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支援センター職員によるブログ

吹きガラス体験記

2023/11/01

向井コーディネータ(技術) おはようございます。 がんばる中小企業と創業者を全力で支援する「広島市中小企業支援センター」のコーディネータ・向井です。

                                                                         

 ガラス素材は紀元前2300年以前にメソポタミアやエジプトで作られ、ガラス容器等が作られるようになったのは、メソポタミアでは紀元前16世紀頃とされています。このことは、広島市内のトーホー(株)の著書「SEED BEADS BIBLE」※)に詳しく紹介されています。その後、ガラスはどこにでもあるケイ酸塩で作られることから安く、透明で衛生的という特徴から、身近なところに普及しました。今日ではガラスの組成や成形法を工夫しながら、Low-E複層窓ガラス等の省エネ分野や、薄くて可撓性のある透明導電ガラス基板を使った次世代太陽電池の素材等の再エネ分野にも発展しています。このように、ガラスは古くて新しい素材であり、今後も機能材料としての進化が期待されています。

 9月末に、このようなガラスの基本的な性質を楽しみながら体得しようと思い、山梨県大月市に出向き、吹きガラスによるぐい呑みの作製に挑戦しました。

 

 吹きガラスの成形プロセスは次のようになります。坩堝に入れたガラスを1200℃程度まで加熱し軟化させ、吹き竿を回転させながら先端に溶融ガラスを巻き取り、炉から取り出します。この水あめ状のガラスに息を吹き込みながら膨らましたり、色つきガラスを付着させたり、再加熱してガラスを柔らかくしながら成形していきます。吹きガラスの場合は、吹き竿の先端が容器の底となり、陶芸のような轆轤に乗った粘土の先端上部が容器の口になるのと大きく異なるところです。

 

 私が感じた吹きガラス特有の難しい点は次の通りです。

(1)ガラスの粘度は温度に依存:ガラスを炉から取り出した時点で放熱が始まり、徐々に温度低下することから、温度に依存したガラスの粘度を考慮しながら時々炉内に戻し、程よい外力で成形することです。

(2) 間接的な外力で成形:熱いので素手が使えず、道具や間接的な外力で成形します。口で吹いて膨らます、重力を利用する、吹き竿の回転による周方向の遠心力や吹き竿を振り子のように振りながら長手方向の遠心力を利用する方法があり、(1)のガラスの粘度に応じてこれらの力を加減することです。

(3) 溶融ガラスはニュートン流体的性状(温度一定の場合、生クリーム状でなく、水あめ状で、微小の力でも時間が経てば変形する):色付けの場合は色ガラス片を表面に散りばめ、炉内で加熱し溶け込ませます。その後、硬化するまでこのまま吹き竿を一方向に回転し続けると軸対称の形状は維持されますがガラスが捩じれ、色もそれによって流れます。まるい模様に仕上げるには、時々逆回転させることです。

 

 いろいろ理屈を並べましたが、体験中の写真と出来上がった作品を以下に示します。後から製作中の画像を見ると、炉から取り出すときに放射熱の熱さに緊張が加わり、肩に力が入っているのが分かります。作品のぐい呑みは、寒い夜に熱燗を注いでいただくように暖色系にしました。形状が少しいびつになっているところや、口に当たるところが厚くてつるつるしていて何とも言えないガラスの味が出ています。今回の体験を通して、溶融ガラスの変形・流動特性(レオロジー)を体得したことと、ものづくりの喜びを感じることができました。

 

※)水野久美子/TOHO CO.,LTD、SEED BEADS BIBLE シードビーズガわかる本、株式会社パッチワーク通信社(2014)

 

吹きガラス体験(成形状況).jpg吹きガラス体験(作品).jpg

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