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(34)省エネと環境経営について(第3回)

(34)省エネと環境経営について(第3回)


省エネと環境経営について(第3回)

風に乗り遅れないために ~「環境」は不可欠な道具


 中小企業の経営者が抱える経営課題について、
専門家の方にわかりやすく解説していただいています。
 なお、このセミナーの内容は、当財団のホームページに「Webセミナー」として公開していますので、いつでも見ることができます。

鷹村 憲司
鷹村 憲司さん

 
風に乗り遅れないために ~ 「環境」は不可欠な道具


 鷹村 憲司(たかむら けんじ)

  東和環境科学株式会社 理事
  技術士(環境部門、建設部門、総合技術監理部門)
  環境カウンセラー(事業者部門、市民部門)


「当社はまだそんな会社じゃないんです」

 A社さんは広島市内にある創業60年の会社です。以前から環境アセスメントなどでお付き合いがありました。ある時、当社のアセス担当者が、「A社さんが地域の子供たちに環境学習をしたいけど、何をしたらいいかわからんと言ってるんで、今度一緒に来てもらえませんか。」と言って来ました(私は十年以上前から公私ともに環境学習をやっており、学校や企業、自治体に講師としてよばれることが少なくありません)。で、さっそくA社さんに行くことにしました。
 時は平成21年の秋、そう、民主党政権が誕生した直後でした。産業界が反対していたにもかかわらず、鳩山さんが国連で「日本は2020年までに温室効果ガスを25%削減します」と胸を張った、あの直後でした。で、私は一計を案じ、打合せにはA社の社長か経営層に同席してもらうようお願いするとともに、ぐっと奥行きを広げた企画書を作って持っていったのです。環境学習は企画書の最後のほんの一部。企画書の内容は、概ね次のようなものでした。

   ① 環境報告書を作りましょう
   ② 省エネ診断をして、CO2の排出削減計画を作りましょう
   ③ そのために、CO2の「見える化」を行ないましょう
   ④ CSRとして地域の人を対象に、環境学習をしましょう

 応対してくださったA社の専務さんは一通り話を聞いたうえで、こうおっしゃいました。「鷹村さんの話はよくわかりました。しかし、当社はまだそんな会社じゃないんです。まだまだ中小企業。もっと会社が大きくなってから、またお話を聞かせてください。」

           



突然、環境の風の真只中に

 ところが、秋が深まる頃、専務さんが突然電話をかけてこられました。話があるからすぐ来てくれと・・・「鷹村さん、大変なことになったよ。あなたが言ったとおりじゃった。これから本腰入れていろいろ対応せんといけん。よろしくお願いしますよ。」
 国の外郭団体から業界の各業者に対し総合評価制度の実施が突然通知されてきたのです。総合評価での得点により、次年度の入札参加数が決まるので、業者にとっては死活問題です。その評価項目には、「環境負荷データ把握」「環境管理手法」「見学推進活動」「情報公開工夫」などの言葉が並んでいました。A社さんではやられていないことばかりでした。これは実質的な業者の淘汰だと私は直感しました。専務さんも同感でした。評価項目とその内容を見て、まずは環境報告書を作ることを勧めました。環境報告書を作ることにより、かなりのことが網羅できると考えたからです。A社さんはそれからすぐ環境報告書作成にとりかかったのは言うまでもありません。
 「鷹村さんのことをもうちょっと早く知ってたらなあ。」とは最近の専務さんの言葉です。A社さんは毎年環境報告書を重ねるうちに、CSR活動、社会への情報発信、省エネ、環境負荷の把握とその軽減など様々なことに手がつけられていないことに気づかれ、環境報告者とホームページの充実、省エネ診断の実施とエネルギー削減計画の作成、工場見学の受け入れと見学マニュアルの作成など次々に精力的に取り組んでおられます。「やりますよ。しっかりした会社になる光が見えてきました。社員の意識も変わってきました。」とは専務さんの下で実務を取り仕切っておられる部長さんの言葉です。


           


風に乗りましょう

 最初は緩やかだった環境の風は、既に、かなり勢いを増しています。ある部分では嵐のように激しくなっています。昨今のエネルギーに係るマスコミ報道でその一端を感じていただけると思います。環境の風は、最初CO2から始まりました。今は、エネルギーの風がかなり強く吹いています。今後、これらに加え、生物多様性の風が吹き始めるかもしれません。しかし、この連載の第1回でご紹介したように、多くの中小企業の経営者の方は「うちは関係ない」「うちはまだまだそんな会社じゃない」と思っておられるのではないでしょうか。ほんのちょっと前のA社さんのように。
 風が吹き始めているのに。風はみんなに吹いているのに。その風に乗らなければ置いていかれるのに・・・大丈夫です。今からでも。少しずつ風に乗っていけば。できることから始めて、さあ、風に乗りましょう。

 



■<講師プロフィール>
 鷹村 憲司(たかむら けんじ)
 昭和32年生れ。環境コンサルタントとして環境に関する様々な業務に従事するほか、広島県環境政策課に事務局を置く「ひろしま地球環境フォーラム」や「企業とコラボで環境学習事業」(広島市)の講師として小中学校への出前授業や、自治体や市民団体が主催する講演会・ワークショップの講師、eco検定の講習会の講師など多くの環境活動で活躍中。
 

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