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支援センター職員によるブログ

突然の事業承継(相続)に係る税務について

2025/01/15

創業支援担当・児玉主査

 おはようございます。がんばる中小企業と創業者を全力で支援する「広島市中小企業支援センター」の創業支援担当・児玉です。

 テレビドラマでは、経営が少し厳しくなってきた会社の社長が突然亡くなり、業界や経営の経験が全くない社長の娘がその後を継ぐという設定があります。そして古参社員の反発を受けながら、取引先や銀行からの信用も無い中で、経営者として成長し会社を改革していくという展開ですが、ここではこの事業承継に関する相続税について考えてみます。

 話の設定として、当該会社は株式会社(非上場、株式は社長の一族で全て保有)、相続人は社長の配偶者、後継者(社長の長女)、長男の3人で、財産を相続したのはこの3人のみとします。相続財産については、社長の自宅とその敷地(配偶者、後継者が同居)及び当該会社の非上場株式があるとします。なお、社長からこの3人に対して、相続開始の日前7年以内の贈与や相続時精算課税に係る贈与はなかったものとします。(贈与と相続税の関係については、以前のブログで少し触れていますのでご参照ください。)

 社長と会社は別人格なので、社長個人の資産・負債と、会社のそれとは区分されます。社長が所有していた自宅の土地・建物等は相続財産となりますが、会社所有の土地・建物・機械等については相続財産には含まれません。(その会社の株式が相続財産となります。)
 自宅に関するローンなど社長の個人的な借入金は負の相続財産として引き継がれ、その額は相続財産の額から控除されます。会社の借入金は(相続の対象ではないので)相続財産の額から控除されません。仮に会社の借入金について社長が連帯保証人だったとしても、原則として相続財産の額から控除することはできません。(ただし連帯保証人としての義務は引き継ぐことになります。)また、自宅の建物・敷地に、会社の借入金に係る抵当権が設定されていても、その相続税評価額は下がりません。
 社長から会社への貸付金(会社にとっては役員借入金)がある場合には、その貸付金は相続財産になります。

 非上場株式については、「非上場株式等についての相続税の納税猶予・免除」の優遇措置(以前のブログでは事業用資産で説明していますが、非上場株式でも同じような取り扱いになります)があります。これを適用する場合には、期限に間に合うように諸手続きを直ちに進める必要があります。

 会社の規模にもよりますが(注1)、株式の評価額を下げる方法として、社長に係る死亡退職金の給付があります。死亡退職金については相続財産の合計額に加算されますが、相続人に給付された場合、合計で1,500万円(500万円×3人(注2))まで控除できます。会社側からみると支払う退職金額だけ純資産が減少するので、非上場株式の評価額が下がります。(損金算入により法人税額も減少します。)
 つまり、1,500万円の退職金を支給した場合には、退職金の受領による加算は1,500万円の控除により相殺され、一方で非上場株式の評価額は下がるため相続財産の合計額が減少し、相続税額の総額が減少します。退職金の額が控除額を超える場合、例えば2,000万円とすると、控除限度額超過分の500万円が相続財産の合計額に加算されますが、非上場株式の評価額は1,500万円の場合と比べて500万円ほど下がるとは限りません。(法人税については、損金算入により納付税額は減少します。)なお、死亡退職金の支給は相続税の納税資金の確保といった効果もあります。
注1:大会社など純資産価額方式で評価する部分が無い場合には、評価額は変わりません。
注2:法定相続人の数を掛けます。ここでは、配偶者、長女、長男の3人。

 退職金については、社長の報酬額、在任年数、功績等からみて妥当な額であることが必要です。また、退職金の支給については適正な手続を踏み、証拠書類を残しておく必要があります。これについては税理士や税務署に相談・確認した方が安心です。また、ドラマの設定のように経営状況が不安定である場合には、退職金等の支給について銀行にも説明しておく必要があるかもしれません。

 工場などの敷地が社長個人の所有である場合、その敷地は相続財産の額に加算されますが、会社に有償(相当の対価)で貸し付けていた場合(注3)には、小規模宅地等の特例が適用できます(注4)。自宅の敷地も、配偶者や同居していた子が相続する場合、小規模宅地等の特例は適用でき(注4)、相続税額の全体額を減少させることができます。
注3:貸し付けていた場合の評価額(敷地や会社の資産)の計算については、ここでは触れません。
注4:いずれの場合も必要な要件を満たしているものとします。

 以上、ドラマの家族にとっては大きなお世話ですが妄想を膨らませてみました。上記以外に生命保険金、弔慰金、葬儀費用なども相続税額の計算に関係しますが、ここでは省略しています。また、細かな要件等についても説明を省略しています。

 事業承継については、早めに準備に取り掛かることが、経営面からも税務面からも有利です。当センターでは税理士や中小企業診断士等の経営の専門家が皆様の相談に応じます。ぜひご利用ください。

広島市中小企業支援センターHP(窓口相談)

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※上記の内容は、令和7年1月1日現在の法令等に基づき記載しています。

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