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2019/09/26
おはようございます。 がんばる中小企業と創業者を全力で支援する「広島市中小企業支援センター」のコーディネータ・向井です。
今年の8月をもって理化学研究所のスーパーコンピュータ(以下、スパコン)京が運用を終了しました。私は計算機を使った数値解析やエネルギ機器に関わってきたこともあり、京とポスト京の富岳をエネルギの切り口から探ってみたいと思います。
京の計算速度は、名前の通り浮動小数点の計算を1秒間に1京回こなす能力としてよく知られていますが、この計算に最大約1万3千kW(一般家庭の約3万世帯分相当)もの電力が使われていることはあまり知られていません。ここで消費した電力の殆どは中央演算装置CPUで熱に変換され、その発熱密度(単位面積当たりの発熱量)は、ホットプレートの約5倍に達しています。この環境から半導体を守るためには、パソコンのようなファンによる空冷では不十分であり、冷凍機を用いた水冷構造を採用してCPUの温度を30℃以下に抑えています。これらの電力供給と冷却は、主としてガスタービン発電機とその排熱を利用した吸収式冷凍機のコージェネレーションシステムによって支えられています。このように、京は電気電子の技術だけでなく、機械をはじめ土木建築等の各技術部門の粋を結集した巨大計算機工場といえます。(写真は2012年4月30日筆者撮影の京計算機建屋、正面オブジェの算盤玉は桁数を表し、下から順番に一、十、百・・・一番上が京)
次期スパコンの富岳は、京のDNAを引き継ぎつつ、さらに消費電力の課題にも配慮しています。つまり、今までの単位時間当たりの計算能力(Flops)だけでなく、単位エネルギ当たりの計算能力(Flops/W)を重視した設計となっています。これを反映し、計算速度は京の約100倍ですが、消費電力は京の3倍程度の上昇に抑え、単位エネルギ当たりの計算能力は約30倍の向上となるそうです。これを実現するための詳細はよく分かりませんが、CPUの集積度と冷却能力の向上が技術ポイントだろうと思っています。
スパコンの使用環境も時代とともにどんどん変化しています。いくら電力を使っても速ければ評価されるという時代は過去のこと。古い物差しを捨て、効率重視(持続可能な開発目標SDGsとも関連)の新しい物差しで開発した富岳の2021年運用開始を楽しみにしています。今度は心置きなく新しい物差しで1位を目指し、人々の幸せのために活用してほしいと思っています。