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支援センター職員によるブログ

雪室と風穴

2022/06/29

向井コーディネータ(技術) おはようございます。 がんばる中小企業と創業者を全力で支援する「広島市中小企業支援センター」のコーディネータ・向井です。

                                                                         

 夏場に涼をとるにはクーラーや冷凍・冷蔵庫が欠かせません。暑いところで低温を得るには、熱力学の第2法則がたちはだかり、外部からエネルギーを与えずに、熱を温度の低い方から高い方に移動させることはできません。したがって、エネルギーを使わないクーラーはあり得ません。ただ、エネルギーを殆ど使わず、夏場に涼を得る別の方法として、冬場の冷熱を閉じ込めて夏に使う手があります。それには、断熱や蓄熱技術を利用することになります。

 

 その例が庄原市高野にある雪室です。冬に降った雪(相変化を利用した潜熱蓄熱)とそれを保管する断熱の効いた建物で構成され、中に入ると夏場でもひんやりして、りんごなどの食材の保管に使われています。その外観を図1に示します。

 

 また、出雲市にある天然の八雲風穴もその一つです。これは、傾斜地の地下構造が蓄熱槽となり冬場の冷気を地中に蓄熱(岩を利用した顕熱蓄熱)し、それを夏場に取り出すもので、天然の冷蔵庫となっています。その冷風の発生メカニズムを図2に示します。重要なことは、斜面空隙の空気温度は年間通して10℃程度であるのに対して、外気は季節によって変化することです。外気温より斜面空隙温度が相対的に高くなる冬場は、斜面上部から暖かくて密度の低い空気が噴き出し、それによって斜面下部から冷たい外気が誘引されます。夏場はその逆で、斜面下部から密度の高い冷風が噴き出し、それによって温度の高い外気が斜面上部から誘引されます。ファンや切換弁は一切使わず、自然対流だけで蓄熱再生を繰り返す優れた冷暖房設備を形成しています。

 

 このような風穴は、明治の終わりごろには全国に240ケ所もあったそうです。当時重要な産業であった生糸の生産過程において、かいこの卵を風穴に保管し、取り出しのタイミングで孵化をずらし、生糸を春から秋まで生産できるようにしていました。世界遺産の富岡製糸場と絹産業遺産群の構成要素となっている荒船風穴も電力を使わない天然の巨大冷蔵庫として、日本の近代化や絹産業の発展に貢献しました。

 

 今年の夏は、電力需給がひっ迫するとの予測が出ています。少し産業革命前にタイムスリップしたつもりで天然の涼を求めて彷徨ってみたいと思っています。

 

雪室と風穴6.jpg


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