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地域経済循環について考える(第1回)


地域経済循環について考える(第1回)

中小企業の経営者が抱える経営課題について、専門家の方にわかりやすく解説していただいています。
 なお、このセミナーの内容は、当財団のホームページに「Webセミナー」として公開していますので、いつでも見ることができます。

若本 修治さん
若本 修治さん

超高層マンションが地域と将来にもたらすもの

若本 修治(わかもと しゅうじ)

ダブルスネットワーク株式会社 代表取締役

中小企業診断士・インテリアコーディネーター・福祉用具専門相談員

ひろしま産業振興機構専門相談員・広島市中小企業支援センター窓口相談員

<NPO法人住環境デザイン協会 副理事長>

このたび、「地域経済循環について考える」というテーマで3回分のメルマガ執筆をすることになりました。今回はその第一回目の執筆です。

広島市にお住いの方はご存じの通り、現在JR広島駅前にて再開発プロジェクトが進んでいます。主な建物は50階建てを超える超高層マンション、いわゆる「タワーマンション」です。

政令指定都市広島にとっては、表玄関の広島駅周辺整備は悲願でもあり、この大規模再開発は、行政だけでなく市民にとっても大歓迎かも知れません。中四国で一番高層ビルがある都市として、福岡や仙台に負けない「都市の顔が出来る」と喜ぶ人たちもいるでしょう。

しかし「地域経済循環」という視点でこのプロジェクトを見るとどうでしょう。つまりこの大規模プロジェクトが行われることで、過去・現在・未来の広島地域に落とされるお金や雇用が、どれほどこの一等地から生み出されるのかという視点です。見た目の都市景観とは違った景色が見えて来るのではないでしょうか?

最近タワーマンションは「節税対策」として注目を集めています。また隣国の中国を中心とした海外や域外の富裕層が投資用で購入するケースも増えています。マンションを開発するデベロッパーは、首都圏の大手不動産会社で施工も大手ゼネコンです。恐らく200億円を超える建設費やマンション販売の売上げは、ほぼ全て首都圏の会社に入っていきます。

オフィスビルや商業施設などの複合ビルであれば、ビルで働く人たちの雇用も生みだし、地元企業がテナント入居すれば地元経済にもプラスです。またホテルであれば、観光客やビジネス客など地域外からの人が宿泊しお金を落とすでしょう。

しかしマンションは地域にほとんど雇用を生まず、低層階の商業ゾーンも魅力あるテナントを首都圏の有名ブランドに求めれば、自ずとそのお金は地域の外に逃げて行くのです。超高層ビルは首都圏や関西では珍しくもなく、地域外の観光客がわざわざ買い物に来るような魅力はありません。プライバシーを重視したマンションであればなおさらです。

つまり「集客力のある一等地に、地元の人たちのお金が外に出ていく装置を誘致した」ということになるのです。高速道路のストロー効果と同じですが、人が移動するのではなくお金が移動するので多くの人は気づきません。仮に地元企業が出店しても、地域内の商圏が移動し地元客を奪い合うだけで、他の商業施設が衰退するだけなのです。

さらに長い時間軸で考えていきましょう。マンションは「大規模修繕」が必要で、築15年程度で足場を組み外壁の修繕などが欠かせません。人口減の30年後、どれだけの入居者が残ってこの修繕費用を負担し、さらなる将来はどうでしょうか?

地元には広島大学や広島工大があり、経験豊富な建設コンサルタントもいます。地域の事情に精通し、将来の地域循環も考えた「身の丈のプロジェクト」こそ、これからの地方創生ではないでしょうか?

またこのような施設への出店計画や業態開発こそ、地元の専門家の出番です。広島市産業振興センター登録の専門家を有効活用して下さいね!

超高層マンションが地域と将来にもたらすもの

■<講師プロフィール>
 若本 修治(わかもと しゅうじ)

昭和59年福岡大学工学部建築学科卒業後、株式会社布谷に入社。その後、株式会社リック工房等の勤務を経て、平成13年に、ダブルスネットワーク株式会社を設立し、現在に至る。また現在、広島市中小企業支援センター登録専門家として、建設業、小売流通業の販売促進等について支援を行っている他、国民住生活の安心・安全の確保と、地域社会の健全な発展に寄与することを目的として平成22年に設立された、一般社団法人全日本インスペクターズ連合会の常務理事を務めている。

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