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(29)中小製造業のものづくりの復活にむけて(第1回)


中小製造業のものづくりの復活に向けて(第1回)

-グローバル環境下における中小製造業の立ち位置-


 中小企業の経営者が抱える経営課題について、
専門家の方にわかりやすく解説していただいています。
 なお、このセミナーの内容は、当財団のホームページに「Webセミナー」として公開していますので、いつでも見ることができます。

岸本 実さん
岸本 実さん
 
 -グローバル環境下における中小製造業の立ち位置-


 岸本 実(きしもと みのる)

  経営革新研究所サンエス 代表
  中小企業診断協会広島県支部理事


1 広島県は高度技術ものづくり産業の集積地
 広島県の製造業は、自動車、鉄鋼、産業機械などの高度技術ものづくり産業で80%を占める(図-1)。生産は2003年から2008年に掛けて急速に回復した(図-2,3)が、この要因は外国為替相場が1ドル100~120円の間で推移している中、自動車とデジタル家電の輸出が伸びたものである。1990年を基準にした20年間の製造業の推移を見ると、リーマンショック前の2008年で出荷額は+4%の増加、一方、従業員数は▲21%、事業所数は▲35%の減少となっている(図-3)。全体で見ると生産性の向上が進んだ形である。

図-1 広島県の工業製造品出荷額の構成比 図-2 広島県の主要工業製品 出荷額の推移
図-1 広島県の工業製造品出荷額の構成比 図-2 広島県の主要工業製品 出荷額の推移

図-3 広島県の工業製造品出荷額の推移 図-4 全国の工業製造品出荷額の推移(比較用参考)
図-3 広島県の工業製造品出荷額の推移 図-4 全国の工業製造品出荷額の推移(比較用参考)

2 新たな生産の空洞化と国際競争力の低下の問題
 広島県の主要な工業製品の自動車、鉄鋼、産業機械、情報通信、電子部品・デバイスなどは、輸出比率の高い輸出型の産業である。輸出先と輸出内容を日本の貿易統計でみると、輸出先は中国などのアジア向けが増加しており2009年で54.2%に達し(図-5)、輸出内容は機械・部品・材料などの中間財がアジア向輸出額の85%を占めている。
 しかし、日本企業の部品の現地調達率の増加や、現地企業の技術の高度化・国産化の推進で、アジア諸国の中間財は輸入超過から輸出超過に転じ、日本は輸出を減少させている(図-6)。特に韓国は日本との貿易赤字の解消のため中間財の国産化に注力をしている。
 最近では先端産業・技術の海外移転も計画されている。例えば、東レが炭素繊維を韓国で、安川電気が産業ロボットを、トヨタがハイブリッド車とその主要部品を中国で生産するといった計画がある。
 完成品の生産拠点の移転から中間財の生産拠点の移転へ、汎用技術の移転から先端技術の移転へと、質的な面での移転が進み、新たな生産の空洞化が始まっている。
 国内生産の減少は設備の更新を妨げ、国内の生産性の低下、国際競争力の更なる低下に繋がる問題も生じている。

図-5 日本の地域別輸出額シェアの推移 図-6 各国の中間財の輸出特化指数の推移
図-5 日本の地域別輸出額シェアの推移
(財務省 貿易統計)
図-6 各国の中間財の輸出特化指数の推移
(経済産業研究所 RIETEI-TID 2009) 

3 追う立場から追われる立場に
 かつて日本の独壇場であり中国地域の産業にも関係の深い、鉄鋼、造船、LSI、液晶製品などの高度技術製品について、その地位を韓国や中国に奪われ、太陽電池、リチウムイオンバッテリーなどの次世代製品についてもその地位を脅かされている。
 韓国や中国は、技術や中間財を輸入し安価な労働力で製品を作り輸出する「新興国型の製造業」から、原料を輸入し高度な技術を加えて部品や製品を作り輸出する「先進国型の製造業」への脱皮を目指している。日本は、かつての欧米先進国を追う立場から追われる立場になっている。

 次回(第2回)は「自動車産業から見た中小部品メーカーの現状と課題」と題して、円高、内外の自然災害、欧州危機などのグローバルな経営環境の大きな変化の中での、広島の中小製造業の現状と課題を見ていきます。


■<講師プロフィール>
 岸本 実(きしもと みのる)
 昭和23年鳥取県生まれ。地元の自動車会社(商品開発担当)、外資系部品会社(品質育成担当)を経て、平成19年、経営コンサルタントとしての活動を開始する。
 以後、中小企業基盤整備機構の登録専門家、広島県商工会連合会の嘱託専門指導員、中国経済産業局支援機関サポートアドバイザーなどを担当。その間、中小製造業を中心に経営革新計画、新商品開発と販路開拓、事業承継計画、産学官連携などの支援を実施。
 グローバル環境下での日本のものづくりに危機感を持ち、「ものづくり支援」、「次世代自動車の中国地域の自動車関連産業への影響と対応」などの研究に取組んでいる。

 

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