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2024/07/24
がんばる中小企業と創業者を全力で支援する「広島市中小企業支援センター」の創業支援担当・平野です。
さて、今回は「従業員が備品を壊してしまった場合に、その従業員に弁償させること」についてお話ししたいと思います。
飲食店で働いている方から、「お皿洗い中に手を滑らせてお皿を割ってしまったら、弁償という給与から天引きされた。」という話を数多く耳にします。確かに、企業が購入した備品ですから、壊された場合の損害分は支払ってもらいたいですよね。
ですがこれ、請求することができません。その根拠となるのは、「報償責任の法理」という考え方になります。
「報償責任の法理」とは、簡単に言うと「企業は利益を得るために事業活動を行っているのだから、その事業活動内で出た損害についても負担する責任がある。」という考え方です。従業員を雇用している企業は、その従業員の労働によって利益を得ているため、従業員のミスにより出た損害についてはその得た利益から補填するべき、ということです。
また、特に注意してもらいたいのが、「皿を割ったら1枚当たり○○○円弁償してもらいます。」などとルールとして定めたり、労働契約の内容に組み込んでしまっていると、労働基準法第16条「賠償予定の禁止」に違反することとなり、「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」に処される可能性があります。
さらに、その弁償が給与から天引きという扱いになっていると、働いた分の賃金を全額支払っていないということになり、労働基準法第24条「賃金の支払」に違反することにもなります。
ただし、例外もあります。それは、従業員の重過失による場合です。重過失というのは、お皿の件で例えると、「わざとお皿を割った」「お皿を投げるなどひどい扱いをした結果お皿を割った」などが該当します。このような場合は損害賠償が認められます。この場合、給与から天引きはせずに、損害賠償請求をしましょう。
人的要因のミスはどうしても起きてしまうものです。それを踏まえたうえで、お皿の件でいうなら木製のものやプラスチックのものなど割れにくい材質に変えるなどミスが起きても損害が出ない工夫や、そもそもミスが起きづらいようにオペレーションや備品配置の改善が必要になります。
今回はわかりやすい例として飲食店を挙げましたが、これはすべての企業に必要な考え方です。発生する損害が、お皿1枚とは比べ物にならないようなことにつながる可能性もあります...。
もしも、店舗運営や社員教育などでお悩みでしたら、専門家に無料で相談できる窓口相談などもありますので、ぜひご利用ください!
2024/05/01
がんばる中小企業と創業者を全力で支援する「広島市中小企業支援センター」の創業支援担当・平野です。
今回は、「年次有給休暇(俗に言う「有休」「年休」)をテーマにお話ししたいと思います。
私が学生時代、様々なアルバイトを経験したことは前回のブログでお話ししましたが、そのアルバイトはいわゆるシフト制で、休みを自分の予定に合わせて設定できる働き方をしていました。
そんな学生時代には全く知らなかったのですが、労働法を勉強するようになってから「シフト制のアルバイト等の仕事でも年次有給休暇が付与され、使用できる」ということを知りました。
このことは、店舗管理等を行う現場の責任者や、時には経営者でも知らない人が多数いるようで、実際に最近、私の後輩も有休使用をアルバイト先の店長に申請したら、「有休?そんなものバイトには適用されないよ。」と言われてしまったと相談されました。
確かに、「もともと自分で休みを設定できる働き方なのだから、年次有給休暇を別途設ける必要ない」という考えも理解はできます。ですが、6カ月以上継続して勤務し、労働条件通知書等に記載されている所定労働日数の8割以上出勤している労働者に与えられる、お給料をもらって休みを取ることができるという権利であるため、申請があればちゃんと取得させなければいけません。
もしこの記事を読まれている方で、アルバイト等のシフト制労働者の有休についてこれまで管理していなかったなどありましたら、付与日数の計算の仕方などが以下のリンク先(厚生労働省が出している資料)に記載されているので、ご参照ください。
もしも、資料を読んでみたけれど条件や計算の仕方がわからなかったなどありましたら、社会保険労務士の資格を持った専門家に相談できる窓口相談などもご案内できますので、ぜひご相談ください!
2023/12/06
がんばる中小企業と創業者を全力で支援する「広島市中小企業支援センター」の創業支援担当・平野です。
今回は、私が大学生の頃にアルバイトで経験したことを基に、世の中にさも当然のように蔓延る問題についてお話ししたいと思います。
私は大学生になっても将来やりたいことが見つからなかったので「大学生のうちにいろいろ経験してやりたいことを探さなきゃ」という焦燥感から、いろいろなアルバイトを経験しました。スポーツ用品店から始まり、飲食店、塾講師、イベントスタッフ、アパレルなど、業種も様々でしたが、一部の例外を除き、どのアルバイトにも共通していたのは「時給制」だったことです。おそらくほとんどのパート・アルバイトは、私が勤務してきたアルバイト先と同じように時給制でお給料の計算がされているかと思います。
では私が最初に言った「世の中に当然のように蔓延る問題」とは何なのかというと、そのお給料の計算の仕方です。
私が勤務してきたアルバイト先で多かったのが、業務終了時間(その日のシフトの終了時刻)を超えて働いた分のお給料の計算方法が、「15分単位」「30分単位」というのがほとんどでした。これはどういうことなのかというと、例えば「15分単位」での計算では、18時まで勤務のシフトで18時10分まで仕事が長引いてしまった場合、15分という単位を満たしてないので10分間の残業代は切り捨てられてしまうということです。
大学生のころの私は、それが当たり前だと思っていたので何も感じていませんでしたが、労働基準法を勉強し始めてからこれは違法なことなのだと分かりました。
賃金の支払いについては労働基準法第二十四条で次のように定められています。
「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」(一部抜粋)
この「全額を」というのが肝で、厚生労働省は1分単位で計算し支払うのが正しい計算方法であるとしています。なので会社が定めた「15分」や「30分」などの単位に満たないからと切り捨てて計算するのは「賃金の未払い」であり、労働基準法第二十四条に違反することとなって、悪質と判断された場合には30万円以下の罰金刑に処されます。
ただ、「1分単位となると給与計算が面倒になるしな...」という考えから、業務負担軽減を目的として独自の単位を設定して計算しているのであれば、月の合計勤務時間について30分未満の端数を切り捨てて計算することは認められていますので、そちらの処理方法に切り替えるのが良いと思われます。また、どうしても「15分単位」や「30分単位」で続けたいということであれば、独自に設定した単位を満たさなかった場合でも切り上げて計算すれば違法にはなりません。(人件費が余計にかかってしまいますが...)
