 問題はどうやってコンプライアンスを実現し、維持していくかです。後編では、中小企業においてどのように対応していくか、を考えてみたいと思います。

■筆者紹介
 弁護士法人広島メープル法律事務所 社員弁護士 中井克洋

  昭和37年広島県生まれ。修道高等学校卒、東京大学法学部卒。生命保険会社勤務を経て、司法試験合格、平成6年に広島弁護士会登録。2年間の勤務弁護士を経て独立する。平成20年に個人共同事務所を弁護士法人に改組、現在に至る。
 民事介入暴力問題・企業対象暴力問題に精通した専門家であり、上場企業など、数多くの企業、団体、自治体の法務顧問を務める。
 広島弁護士会民事介入暴力問題対策委員会委員長、日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会副委員長などの要職を歴任。平成21年4月より平成21年度広島弁護士会副会長。

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