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(24)環境社会に対応した取り組み(第2回)

環境社会に対応した取り組み(第2回)
-エネルギーの大きな減・省エネ社会の実現-

森下 兼年さん
森下 兼年さん
 


森下 兼年(もりした かねとし)

技術士(環境部門)


 前回述べたように、日本の周辺の国、中国、韓国、東アジアでは既に電力不足に喘いでいた。


 これまで世界は、20%の先進国と80%の途上国が存在した。
 両者は、一人あたりのエネルギー消費量に10倍以上の格差があった。
 しかし、この20年間で次々と急激な経済発展を遂げる国が現れた。


 インターネットの普及とともに、世界中で情報が共有化されたことにより、今までの生活に満足していた途上国の人々が豊かになるためには、何をすればよいかを知ってしまったのだ。


 その方法は単純に言えば、エネルギーを大量に消費して、産業の生産性を上げることである。
 そのため、石油をはじめとする化石燃料は急激な勢いで高騰した。


 そこで、世界は原子力ルネッサンスに向かっていった。しかし、3.11の震災が発生し、日本の原子力発電は危機的な状況に追い込まれた。
 インターネットにより、この惨状も世界中に発信されている。
 現在、日本では定期点検に入った原子炉が再稼働できない状況にあり、建設中の上関原発も凍結になった。
 このままでは、中国地方でも、来年の夏は極端な電力不足になるだろう。
 世界中でも反原発の動きは拡大し、これからのエネルギーバランスは大きく変化していくかもしれない。
 このような状況において、何をしなければならないのか。
 企業活動にはエネルギーが必須である。生産性を上げるためにはエネルギーを大量に投入しなければならない。
 オフィスでも、真夏に汗をかきながらでは頭が冴えない。
 近年の東南アジアの経済発展はクーラーの普及で生産性が上がったとも言われている。
 今やほとんどすべてのオフィスや家庭にはエアコンがあり、夏は冷房のスイッチが入りっぱなしの状態である。
 今年の夏は、大企業が休日を変更して、輪番に営業することを計画しているが、かえって家庭のエネルギー消費を増大させ、全体としてのデマンド(最大需要の発生する時間帯の電力消費量)を上げてしまう可能性さえある。
 やはり、できる限りの無駄な電力をカットし、大停電の起きない範囲の電力を利用するしか手段がない。例えば、国の予算は決められた総額を各省庁や事業に割り振って配分する。
 同じように限られた電力をユーザーに按分して、各ユーザーがその範囲で何に電気を使うかを決めることが必要である。ところが現代のハイテク時代においても、各企業や家庭が今瞬間的に使っている電力量を知ることができない。
 通常の電力メーターは電力会社の料金の請求のための機能しかないので、今までに使った電力量の合計しか表示できない。
 必要なのはユーザーがどれだけ電気を使うことができるか、今どれだけ使っているかを知ることである。
 これにはスマートメータを設置して電力消費をリアルタムで「見える化」することで実現できる。


 その上で、各企業は自らの電気設備をリストアップし、電源のプライオリティを決めることになる。
 最も重要な機器から順に順位をつける。この方法は、通常の場合でも電気料金を下げることに役に立つ。
 一般的に業務用の電力は一年間で最も電力消費の多かった30分間の電力量(デマンド)により基本料金が決定される。
 電気料金を下げるためにはデマンドをオーバーしないことが最重要の取り組みである。
 デマンドオーバーにならないためには、リアルタイムでモニタリングし、いざというときには、電源のプライオリティの低い順にカットしていくことで対策できる。
 自社のコストカットだけでなく、既に関東では常態的に行われていることであるが、電力会社の供給量と消費量を見ながら電源をカットしていくことが求められるだろう。
 大停電を起こさないためには、国民一人一人と企業が与えられたリソースのなかで最大のパフォーマンスを追求していくというスタイルに変革するしか手段がない。

 次回は具体的な省エネ・節電の方法とこれからのエネルギーの創造について述べます。

■筆者紹介
  森下 兼年
  株式会社グリーンテクノロジー 代表取締役
  技術士(環境部門)
 

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