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(22)元気な商店街を目指して(第3回)

  

元気な商店街を目指して(第3回)

-商店街の今後のあり方等について-

森信 秀樹さん

森信 秀樹(もりのぶ ひでき)

中小企業支援センター登録専門家
中小企業診断士、一級建築士



 これまで、2回にわたり商店街の現状と問題点を明らかにし、活性化の取組み事例を紹介してきました 。
 最終回は商店街の今後のあり方等についてお話します。



1 ニーズから発想へ

 右の2つのグラフは、私がかつてかかわってきた典型的な
市内の近隣型商店街のアンケート調査の一例です。
 上図「店舗利用理由の推察(全体)」は、経営者に自分の店への顧客の利用理由を尋ねたもので、下図「商店街を利用する理由(全体)」は、来街者へ同じ商店街を利用する理由を聞き取りしたものです。
 上図の第一位が「信用がある」で39.6%、第二位が「品質(味、腕)がよい」37.5%、第三位が「独自の商品(メニュー)がある」で29.2%という結果になっています。
 下図の第一位は「近い」で63.5%、第二位は「値段が安い」で34.5%、第三位は「品質(味・腕)が良い」で27.7%という結果になっています。
 上図で第三位まで占めていた「信用がある」、「品質(味、腕)がよい」、「独自の商品(メニュー)がある」が、下図では、それぞれ、11.5%、27.7%、4.1%といずれも低い数値となっているように、経営者が自信をもって取組んでいた項目が、必ずしも、消費者からは評価されておりません。このような店や商店街と顧客のミスマッチは、この例に限らず多くの商店街でみられます。
 話はがらりと変わりますが、昨年から岩崎夏海の小説「もしドラ」(もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら(http://moshidora.jp/))がロングベストセラーになっています。現代経営学の発明者といわれるP.F.ドラッカーのマネジメント手法を高校野球に取り入れて甲子園を目指すというストーリーです。そのドラッカーは「企業の目的は利益の追求ではなく、顧客の創造である」(「現代の経営」ダイヤモンド社)と述べています。個店や商店街においてもまず「顧客は誰か」「顧客は何を求めているか」との問いに対して日々の接客からこれらを敏感につかみ、分析し整理することが第一歩と思われます。


2 シーズから創造へ

 次にドラッカーは「顧客にとって価値は何かということを追求せよ」と述べています。今日までの個店や商店街の衰退は、近くにできた大型店やその熾烈な店舗間競争の影響だけなのでしょうか。共通駐車場がない、不足業種や空き店舗が多いなど衰退の原因を他のせいにするのは簡単です。しかし、それでは喫緊の課題の解決にはつながりません。まずは改めて自身の店や商店街を見渡してみてください。悪いところばかりではありません。最も自信ある「強み」が一つくらいありませんか?自分達で気付かない場合は、地元の消費者、学生など来街者や専門家の意見を聞くのも効果的です。これらを通じて自らの商店街の強み・弱みを明らかにすることが第二歩目です。
 そして求められるニーズに応えるためには、商店街が持っているさまざまな経営資源(シーズ:ひと・もの・歴史文化・情報など)をもう一度シャッフルし、新たに組合わせてみるのです。そしてそれをイベントや祭り、コミュニケーション活動等を通じてはっきりと発信することです。いつのまにか店の前を通り過ぎていた顔見知りやたまたま通りがかった新規の来街者を1人でも2人でも立ち止まらせ、つられて店に入って買い物をしてもらう仕組みを商店街全体で作っていく(市場を創造する) ことが仕上げの第三歩目です。


3 これからの活性化のキーワード

出典:買い物弱者を支えていくために」経済産業省
商店街活性化のキーワードは長い間変わっていません。「少子・高齢化」「情報化」「環境への配慮」「地域の歴史文化の掘起し」などが代表的なものでしょう。しかしながらそれぞれの中身は時に応じて変わっています。
 例えば高齢化への対応はこれまではアーケードやバリアフリーのカラー舗装、 街路灯などハード整備が中心でしたが、最近では郊外住宅団地などの「買物弱者」対策へと変わっています。団地に出向いての移動販売、団地内の空き店舗への朝市や時限販売店の誘致、御用聞きとその配達、商店街への買物バス等交通手段の確保などが考えられています。
 一方、子育て支援では、安心安全な街づくりの視点から防犯カメラの設置や商店街の空き店舗でボランティアや高齢者と一緒に子供たちが買物の待ち時間を過ごす多世代交流事業などが進められています。
 大型店では、電子マネーや買い物袋持参で買物すればポイントがもらえることが当り前になり、商店街の実施するスタンプ交換の日時限定的なイベントよりも日々の買物に使える単純なポイント獲得のほうが支持を得ています。開設以降あまり更新されない塩漬け?商店街ホームページよりも、普段の消費者のブログやTwitter(ツイッター)の情報がクチコミとして消費者の買物行動に影響を与えています。
 平成22年度「いい店ひろしま」に選ばれたある鮮魚店は、登録されたメール会員にお買い得情報を適宜流していて好評です。情報発信は、手軽な携帯電話利用型が当たり前になっています。これならICTに不得意でも簡単にできそうですね。


4 おわりに

 近隣型商店街は住まいの周りの身近な交流の場です。「無縁社会」といわれるなかで、日々の商いを通じて地域の子供たちやお年寄りの安心安全を見守りながら、この街に住み、街を支えていく大切なリーダ-の役割を担っています。元気な商店街のヒントは皆さんの足元にごろごろ転がっています。
 まずは街を支えるという気概と矜持(プライド、信念)をしっかり取り戻しましょう。求められるニーズに限りなく応えるうちにきっと後から結果(売上)はついてきます。
 広島市中小企業支援センターの様々な支援施策を上手に活用してください。



  このセミナーの内容は、当財団のホームページに「Webセミナー」として公開していますので、いつでも見ることができます

■筆者紹介

森信秀樹
アーバンリファイン株式会社 代表取締役
中小企業支援センター登録専門家
中小企業診断士、一級建築士
中小企業基盤整備機構 商業活性化アドバイザー

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