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ワークライフバランスへの取り組み その1
松田 さとえ(まつだ さとえ) 松田社会保険労務士・中小企業診断士事務所代表 中小企業支援センター登録専門家 (1) イクメン県知事のニュース 10月下旬、広島県の湯崎英彦県知事が第3子出生後の1か月間、都道府県知事として初の育児休業を取るというニュースは、全国で取り上げられました。そして、まずは大阪府の橋本知事が反対的な意見を表明し、北海道の高橋知事や京都府の山田知事などがさまざまな見解を表明しています。広島県庁にも、多くの県民からの意見(賛否)が寄せられているとのことです。ここで、今回の湯崎知事についての是非を・・・ということはさておき、全国の県政のトップが「育児休業」に関する自分の意見を表明するきっかけづくり、ひいては男性の育児休業にスポットを当てたという点での意義は大きかったのではないでしょうか。 (2) 育児休業取得率の推移
「意外と女性の育児休業者が多い」と感じませんか? 実は、この統計には加味しなくてはならないことがあります。 育児休業取得率には、妊娠・出産を機に退職した人は含まれないのです。
このグラフは、妊娠・出産期の退職者と育児休業取得者の割合を企業規模別に示しています。白い帯は育児休業を取得して仕事を続けた女性の割合、黄色い帯は育児休業を取らずに継続就業した女性の割合、赤い帯は育児休業を取得せずに退職した女性の割合です。企業規模30人未満では育児休業を取得して継続就業した割合は5.4%と非常に低いのがわかります。一方、育児休業を取得せずに退職した割合は51.4%と高いのです。同じ傾向は30~99人規模の企業でも見られます。つまり、100人未満の企業では、育児休業取得がまだ浸透しておらず、そのため多くの女性が妊娠・出産期に退職しているといえるのです。 (3) ワークライフバランスとはなにか ワークライフバランスとは、仕事と家庭生活をうまく調和させ、相乗効果を生み出す好循環だと言えます。育児のみならず、介護、あるいは趣味やライフスタイルを充実させることによって、メンタルの安定や、柔軟な創造性の発揮と言った効果が期待できるというものです。少子高齢化がますます進展しています。介護はいつ、誰にでも起こりうることなのです。そして、少子化により将来的に労働力不足となることは必至です。すでに、医療や介護部門では、外国人の採用を試みていることはニュースなどで耳にされた方もいらっしゃるでしょう。合わせて、サービス経済化が進み、女性の活躍する職業が増えてきています。 労働に対する意識も変化し、ただひたすら働き続けることを美徳とする考え方は過去のものになりつつあるのです。十人十色と言われるように、個人の働き方が各人の価値観によって選択できる職場づくりに取り組む時代なのかもしれません。 (4) 女性の活躍できる職場づくり
統計からもわかるように、専業主婦の世帯よりも共働き世帯の数が多くなっています。 厚生労働省の試算によれば、今後女性や高齢者の労働市場の参加が進んだ場合と、進まなかった場合の労働人口は、10年後で374万人、20年後で512万人もの差になるとされています。今のうちから、男女を問わず、時間の制約があっても働き続けることができる環境を整備することが、誰もが休業や短時間勤務を選択肢として持てる職場であれば、長期的な人材育成も可能となります。 育児休業を正社員の女性が1年取得して復職後に、子が3歳まで短時間勤務をしつつ勤務を継続した場合と、出産を機に退職し、新規採用した場合とのコスト比較をすると前者の方がトータルコストは低くなるという試算も厚生労働省が公表しています。 ワークライフバランスは、コストではなく企業が継続的に反映していくための重要な人材戦略の一つとしての位置付けが必要になってきているということです。 次回は、ワークライフバランスに関連し、最近増えているメンタル不全の切り口から働きやすい職場環境づくりについて考えていきたいと思います。 ■筆者紹介 松田社会保険労務士・中小企業診断士事務所 代表 平成11年社会保険労務士として独立。平成16年中小企業診断士登録。平成19年県立広島大学大学院にて経営情報学修士(MBA)取得。中小規模事業所の「人財共育」をモットーとしている。組織と共に人が育つ人材育成・モチベーションアップのためのコミュニケーションススキル向上、組織づくりに、企業と共に取り組んでいる。平成16年から広島市中小企業支援センター登録専門家、女性起業家サポーターとして活躍している。 |
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