もしも、勤怠管理システムの導入コストや管理体制整備などの問題で「ちゃんと管理したいのにできない」とお悩みの場合は、当センターにて経営や労務管理の専門家に無料で相談できる窓口相談などの支援策を用意しております。今後どのように管理していくか、コストとの兼ね合いはどうかなど、労務管理の体制を改善していく際のアドバイスができますので、ぜひご相談ください!
2023/08/09
がんばる中小企業と創業者を全力で支援する「広島市中小企業支援センター」の創業支援担当・平野です。
大学を卒業してすぐに友人からとある相談を受けた話をしたいと思います。
その友人のお父様が勤め先(会社名も業種もきいてません)で「管理職」を務められているらしいのですが、そのせいで残業代が出ないのに残業しなければならないことがあるから、ストレスが溜まって帰ってきてめんどくさい、という内容でした。
そこで私は「その分結構稼がれてるんじゃない?家計を支えるために頑張ってるんだろうし、目を瞑ってあげたら?」と言ったところ「いや、管理職になってもあんまり稼ぎ変わってない」とのこと。
ここで私は違和感を感じました。
残業代が払われないという特例がある労働者は、労働基準法上の「管理監督者」と呼ばれる地位にある人たちです。
「管理監督者」というのはざっくりと言うと以下のような人のことを指します。
① 経営者と一体的な立場で仕事をしていること
➡管理監督者は、経営者に代わって同じ立場で仕事をする必要があるため、経営者から管理監督、指揮命令に係る一定の権限をゆだねられている人であり、非常に重要な立場にあることから労働時間などの制限を受けない人のことです。(ただし、企業は管理監督者が働いた時間をきちんと把握して月の労働時間が過多とならないようにし、安全に配慮する必要があります。)
例えば、経営方針や人事に関して経営者のように口出しできるなどの経営に関わる権限が与えられている人が該当します。
② 出社、退社、勤務時間について厳格な制限を受けていない
➡管理監督者は、いつ何時経営上の判断や対応を求められるかわからないことや、労務管理において他の労働者と異なる立場に立つ必要があるため、出退勤の時間が厳密に定められません。出退勤時間が自身の裁量によって任されているので、遅刻や早退によって給料や賞与が減じられるといったことはありません。
③ その地位にふさわしい待遇がなされている
➡管理監督者は、重要な役割を担い、相応の責任を負っていることから、地位、給料その他の待遇において一般社員と比べてそれ相応の待遇がなされます。
給料について例を挙げれば、基本給自体が一般社員と比べてその地位に相応な金額が支払われている、「管理職手当」「特別調整手当」などの手当によりその責任や重要性に応じた対価が得られている、といったことです。
(参考:しっかりマスター労働基準法 管理監督者編(東京労働局)
URL:https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000501863.pdf)
この①~③の特徴により、管理監督者は時間外勤務手当、俗にいう残業代というものが適用されません。
友人のお父様はこの条件が当てはまるか確認してみました。
① → 部下に対して指示出したり、業務分担の管理とかはしてるけど、経営方針に口出しはできないと思う。
② → 労働時間はしっかり管理されてて、遅刻しそうなときは慌てて飛び出していっている。
③ → 冒頭の通り、「管理職になってもあんまり稼ぎ変わってない」
以上の答えから判断して、友人のお父様は「管理監督者」に該当しない、「名ばかり管理職」と呼ばれる人だと考えられます。
なので友人には「お父さんの待遇改善を会社に求めるか、労基に行って過去の残業代を管理職になったときまで遡って請求した方がいいんじゃないか。」とアドバイスしました。ですが友人は「会社に申し訳ないとか、和を乱すからとか、出る杭は打たれる的な感じで自分から動くのを嫌がると思う。」と言っていました。
そもそもそんな風に思わせている環境が悪いと思いますけれど、ご本人がそれでいいなら、他人の事なので私はそれ以上何も言いません。
ですが、名ばかり管理職に残業代を支払わなかった場合、労働基準法第三十七条違反となり、企業は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金を命じられることがあります(労働基準法119条1号)。
また、それが悪質なものと判断されれば、労働基準監督署が強制捜査や逮捕を行うこともあります。
「知らなかった」「他の会社でもやってる」というのは言い訳にしかなりません。経営者の皆様、もし同じように「名ばかり管理職」に残業代を支払っていないようなことがあったら、このブログを読んだのをきっかけに改善してみてはいかがでしょうか。
そしてこれから経営者になる人も、気をつけてみてくださいね。