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(77)「形の無いサービスに価値を持たせる」(第1回)

「形の無いサービスに価値を持たせる」(第1回)


 中小企業の経営者が抱える経営課題について、専門家の方にわかりやすく解説していただいています。
 なお、このセミナーの内容は、当財団のホームページに「Webセミナー」として公開していますので、いつでも見ることができます。

西方 康子 さん

サービス産業の特徴を知る




西方 康子(にしかた やすこ)

Nサポート 代表



 サービス業、特に狭義のサービス産業は、医療、介護、教育、流通、対事業所・対個人サービスなどの分野をいいます。(※1)他の産業に比べ特に労働集約的で、設備投資やIT化がままならず生産性向上が課題となっています。また、「サービス」は「無料」や「福祉」と混同され、その違いや価値をアピールできず、経費や時間を価格に転嫁しづらくなっています。

 とはいえ、創業時の想いやノウハウの独自性を発揮し、時代の潮流(チャンス・追い風)や顧客ニーズに、中小企業の強みである機動力を発揮し柔軟に対応して行く必要があります。そのためますます経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)をいかに運用するかが重要となってきます。

 そのためには、まずサービスの特性とその課題・対応方法を知る必要があります。


(1)サービスの特性

 特性・課題対応事例
無形性
  • サービス自体を見たり触れたりできない
  • HPなどで紹介
  • 画像でのシミュレーション
不可分性
  • 生産と消費が同時に生じ、生産者からサービスを分離できない
  • 生伴奏を映像・画像化するなど
異質性
  • 標準化が困難である
  • どこの店でも同じものが手に入るわけではない。
  • 多店舗展開が難しい。
  • 社員教育、マニュアル化
消滅性
  • 保存・在庫ができない
  • 非貯蔵性
  • 予約システム(理美容業、個人サービス)

需要の変動性

  • 季節、曜日、時間帯によって需要が変動する
  • 業務の平準化
  • 予約システム(理美容業、飲食業、個人サービス)
不可逆性
  • サービス提供後は元に返す(返品)することができない
  • サンプル・お試しサービス、事前の入念な打ち合わせ



(2)サービス業の特性
提供するためにも業界独特の特性があります。

課題現状・傾向
低い生産性
  • 人手に依存する部分が多いため、労働集約的なものが多い。
  • ヒアリング(打合せ)に時間が取られると効率が悪い。
  • IT化や設備投資が難しい。
  • 完璧さを追求し、時間コストがかかってしまう場合もある。
  • 労働力不足により、パート・派遣スタッフ等の賃金上昇傾向。
需要の変動
  • 在庫することができないため、利用時間・季節などにより需要の変動に直面する。
  • スタッフのワークライフバランス重視の傾向により、急な残業・休日出勤など頼みにくい。
商圏の限定
  • 商品の輸送ができないため、商圏地域が限定される。
  • IT化により、遠隔地との打合せが可能になるものの、フェイス・ツー・フェイスのつながりが求められる。
品質の標準化が困難
  • 提供するサービスが無形であるため、標準化が困難である。
  • 形にないもので教育するので、スタッフ教育が難しい。
  • マニュアル化が可能であるというものの、スタッフの習熟度に差がある。
  • 顧客との相性もある。
  • 説明不足による思い違いの発生。
新規性の発揮が可能
  • 市場や事業所が若く、顧客の様々のニーズに、細かく対応できる。
  • IT化、少子高齢化、家事・介護の外注化、冠婚葬祭の簡素化、外国人旅行者等の増加など事業所の事務等作業の外注化。
求人難
  • 比較的長時間労働か、逆に短時間。給料が比較的安い傾向。
  • 比較的安価な資金で開業できるので、育てても、独立してしまう。
顧客満足度も人によって異なる
  • サービスの受け手によって、要求、満足度が異なる。
  • 担当が交替すると顧客は不満に思うこともある。
  • 説明を受けても迷ってしまう、また専門用語がわからず、お任せとなる。
  • 継続的利用だと、前回よりサービスが低下すると残念な気持ちになる。


 大量生産品の画一化された商品もよいのですが、顧客ニーズを汲取りカスタマイズしていくのもサービスの強みであり、事業のやりがいといえます。


 以上のように、サービスは、サービスの特性のため、分かりにくいものです。サービス紹介からアフターまで手間暇かけて対応することと、生産性向上は、真逆ですが、その良さが顧客に伝わり、利用していただき、顧客満足度をあげ、リピート利用していただくための取組みが必要となります。限られた経営資源の中で、簡単ではありません。

 だからこそ、より顧客に受け入れていただくためには、(※2)業種によって異なる事情を重視した、きめ細かな取組みが必要です。 


■<講師プロフィール>

西方 康子(にしかた やすこ)

中小企業診断士
経営全般、特にサービス業の創業から事業拡大期、新分野進出等支援。
事業者視点のみならず生活者目線での助言、また、仕事と家庭のワーク・ライフ・バランスを重視した取組みについて支援している。

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